特許戦略マガジン

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第149号 2010年7月6日発行

● パテントポリス 夏子

第4話 国防組織としてのパテントポリスとは

パテントポリス準備室長の平野は説明をさらに続けた。
「国防という場合、普通は領土・領海・領空の防衛を指します。しかし、よくよく考えてみると、国民の生存基盤を防衛することが国民を防衛することに直結するという前提があるから、
国民の生存基盤である領土・領海・領空を防衛しているわけです。しかし、現在の日本国は農林業や漁業という一次産業を中心にしている国家ではありません。
工業さらには情報産業も国民の生存基盤としての基幹産業となっています。基幹産業が衰退すると、国民の生存基盤も破壊されます。特に、天然資源の乏しく人口の多い日本では基幹産業である工業と情報産業が重要です。そこで、国防のために基幹産業を国家が防衛することも必要となります。この基幹産業を国家が防衛するための有力な手段として、特許権侵害罪の摘発があります。これを知的財産基本法第16条に基づいて実行していこうというものです。」
特許庁長官の安岡は質問した。
「特許法第25条によって、例えばパリ条約加盟国の外国企業にも日本での特許権の取得を認めています。もしも、外国企業が平野室長の言われる基幹産業の防衛に必要な特許権を保有していたとしたら、どう考えるのでしょうか?」
「その点は、明確です。特許権侵害罪の摘発に用いる特許権の権利者が誰であるかや、特許権者の意志は、侵害摘発活動とは無関係です。このようにすることで、パリ条約でいう内国民待遇と特許権侵害罪の摘発活動は無関係という論理構成が可能となるだけでなく、迅速な侵害摘発も可能となります。」と平野は付け加えた。

「それでは、どのような特許権を特許権侵害罪の適用対象としてパテントポリスは選択するのですか?」と、内閣官房政務官の木村新之助は尋ねた。
「選択基準の詳細規定と、選択手続きや選択のためのツールの整備を、パテントポリス準備室のスタッフが作成中ですが、大まかには次のように言えます。すなわち、侵害の事実を明確に立証でき、侵害摘発をしなければ大きなダメージを受ける日本の基幹産業が存在していて、対象の特許権が存続していて、侵害している外国企業に故意侵害の意志があることの証拠を確保できる可能性があるというものです。」と平野は説明した。
「わかりました。それでは、パテントポリスの活動は政府の産業政策とも密接に関係するということですね。そして、侵害の事実の立証という点で特許庁の専門能力が大いに寄与でき、それは警察と検察と裁判所にも必要とされる。そのため、内閣官房が全体調整をする必要があるということですね。」と木村は言った。
「そのとおりです。団総理は数年前からその事を指摘されておられましたし、これは知的財産管理研究会でも2003年頃から議論してきた事です。」と、平野は答えた。
「内閣官房が中心となって、警察庁、特許庁、経済産業省、法務省の合同でパテントポリス総合施策を構築していくという段階になったということです。木村政務官、よろしくお願いいたします。
ただし、この活動は役人だけでできるというものではありませんし、法整備をするだけでできるというものでもありません。
どのような技術がどのような基幹産業の死命を決するものであり、そのような技術をカバーする特許権はどれなのかを迅速・的確に把握することと、外国企業による特許権侵害の端緒を嗅ぎ取ることが、必須です。これは、技術と特許権についての大変な目利きでなければ出来ないことです。
この目利き能力をパテントポリスは獲得することが必要であり、そのために、ここにいる3名を含む10名を企業の知財部門の社員にさせて、5年前からそのような能力の獲得に努めさせてきたわけです。木村政務官と安岡特許庁長官にパテントポリスの現状と課題のキーポイントを聞いていただくために、まずは、パテントポリスの夏子君にこれまでの企業の知財部での活動の概要と獲得できた能力の説明をしてもらいます。その後に、パテントポリス総合施策についてのご説明をしたいと思います。」と平野は、夏子に説明を促した。

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