バートランド・ラッセルの言葉366

ラッセル『宗教と科学』第8章 宇宙の目的 n.10

カテゴリー: 2019年01月18日
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 「ラッセルの英語」では,英語の学習に参考になりそうな例文をラッセルの著作からご紹介していますが,「ラッセルの言葉366」では,日本語にした時の'内容'に注目して,ラッセルの発言をご紹介していきます。
 読者と一緒に育てていきたいと思っていますので,誤訳や不適切な訳等がありましたら,お知らせいただければ幸いです。

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 ラッセル『宗教と科学』第8章 宇宙の目的 n.10
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 前の段落の最初にあげた二つの問題に戻ることにしよう。前の方の章で考察
したように,もし我々の身体活動の全てが生理学的な原因を持っているのなら,
我々の心は因果的に(原因として)重要でないことになる。我々が他人と意思
疎通を図ったり,外界に影響を与えることができるのは身体活動(身体を使っ
ての行為)によってだけであり,我々(人間)の考えることは,我々の身体の
行動に影響を与えうる場合にのみ重要である。(訳注:しゃべることも身体活
動の一つ。考えるだけで他者に伝えることができなければ考えることは重要な
ことでなくなってしまう。)けれども,心的なもの(精神的なもの)と物理的
なものとの区別は便宜上の区別にすぎず,我々の身体活動(行為)は全て物理
学の領域内の原因を持つにもかかわらず(and yet),心的事象(精神的事象)
はそれらの(身体活動の)原因のひとつかも知れない。実際的な問題は,心
(精神)と身体(肉体)という言葉(用語)で述べらるべきではない。恐らく
,次のように言ったらよいのではないだろうか。(即ち)我々の身体活動は物
理化学的法則(physico-chemical laws)で決定されるのだろうか? もしそう
だとしたら,人工的に作り上げられた物質という概念を用いずに,直接的に心
的事象(精神的事象)を研究する心理学という独立した科学は依然として存在
するだろうか?

 これら二つの問いの内,前者の問い(我々の身体活動は物理化学的法則で決
定されるのだろうか?)に対しては肯定的な答えをする一定の証拠があるが,
そのどちらの問いにも自信をもって答えを与えることはできない。その一定の
証拠というのは直接的なものではない。(即ち)我々は人間の運動(行動)を
惑星である木星の運動を計算するように計算することはできない。しかし(そ
うは言っても)人間の身体と生命の最も原初的な形態(原始的な形態)との間
に明確な線(境界線)を引くことはできない。両者の間には、我々に言いたく
させるようなギャップ(間隙)は存在しない。ここにおいては(この問いにつ
いては)物理学も化学も十分なものではなくなる。そうして,既に考察したよ
うに,生物と無生物との間にも同じように間隙はない。従って,恐らく,物理
学と化学は最初から最後まで(throughout 全体を通して)最高の地位にあると
思われる。

Chapter 8:Cosmic Purpose , n.10

To return to the two questions at the beginning of the preceding 
paragraph : as we saw in an earlier chapter, if our bodily actions all
 have physiological causes, our minds become causally unimportant. 
It is only by bodily acts that we can communicate with others, or have
any effect upon the outer world ; what we think only matters if it can
 affect what our bodies do. Since, however, the distinction between 
what is mental and what is physical is only one of convenience, our 
bodily acts may have causes lying wholly within physics, and yet 
mental events may be among their causes. The practical issue is not
 to be stated in terms of mind and body. It may, perhaps, be stated
 as follows : Are our bodily acts determined by physico-chemical laws?
 And, if they are, is there nevertheless an independent science of 
psychology, in which we study mental events directly, without the 
intervention of the artificially constructed concept of matter?

Neither of these questions can be answered with any confidence, though
there is some evidence in favour of an affirmative answer to the first
 of them. The evidence is not direct ; we cannot calculate a man's 
movements as we can those of the planet Jupiter. But no sharp line can
 be drawn between human bodies and the lowest forms of life ; there is
 nowhere such a gap as would tempt us to say : here physics and 
chemistry cease to be adequate. And as we have seen, there is also no 
sharp line between living and dead matter. It seems probable, 
therefore, that physics and chemistry are supreme throughout.
 出典:Religion and Science, 1935, chapt. 8: Cosmic Purpose
 情報源:https://russell-j.com/beginner/RS1935_08-100.HTM

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発行周期: ほぼ 日刊 最新号:  2019/02/19 部数:  70部

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