特許戦略マガジン

☆特許戦略マガジン☆

第150号 2010年7月9日発行

● パテントポリス 夏子

第5話 パテントポリス夏子の報告

夏子は説明を始めた。
「パテントポリス準備室に転属となりました2005年1月から3ヶ月間の間、大学の新卒生らしくふるまうための訓練と、今後の活動で必要となる潜入捜査のための各種の訓練を受けましたが、本日はその訓練の内容の説明は省略いたします。その後、2005年4月から某電機メーカーに大卒の新入社員として入社し、知財部を希望して、希望どおりに知財部門に配属されました。その後、特許出願業務や中間処理業務などを経て、現在は競合製品の侵害摘発の業務も一部、てがけるようになってきています。」
その後、夏子は20分ほどにわたって、入社している企業の知財部門の実態と、他の企業の知財部の活動の実態について、各種の委員会活動を通じて得た情報も含めて説明した。

「今の夏子君の説明で、日本企業の知財部の活動が特許出願と権利化や知財リスク対策というものに偏っていて、競合企業に対して知的財産権を行使することが少ないし、そのような事ができる人材も大変に少ないというという事はわかった。また、知的財産権侵害訴訟での原告の勝訴の率も小さいし、裁判に時間がかかりすぎるという実態もわかった。
これらの事実は、民間企業の知財部の活動にだけ任せておいたのでは、日本の基幹産業の産業競争力を守れないという事と、警察庁による特許権侵害罪の摘発の活発化が大きな意義を持つという事も示している。それでは、本来の目的であった技術と特許権についての目利き能力は獲得できたのか?」と、警察庁の権藤長官は尋ねた。
「結論から言いますと、目利き能力の第1段階の獲得はできたと思いますが、まだまだパテントポリスとしては能力が不足していると考えています。
第1段階と言いますのは、大量の特許情報を統計的に分析して、重要性の高そうな技術分野を抽出する方法、技術分野と事業分野の関係を見出す方法、
権利範囲の広そうな特許権を抽出する手法を使えるようになったという事です。しかし、これは技術分野という粒度の粗い分析でしかありません。
もっと細かいピンポイントで特定の特許権の特定の請求項を見つけ、その請求項で示される技術が死命を決する商品分野を特定し、その商品分野の大きな影響を受けて盛衰する産業分野を具体的に特定できるという、本当の目利きのレベルには、私は残念ながら達することが出来ていません。目利きとか名人と言えるレベルにまで到達している人は、私が入った部署にはみあたりませんでした。本来は、私が自分で努力して5年の間に目利きとなれるようにすべきだったとは思いますが、私はそこまで出来ませんでした。」と、夏子は言った。

「やはり、目利きと言える人材に指導してもらえる環境がないと5年間では自分自身を鍛えて目利きになることは無理ということか。」と、権藤長官はつぶやいた。
「いや、夏子君そう落胆することはない。目利きの第1段階まで到達できただけでも大きな成果と言える。注目すべき技術や特許権を第1段階のレベルまで絞り込むことができたなら、その分野に対して、多くの人員を投入して、侵害されると日本の基幹産業に大きなダメージを与える特許権を抽出することは可能だ。第2段階以上のレベルの目利きになってもらうにこした事はないが、まずは夏子君が第1段階の目利きに到達できたことは大きな成果だと思うよ。」と、平野パテントポリス準備室長は夏子をねぎらった。
「平野室長、そう言って頂けると気持ちが楽になります。しかし、一つだけ、耳寄りの情報をつかんでまいりました。私の職場から北に20キロメートルほどの峠を越えて、さらにその先にある山を登ったその頂上に目利きと言われた人物が住んでいるとのことです。その人の名はわかりませんが、かつて知財人材育成の道場を開いていたことがあったとのことです。」と、夏子は目をぱっちりと開けて自信ありげに言った。

「そう言えば、私も2007年頃に知的財産管理研究会でそのような道場の存在を聞いたことがある。道場の名は何と言ったか、思い出せない。」と、パテントポリス準備室長の平野は言った。

「私も、そのような道場の事を聞いたことがあります。確か、研心特許道場という名だったと思います。私の勤務先の近くのエステティックサロンの待合室に置いてあった雑誌の記事だったと思います。変な事をしている所だなという印象を持ったことを覚えています。」と、パテントポリスの小林百合子が言った。

「わかった。小林君と青山君の記憶が唯一の手がかりだ。後で、その研心特許道場について詳しく調査をしてくれ。」と平野は言った。

-------
(C) Copyright 2010 久野敦司(E-mail: patentisland@hotmail.com ) All Rights Reserved

特許戦略マガジン

発行周期: 不定期 最新号:  2019/02/21 部数:  155部

ついでに読みたい

特許戦略マガジン

発行周期:  不定期 最新号:  2019/02/21 部数:  155部

他のメルマガを読む