ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

【嶌信彦】時代をよむ 置き去りにされる重厚長大 ―時代を先取りする新産業を探せ―

2018年 12月 28日 vol.282

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置き去りにされる重厚長大
―時代を先取りする新産業を探せ―
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 新たなブラックマンデー(暗黒の月曜日)――。オハイオ州ローズタウン市の地元紙は11月末にGM(ゼネラルモーターズ)の工場の閉鎖をこう報じた。

 昨年から3000人が解雇され、今回さらに1500人の雇用が2019年3月になくなるという。生産縮小に伴う整理でこれまでも外部委託が進み、かつてGM労働者が生産していた座席やバンパーは、現在関連会社で半分の賃金で生産されるようになったのだ。トランプ氏が大統領選の前に選挙運動でやってきた時、「オハイオを去った仕事はまた戻ってくる。引っ越すなよ、家を売るなよ」と呼びかけ労働者を熱狂させたという。しかし解雇は続き、工場全体が生産停止になろうとしている。

■錆びた街オハイオ
 オハイオ州は中西部の製造業の州として生き残ってきた。だがいまや、かつては黄金期を極めた中西部の“重厚長大”の製造業の街が次々と“錆びた街”に変貌し、ラストベルト(最後の地帯の街)といわれる状態になってきているのだ。

 中西部の前に衰退した地域は、ミシガン州のデトロイトやピッツバーグなどを中心とする東海岸の工場地帯だ。自動車の街、鉄の都といわれ、1970年代までは、それこそアメリカの繁栄を象徴する地域だった。金曜の夜になるとニューヨークへ飛行機で飛びレストランでおいしいご馳走を食べ、ミュージカルを見て日曜の夜に帰宅するというのが当時の中流階級のライフスタイルだったという。

■全盛期のフリント市は
 しかし70年代半ばに入ると日本の鉄鋼、自動車との競争に敗北し、街は徐々に寂れていった。私がワシントン特派員としてアメリカを取材していた80年初頭は日米自動車摩擦が最も激しい時期で、私もよく現地取材に出かけたものだ。今でも忘れられないのはGMの発祥地であるミシガン州フリント市に出かけた時のことだ。“フリント・オブ・ミシガン”といえば今の日本の豊田市のような存在でアメリカ中にその名が知れ渡り、大統領選挙時などではまずこの地で第一声を上げていた。

 だが80年代初頭のフリント市は4ヵ~5ヵ所にあったGM工場の多くが閉鎖され、街には人影も少なかった。自動車工たちは「もうこの街では食べていけない」と言い、景気のよかった西海岸やフロリダの方へ転居して行った。その際も家を買ってくれる人はほとんどいなかったため、捨てていく人が多かったほどだ。当時のラザフォード市長と面会した時、「もはや車では食べていけない。日本の元気の良い企業を街に招きたいので紹介して欲しい」と依頼された。
市長や有識者、労組などのチーム10人ほどが日本の各地を廻って誘致を呼びかけるので東京・大阪・名古屋などで講演会をする際、聴衆を集めて欲しいというのだ。放っておくわけにもいかず、新聞に報じたり東京の山中貞則通産相(当時)に電話し準備してもらったほか、各TV局のワイドショー担当者に訪問時に取り上げてくれるよう依頼したりした。

 その結果、ワイドショーの相乗効果もあってか各会場は満員となり、講演会は大成功。その後アメリカ進出を決断する企業も現れたりして、市長からは随分と感謝されてフリント市の名誉市民に推挙されたりした。

■いまや、IT、5G産業の時代
 アメリカは、その後景気回復を果たし元気を取り戻すことになるが、2000年代以降その中心的役割を果たしてきたのはアップル、マイクロソフト、グーグル、フェイスブックなどのIT産業だった。オハイオ、ミシガンなどの中西部の旧産業は一時的に盛り返しても歴史的役割を終えたのか、結局第二のブラックマンデーを迎えるハメになっているといえるだろう。

