バートランド・ラッセルの言葉366

ラッセル『宗教と科学』第6章 決定論 n.10

カテゴリー: 2018年12月04日
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 「ラッセルの英語」では,英語の学習に参考になりそうな例文をラッセルの著作からご紹介していますが,「ラッセルの言葉366」では,日本語にした時の'内容'に注目して,ラッセルの発言をご紹介していきます。
 読者と一緒に育てていきたいと思っていますので,誤訳や不適切な訳等がありましたら,お知らせいただければ幸いです。

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 ラッセル『宗教と科学』第6章 決定論 n.10
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 第6章 決定論 n.10

 このような議論(論証)によって提起されている問題(問い)は,原子とは特別な
関係を持たないものであり,その問題について考える際,我々の心の中から量子力学
に関するあらゆるややこしい事柄(complicated business)を放逐しても(dismiss
 from)よいだろう。その代りに(原子の代わりに)1ペニー硬貨を投げるというお
馴染みの操作(operation)を取り上げてみよう(the familiar operation of 
tossing a penny)。我々はその1ペニー硬貨の回転は力学の法則によって決定され
ており,厳密な意味で,硬貨の表が出るか裏が出るか(heads or tails)を決めるのは
「偶然」ではないと確信している(参考:EXILE / Heads or Tails (Music Video)。
しかし,その計算は我々にとってはとても複雑なので,任意の場合において,どちら
が出るか(表がでるか裏が出るか)我々には分らない。もしあなたが1ペニー硬貨を
非常に多くの回数投げたなら -私はこれまでその充分な実験的証拠を見たことは全
くないが- 裏が出るのと同じくらいの頻度で表が出ると言われている。さらに,こ
のことは確実ではないが極めて起こりそうなことである(確からしい/確率が高い)
とだけ言われている。あなたが1ペニー硬貨を10回投げ続けて,10回とも表が出るこ
ともあるかも知れない。10回の硬貨投げを1024回(注:従って投げる総回数は10240
回)繰り返してやり,その中で一度だけ表が10回出続けることは驚くことではないだ
ろう。(注:荒地出版社刊の津田訳ではこの箇所はあいまいな訳になっている。)し
かし,もっと何度も繰返したら,表だけが続けて出る回数はもっとずっと稀になって
いく(注:言うまでもなく,そういう例は増えていくが、全体のなかでの頻度/割合
は減っていくので「稀になっていく」ということ)。もしあなたが1ペニー硬貨を 
1,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000 回も投げたとしても,100回続けて表
が出るのが一度得られれば、あなた運が良いであろう(注:連続1,000回表が出続け
るのはもっと稀になる)。少なくとも,理論はそういうことであるが,人生は短く,
それを経験的に試すことはできない。

 量子力学が発見されるずっと以前から,すでに統計的な法則は物理学において重要
な役割を果していた。たとえば,気体(ガス)はあらゆる方向に多様な速度でランダ
ムに動いている膨大な数の分子で成り立っている。(分子の)平均速度が大きい時に
はその気体(ガス)は熱く,小さい時にはその気体(ガス)は冷たい。全ての分子が
静止している時には気体(ガス)の温度は絶対零度である。分子は常に相互に衝突し
合っているということのために,平均速度よりも速く動いている分子(衝突により)
は速度が低下し,遅く動いている分子は(衝突により)速度が速まる。これが,もし
異なった温度の二つの気体(ガス)が接触すれば,両方の気体が同一の温度になるま
で,冷たい方(の気体)は暖かくなり,温かい方(の気体)は冷たくなる理由である
しかし,このようなことは全て起こりそうなことである(起こる確率が高い)という
ことに過ぎない。最初は(部屋全体に渡って)同じ温度にあった室内において,速く
動く分子は全て(部屋の)一方の側に集まり,ゆっくり動く分子は全て(部屋の)反
対側に集まるかも知れない。そのような場合,何らか外的な原因が働かない限り,部
屋の片側は冷たくなり,部屋の反対側は暑くなる。さらに,空気の全てが部屋の一方
(片側)に集まり,(部屋の)反対側の半分が空になる(気体がなくなる)ことさえ
起るかも知れない。このようなことは,分子の数が秘めて大であるから,コインが
100回続けて表が出ることより確率は甚だしく少ないが,厳密に言えば,不可能なこ
とではない。

Chapter 6 Determinism, n.10

The question raised by this argument is one which has no special connection
 with atoms, and in considering it we may dismiss from our minds all the 
complicated business of quantum mechanics. Let us take instead the familiar
 operation of tossing a penny. We confidently believe that the spin of the
 penny is regulated by the laws of mechanics, and that, in the strict sense,
 it is not "chance" that decides whether the penny comes heads or tails. But
the calculation is too complicated for us, so that we do not know which will
 happen in any given case. It is said (though I have never seen any good 
experimental evidence) that if you toss a penny a great many times, it will
 come heads about as often as tails. It is further said that this is not 
certain, but only extremely probable. You might toss a penny ten times 
running, and it might come heads each time. There would be nothing s
urprising if this happened once in 1,024 repetitions of ten tosses. But when
you come to larger numbers the rarity of a continual run of heads grows much
 greater. If you tossed a penny 1 ,000,000,000,000,000,000,000, 000, 000,000
 times, you would be lucky if you got one series of 100 heads running. Such 
at least is the theory, but life is too short to test it empirically. 

Long before quantum mechanics were invented, statistical laws already played
 an important part in physics. For instance, a gas consists of a vast number
 of molecules moving at random in all directions with varying speeds. When 
the average speed is great, the gas is hot ; when it is small, the gas is 
cold. When all the molecules stand still, the temperature of the gas is the
 absolute zero. Owing to the fact that the molecules are constantly bumping
 into each other, those that are moving faster than the average get slowed 
down, and those that are moving slower get speeded up. That is why, if two
 gases at different temperatures are in contact, the colder one gets warmer
 and the warmer one gets colder until they reach the same temperature. But
 all this is only probable. It might happen that in a room originally at an
 even temperature all the fast-moving particles got to one side, and all the
slow-moving ones to the other ; in that case, without any outside cause, one
side of the room would get cold and the other hot. It might even happen that
 all the air got into one half of the room and left the other half empty. 
This is vastly more improbable than the run of 100 heads, because the number
 of molecules is very great ; but it is not, strictly speaking, impossible 
 出典:Religion and Science, 1935, chapt. 6: 
 情報源:https://russell-j.com/beginner/RS1935_06-100.HTM

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発行周期: ほぼ 日刊 最新号:  2018/12/10 部数:  71部

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