特許戦略マガジン

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第151号 2010年7月15日発行

● パテントポリス 夏子

第6話 パテントポリス総合施策に向けて

内閣官房政務官の木村新之助は、おもむろに口を開いた。
「パテントポリス総合施策の実行には、関係省庁の協力体制と法整備だけでなく、民間の目利きの協力と産業界の協力が必要だと思う。今日は、パテントポリス総合施策の概要をパテントポリス準備室からの提案という形で説明してもらいたい。」
「それでは、パテントポリス準備室で用意しましたパテントポリス総合施策の概要をご説明します。」と、平野パテントポリス準備室長は資料を配った。

「パテントポリス総合施策は、資料にあるとおり、次のような構成となります。
1. 特許権侵害罪の迅速・的確な判断のできる警察、検察、裁判所の組織能力の実現。
2. 特許権侵害の摘発を行なう専門家であるパテントポリスの陣容の拡充。
3. 特許権侵害製品分析センターの設立。
4. 海外特許権行使機構の設立。
5. パテントポリスの国内外の活動に協力する国内外の民間組織ネットワークの形成。
6. パテントポリスによる情報収集・捜査活動に用いる道具や機材の開発と提供。
」と平野は説明した。

「このような総合施策が実行できないとパテントポリスが活動開始できないという事なのか?」と、木村は懸念を示した。

「そうではありません。ご心配なく。実は、ここにいる聖子君がすぐにでもとりかかれる具体的な活動の計画を立案していますので、聖子君に説明してもらいます。」と、平野はこたえた。

「パテントポリスの佐藤聖子です。これまでの5年間、企業の知財部門で私も目利き能力の獲得のためにパテントポリスの身分を隠して活動をしてきました。
その中で得た経験からパテントポリスが最初に取り組むべきテーマが見えてきました。それは、お手元の資料の第5ページ目に記載しております。
標準規格の必須特許として特許番号が記載されている日本特許権を用いた特許権侵害罪の摘発です。例えば、Mpeg2の必須特許のリストには
日本企業の多数の特許権が含まれています。このように、必須特許リストが文書に記載されている標準規格に注目し、そのような必須特許リストに含まれる日本特許のライセンスを得ないで、標準規格準拠製品として製品を製造または販売をしている企業を、特許権侵害罪で摘発します。パテントプールでライセンスをしている場合には、パテントプールの事務局に対して特許権侵害罪での摘発対象候補の企業名を通知し、それがライセンシーなのかどうかを確認します。ライセンシーでなければ、特許権侵害罪で摘発します。」

「標準規格の必須特許を用いた侵害摘発か。それは、良いところに目を付けた。 日本の電機産業は技術の国際標準化と、技術のモジュラー化を駆動力とした大量普及のパワーで安価・大量生産された新興工業国企業に押されて、多くの分野でシェアと利益を急減させている。今の案は、そのような日本企業の窮地に対する援軍となると思う。」と、内閣官房政務官の木村新之助は、ほっとしたように言った。

「木村政務官、この案にも問題がないわけではありません。」とパテントポリスの佐藤聖子は続けた。
「それは、必須特許の実施料率が大変に低いので、簡単に実施料の支払いができるという事です。したがって、特許権侵害罪での摘発が迫っていることを察知されると、すぐにライセンス契約を行ない、実施料を支払って特許権侵害罪の適用から逃れる事ができます。パテントプールの事務局や、特許権者に対して、パテントポリスによる侵害摘発対象者がライセンシーなのかどうかを確認する連絡を入れると、その情報が侵害摘発対象者に漏れて侵害摘発を逃れる動きにつながる可能性があります。」とパテントポリスの佐藤聖子は説明した。

「今、聖子君の説明した懸念事項に関しては、特許権者に対してパテントポリスから摘発対象者がライセンシーかどうかの問い合わせをする際に、問い合わせ内容の機密を守るように依頼することで大部分は防ぐことができるものと考えています。」とパテントポリス準備室長の平野が補足した。

「話を、パテントポリス総合施策に戻しますと、特許権侵害製品分析センタというものが大変に重要となります。ハイテク製品を分解分析して特許権侵害の有無の確認を迅速に行なわねばなりませんが、それには優れた設備と優れた技術者が必要です。そして、技術と特許権の目利きによる分析プロセスの指揮が必要です。それがありませんと、技術の複雑な構造の前に立ち往生してしまいます。」と平野はさらに述べた。

「パテントポリス総合施策の完成前にでも活動開始できる分野があることと、技術と特許権の目利きがパテントポリスの活動には必要である事が再認識できた。私の方でパテントポリスの総合施策を実現する内閣の体制を整備する。パテントポリス準備室では先ほど佐藤パテントポリスから説明のあった標準規格の必須特許を侵害している外国企業に対する特許権侵害罪の適用の準備をしてくれ。1年後に特許権侵害罪の摘発第1号を行ないたい。この第1号の摘発活動が、その後のパテントポリス総合施策の実行を加速化できるだろう。」と木村政務官は言った。

「ありがとうございます。木村政務官、安岡長官、せっかくパテントポリス準備室に来ていただきましたので、パテントポリスの訓練の様子をご案内いたします。これから、パテントポリスの夏子君と百合子君が潜入捜査などに必要な格闘技の訓練と、遠方からビル内での会話の録音訓練をします。これは、故意侵害を立証するために建物の外から特殊なレーザー光線利用型マイクを用いて行ないます。」と平野パテントポリス準備室長は言って、木村と安岡を地下3階の格闘技訓練場に案内した。


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発行周期: 不定期 最新号:  2019/02/21 部数:  155部

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