 こうした産業の歴史の興亡はアメリカに限らず日本も同じだ。日本では未だに自動車、鉄鋼、電機など往年のビッグ企業の返り咲きを期待しているが、明らかに時代はIT・5Gなどの産業へ移りつつあるとみるべきだろう。国として旧い産業のまま固執していると時代においてゆかれるのではなかろうか。
【TSR情報 2018年12月27日】

※なお、ブログにフリント市のラザフォード市長より名誉市民として鍵を授与された際の画像を掲載しております。ご興味をお持ちの方は合わせて以下URLを参照下さい。
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20181228

◆お知らせ
・次回 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』は放送時間が変更に
 「第60回『輝く!日本レコード大賞』」放送のため、12月29日(土)20:30-21:00からの放送日時が変更になります。
 ゲストに東京大田区にある町工場・小松ばね工業会長の小松節子氏をお迎えいたします。
 父の急死がきっかけで任された事業承継のみならず家の相続問題まで、様々な苦難を乗り越えてこられた当時のエピソードについてお伺いする予定です。

 12月29日(土)の次は通常の時間に戻り、1月6日(日)21時30分より小松氏を引き続きゲストにお迎えし、お届けする予定です。
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20181227

 本メルマガにて12月14日に小松氏のことをテーマに執筆したコラム「40歳の主婦から女性社長になって30年 ―インドネシアに子会社も設立―」を配信いたしました。26日のまぐまぐニュースに掲載いただいておりますので、ぜひ改めて合わせてお読みいただけると幸いです。
 https://www.mag2.com/p/news/380634

・1月15日 国際交流基金主催 中央アジア公開セミナー「中央アジアの歴史と文化を語る」のご案内
 本セミナーは中央アジア交流ミッションの一環として行なわれるものです。嶌はメンバーとして2016年から2017年にかけて実際に中央アジアを訪問しています。中央アジア5か国(カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)から専門家を1名ずつお呼びし、各国の歴史や文化についてお話しいただくものです。
 日時	2019年1月15日(火曜日)15時~17時30分
 会場	都立中央図書館4階 多目的ホール 東京都港区南麻布5丁目7─13
 主催	国際交流基金、東京外国語大学
 詳細は以下を参照下さい。
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/201812251

・日本ウズベキスタン協会創立20周年記念新年会開催 ~本場のウズベク料理やダンス、ドゥタール演奏を堪能~
 早いものでウズベキスタン協会を設立してから20年も経ちました。そこで20年経過の記念すべき新年会としてゲストに中央アジア古代史の第一人者である前田耕作先生をお招きして「シルクロードと玄奘三蔵」と題して華やかな世界の中心となっていた時代の中央アジアの歴史を30分程度、語っていただくことになりました。その後、前田先生と嶌が現代の中央アジアの存在意義と将来、日本との関係について対談(15分程度)をする予定です。

 ウズベキスタン大使館差し入れの本場ウズベク料理やウズベクダンス、ドゥタールの演奏をお楽しみいただけます。
 [日 時]2019年1月26日(土)13:30~16:30
 [会 場]日本プレスセンタービル 10 階(千代田区内幸町 2 ─ 2 ─ 1) 
 [会 費]一般5,000円、会員及び同伴者3,000円、学生2,000円、留学生・外国人の方1,000円  
詳細は以下を参照下さい。
  http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20181218

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嶌信彦オフィシャルサイト   http://www.nobuhiko-shima.com/

「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」特設サイト
http://navoi.nobuhiko-shima.com

嶌信彦公式ツイッター https://twitter.com/shima_nobuhiko

嶌信彦公式Facebook    https://www.facebook.com/nobuhiko.shima.1

NPO法人日本ウズベキスタン協会サイト http://www.japan-uzbek.org/

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発行周期: ほぼ 平日刊 最新号:  2019/02/19 部数:  1,693部

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