ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

【嶌信彦】時代をよむ 独裁者好みのトランプ大統領

2018年 10月 3日 vol.262

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独裁者好みのトランプ大統領
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 最近、国際社会でまた独裁的政権が目立ってきた。カンボジアでは7月29日の総選挙でフンセン首相が率いる与党・人民党が全議席を獲得したと発表、完全な一党独裁国家となった。カンボジアは自国民を虐殺したポルポト派の長い支配の末、1993年に国連の下で総選挙を実施して、民主化の道を歩み始めていた。

 しかしライバル不在のまま33年間、首相の座にいたフンセン氏は「あと10年は首相を続ける」と公言、欧米からは「今回の選挙は自由でも公正でもなかった」と批判された。日本は河野太郎外相(※)が遺憾の意を表明したものの、自民党は祝辞を送るなどチグハグな対応をみせている。

 拘束されたアメリカ人牧師の解放問題でもめているのがトルコのエルドアン大統領とアメリカのトランプ大統領だ。両国は経済制裁を応酬し合い、トルコ・リラは13日に一時過去最安値を更新した。この対立を受けて新興国の通貨も動揺し安値に陥っている。

 このほかドゥテルテ大統領の率いるフィリピン、ロシアのプーチン政権、東欧諸国なども独裁化が進んでいる。そして何より“アメリカ第一”を唱えるトランプ政権は多国間の貿易協定や人権協定を無視し、トランプ氏が得意とする“ディール(取引)”で相手国に有無を言わせない譲歩を狙う手法を多用化している。

 一方で国力をつけてきた中国も習近平政権が独裁的傾向を強め、アメリカとの貿易、ハイテク争いを巡って一歩も引かず米中貿易戦争の様相までみせてきた。中国は、この10年で実質2倍以上に増えた軍事費で、いまや世界第2位の軍事大国となった。これにつれてロシア、中東各国、東南アジア諸国も軍事費を増やし続けている。多い軍事費を持った政権は独裁化しやすいのだ。

 独裁化は右派政権でも左派政権でも起こり得る。当初は汚職の撲滅や低所得者層への生活支援、治安の改善など大衆受けするポピュリズム政策の実現を訴えるのが常套手段だが、政権が力を持ってくると、結局汚職が横行したり、貧困と格差が目立ってくる。

 2018年は中南米で選挙が相次いだ。ベネズエラ、コロンビア、メキシコでは資源価格の高騰などで汚職が横行して争点になったが、10月のブラジル大統領選挙でも左派のルラ前大統領は人気は高いものの汚職で収監された。代わって元軍人のボルソナロ氏が有力とされるが“ブラジルのトランプ”と呼ばれる人物だ。

 中南米は地理的にアメリカの裏庭にあたり、中国やロシアが関心を持つ。しかもトランプ大統領は4月の米州首脳会議に米大統領として初めて欠席するなど微妙な関係にある。その隙を縫って中国は経済協力をテコにパナマと国交を樹立したほかアルゼンチンの大型プロジェクトに協力。カリブ海のドミニカにも手を延ばし、台湾と断絶させて中国との国交を樹立させている。

 独裁化は国民を抑圧するだけでなく、時として国家関係さえも危うくしてしまう力を持つことがしばしばあるのだ。トランプ大統領は、金正恩朝鮮労働党委員長を「好人物だ。我々のケミストリーは素晴らしく合う」「プーチン大統領を尊敬している。彼はG8にいるべきだ」と強権的指導者に親しみを込めた賛辞を送り、同盟国を戸惑わせている。安倍首相は強権的指導者とケミストリーは合うのだろうか? 
【電気新聞 2018年9月20日】

(※)本記事は10月2日の新組閣前の9月20日に掲載されたものです。

◆お知らせ
・9月30日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』
 ゲスト: 荒俣宏様(作家)
 小学生の頃に貸本屋で毎日のようにマンガを読みふけり、マンガ家になるのが夢だったという荒俣様が「知のモンスター」になっていくまでの人生観につきお伺いしました。語学が堪能になられたきっかけや、幼少期の転居の話などもして下さいました。来週水曜正午までの期間限定で放送音源が番組サイトにて公開中です。
 
 次回(7日)も引き続き荒俣様をゲストにお迎えし、大学卒業後に魚が好きで入った漁業会社で任された驚きの仕事内容や、退社後「帝都物語」をヒットさせ百科事典を作るなど、意外な経歴についてもお伺いする予定です。今回3夜続けて登場いただく予定です。
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20181001

・「平山郁夫と旅するシルクロード」展が10日から帝京大学総合博物館にて開催
 今回、平山郁夫シルクロード美術館(山梨県北杜市)が所蔵するスケッチや現地で収集された切子や置物などが展示されており、シルクロードの雰囲気に触れることが出来ます。さらに、帝京大学シルクロード学術調査団がキルギス共和国にて発掘調査を進めている、東西の結節点として栄えた交易都市のひとつである「アク・ベシム遺跡」についても合わせて紹介されています。
 会期:2018年10月13日(土)~12月15日(土)
 料金:無料
 場所:帝京大学総合博物館(東京都八王子市大塚359 八王子キャンパス ソラティオスクエア B1)
 詳細は以下リンクを参照下さい。
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20181003

・嶌信彦 人生百景「志の人たち」に出演いただいたダンサーの田中泯様の場踊り披露
 前回のゲストとして、嶌信彦 人生百景「志の人たち」に出演いただいた田中泯様が「霧のアーティスト」として世界的に知られる中谷芙二子様が水戸芸術館現代美術ギャラリーにて開催される個展で11月10、11日に場踊りを披露されます。
 https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/18491

・平和祈念展示資料館『シベリアの記憶 家族への情愛~ 香月泰男展』
 9月4日より開催の本展は一部展示替えにより28日まで後期の展示となりました。
 山口県長門市の香月泰男美術館と連携した、貴重な展示ですのでぜひ足を運んで頂けると幸いです。
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20180829 

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「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」特設サイト
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発行周期: ほぼ 平日刊 最新号:  2018/12/14 部数:  1,670部

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