特許戦略マガジン

☆特許戦略マガジン☆

第153号 2010年7月26日発行

● パテントポリス 夏子

第8話 ビル内会話の遠隔録音の実演

ビルの屋上に、夏子と平野、そして特許庁長官の安岡と内閣官房政務官の木村新之助が行った。ビルの屋上には、スピーカーが1台と、アンプと、三脚に搭載された望遠鏡付き赤外線センサーが置いてあった。
「それでは、1Km先の麹町警察署ビルの窓ガラスに向けて、この三脚の上の望遠鏡と一体化されたプローブから赤外線レーザーを発射させ、
赤外線センサーで反射光を受けます。窓ガラスにはSNを向上させるために変調をかけた赤外線ビームが投射されます。窓ガラスの表面で乱反射された赤外線の一部が、
赤外線センサーで受信されます。窓ガラスの表面は室内の音声によって微妙に振動しています。その振動が、窓ガラスで反射される赤外線に対してドップラー効果を与え、赤外線の波長を微妙に変化させます。その赤外線の波長の微妙な変化を音声信号としてアンプで増幅し、スピーカーから出力させることで、室内の会話などを、遠隔で聞いたり、録音することができるという原理です。」と、平野が説明した。
「紹介します。彼女が4人目のパテントポリスの霜山美月君です。彼女は高度なIT技術を駆使して、遠隔地から相手の情報を収集したり、暗号の解読も行ないますし、軍事衛星の制御も行なって、相手の拠点の赤外線画像を得たりもできます。 さらには、声紋識別なども簡単にやってのけます。彼女が、このセンサーを用いて麹町警察署ビルの室内の会話を傍受するところをご覧に入れます。」と、平野は言った。

「彼女も格闘技ができるのか?」と、木村政務官は尋ねた。

「もちろんです。美月君はローキックの名手です。相手の膝関節の部分をローキックで正確にそして強烈に蹴るので、相手は一瞬で体勢を崩して倒れてしまいます。そして、倒れつつある相手の首にも即座にローキックを入れるという二段攻撃を得意技にしています。首にローキックをくらった相手は、首の骨を捻挫して一時的な脊椎麻痺で体が全く動かなくなります。どんなに巨体の男でも、美月君にかかれば2秒もかからずに、床に転がって、ぴくりともしなくなるのです。」と、平野は恐ろしいという表情で説明した。

「おおげさな紹介ですね。そんなに恐ろしくはないですよ。それでは、1Km先の麹町警察署ビルの窓ガラスに、この赤外線レーザービームを照射します。赤外線反射光は、このセンサーで受けます。では、スイッチを入れます。」と、パテントポリスの霜山美月が言った。
すぐに、スピーカーから声が聞こえてきた。

「山城です。はい、わかりました。明日、お伺いします。」

「これは、すごい。1キロメートルほども離れたビルの中の会話を聴き取れるとは。」

「次に、あの部屋の電話を呼び出してみます。事前に、会話を聞きながら目的とする部屋にいる人物の名前と部署名を調べておきます。そうすれば、代表電話に電話をかけた後に部署名と人物の名前を使って電話を目的とする部屋に転送してもらえます。それでは、スピーカーから名前が聞こえた山城という人物に電話をします。」と、美月は言った。

「霜山と申します。捜査第1課の山城さんをお願いします。」と美月は代表電話を受けた人に電話の転送を依頼した。
すぐに、スピーカーから赤外線反射光を受信して得た音声が流れてきた。
「はい、捜査第1課です。」
「霜山と申します。山城さんをお願いします。」
「はい、私が山城です。」
美月は電話を切り、次のように説明した。
「このように、遠隔地から部屋の中の会話を録音できますし、その部屋に電話をかけることもできます。これを利用して、特許権侵害の事実を電話で告げ、その後に部屋で行なわれる会話を録音しますので、会話の内容によっては故意侵害の証拠とする事もできますので、パテントポリスの強力な捜査手段となります。」と美月は説明した。

「これで遠隔録音訓練の実演を終わります。それでは、また会議室にもどりましょう。」と、平野が促した。
夏子と美月と平野、そして特許庁長官の安岡と内閣官房政務官の木村新之助は屋上を後にして、会議室に向かった。

会議室に向かうエレベータの中で、特許庁長官の安岡はパテントポリス準備室長の平野に言った。
「特許庁は特許法を所管しているが、特許権侵害罪は規定しているだけで深く検討したことがなかった。確かに、侵害における故意の立証は難しいので、侵害の事実を電話で告げられたり、文書で通知された侵害者が行なう室内での会話の録音データを故意の証拠と出来れば有効な方策となるのはわかる。しかし、盗聴は違法なのではないのか?」

「盗聴の違法性が問題となっていますのは、他人の住居に許可無く侵入する行為や、有線通信の傍受、特定の相手方への無線通信の傍受、警備員のいる建造物等に理由無く侵入する行為です。赤外線レーザーを用いた遠隔録音は、これらのどれにも該当しませんので、これを違法とするものは日本の現行法にはありません。
しかし、遠隔録音は日本国憲法第21条との関係で難しい問題をはらんでいます。詳しくは、会議室にてご説明します。」と、平野は答えた。
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