ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

【嶌信彦】時代をよむ 今は中東より朝鮮半島を ―安倍外交センスに疑問も―


カテゴリー: 2018年05月02日
2018年 5月 2日 vol.229

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今は中東より朝鮮半島を
―安倍外交センスに疑問も―
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 安倍首相は連休中の4月29日から5月3日までアラブ首長国連邦(UAE)、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンの中東各国を訪問している。連休中の首相の訪問外交は、いまや恒例となり外交に強い安倍首相のイメージを形成するための大きな“売り”となっている。

 しかし、隣の朝鮮半島で大きな地殻変動が起きつつあり、唯一残っているとされる戦後の冷戦構造に風穴が開こうとしているこの時期に、なぜ朝鮮半島を差し置いて中東訪問なのか。その外交センスに疑問を持つ日本人が多いのではないか。

 先日行なわれた韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の首脳会談で「板門店宣言」を合意した。内容は「朝鮮半島の完全な非核化」を共通の目標にするほか、休戦協定から65年の今年中に「終戦」を宣言し、休戦協定から平和協定への転換を目指すことを確認した。

■朝鮮半島は歴史的転換へ
 朝鮮の両首脳は南北朝鮮の分断の象徴となっていた軍事境界線の38度戦の前で握手し、その後手を携えて二人で共に北側・南側に足を踏み入れた。金委員長は「200メートルという短い距離を越えて来たが、境界線は人が越えにくい高さでもないのに、あまりにも簡単に越えられた。この歴史的な席に11年もかかったことを考えるとどうしてこんなに長くかかったのか、大変だったのか、という思いがした。」と感慨深げにつぶやいていたのが印象的だった。

 しかしこの会談と面会で南北和解が全てうまく終わったかといえば、決してそうではない。和解の精神と原則を確認したものの、今後の具体的内容の詰めは、むしろ厄介で交渉も難しいと予想されるからだ。

■南北の和解の具体化はうまくゆくか
例えば北の非核化をどう確認し、証明してゆくのか、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の非核化は約束したが、日本にとって脅威の近・中距離の核ミサイルをどうするのか、在韓米軍に依存すると予想されるミサイルの処分はどうするのか、北がミサイルを撤去、処分した後の北の体制保証をどう実現するのか、非核化の証明をどのように行なうのか――などの問題をどんな手続きで具体化してゆくのか。
さらに、米朝、北朝鮮と韓国の交流をどう進めてゆくのか、監視と保証を北・南、アメリカ、中国だけでやるのか、ロシア、日本も入って行なうのか、日本の拉致被害者の送還をどう取り扱うのか、今後の軍事バランスをどうするのか、援助などをどう決めてゆくのか――等々、詰めるべき問題はヤマほどある。これらを考えると今回の会談が、本当に新しい歴史の出発点になり得るのか、あるいは途中で崩壊し、結局パフォーマンスだけで終わってしまうのか、まだ誰も成功の確信を持ってはいないのだ。
トランプ米大統領は「歴史的な前進だ」と評価しつつも、具体的な成果をみるまでは“圧力”をかけ続けると言明しているのである。

■日本はアメリカの後を追い続けるだけでいいのか
 問題は日本だ。対北朝鮮問題ではずっとアメリカの後を追い続け、“圧力”を口にしてきた。そのアメリカは文在寅韓国大統領の強力なイニシアチブで北の金正恩委員長を引っ張り出し、トランプ大統領はその努力に応ずる形で金委員長との会談を約束した。その間、日本はほぼカヤの外に置かれ、南北首脳会談が終わってから文大統領やトランプ大統領と話し合ったというのが実情だろう。

 朝鮮半島情勢の行方は日本にとって極めて重大な問題だ。だが、その重要な進展の中で、これまで話し合いの中に入れず間接的な情報しか取れてこなかったのではないか。

■いつもカヤの外だった日本
 米朝首脳会談まであと1ヶ月足らずだ。日本は中東訪問も大事だが、今後の日本の運命に直接関わる朝鮮半島情勢について韓国、北朝鮮、アメリカはもちろんのこと中国、ロシア、台湾、東南アジア諸国などと死に物狂いで話し合いを続け、日本の立ち位置をしっかりと定めておくべきだろう。

 かつての日中国交回復、今回の北朝鮮でも日本は大事な時にカヤの外に置かれてきた。しかし日本は真ん中にいて情報を取り、日本の立場を関係国に主張しておくべきだろう。幸い北朝鮮は日本との話し合いにも前向きと聞く。外交を売りとする安倍内閣なら、この二ヶ月足らずの間に日本の立ち位置、主張を決められるように全力を尽くすべきだろう。

■首脳たちの個性も分析を
 細かな虫の目で観察し、大所高所から見る鳥の目、そして朝鮮半島と日本の歴史を顧みて正しい判断をして欲しいものだ。また、首脳会談は首脳の個性キャラクターが大きく反映するといわれる。日本はもう一度関係国の首脳たちの物の考え方、性格、人柄なども早急に知っておくべきではなかろうか。

【参考資料】
これまでの南北会談の内容比較画像(以下URLを参照下さい)
http://www.nobuhiko-shima.com/image/201805korea.jpg

◆お知らせ
・29日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』
 ゲスト:人気グルメ雑誌“dancyu”の編集長 植野広生様 二夜目 音源掲載
 学生時代から、銀座のキャバレーで黒服バイトしたほか多数のアルバイトを経験。新聞記者などを経て、経済誌の編集を経験後、様々な雑誌で食に関する記事を執筆。その後グルメ雑誌の編集長になるまでの人生観
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/20180502

 次回(6日21:30~)はNHKドラマ「マチ工場のオンナ」の原作を書かれたダイヤ精機社長の諏訪貴子様をお迎えする予定です。
 32歳で育児やパートに追われる主婦だった諏訪さんが、父親の求めで親の町工場に2度入社し、2度解雇された経緯など波瀾万丈人生について。
 https://www.tbsradio.jp/248212

・新宿の平和祈念展示資料館にてGW特別イベントが開催中~戦争に翻弄されながらも、懸命に生きた人たちの"リアル"を感じよう~
 「父や母も知らない戦争を、 僕たちはどうやって知ればいいのだろう。」と題したイベントが6日まで開催中ですので、お知らせいたします。

本イベントでは、語り部の方々のお話、館内ガイドツアー、長野から満州(現、中国東北部)に渡った満蒙開拓青少年義勇軍に志願した少年の目を通して、戦中から終戦までの満蒙開拓の様子を描いたアニメ「満蒙開拓と少年たち 蒼い記憶」が上映される予定です。
 ぜひ多くの方にご参加いただければと思いお知らせいたしました。詳細は以下を参照下さい。
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/201804271 

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