バートランド・ラッセルの言葉366

ラッセル『宗教と科学』第6章 決定論 n.7

カテゴリー: 2018年11月29日
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 読者と一緒に育てていきたいと思っていますので,誤訳や不適切な訳等がありましたら,お知らせいただければ幸いです。

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 ラッセル『宗教と科学』第6章 決定論 n.7
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 第6章 決定論 n.7

 量子力学によると,原子が一定の状況において何をするか(=どのような動きをす
るかまたどのような変化をするか)(我々は)知ることはできない。原子には(可能
性として)開かれている一定の範囲の選択肢(a definite set of alternatives )
が存在しており,時にはある選択肢を,また時には別の選択肢を選ぶ。我々は,どの
ような比率の事例で一つの撰択がなされ,どのような比率の事例で2番めの選択が,
さらにどのような比率の事例で3番めの選択がなされるか等々,について知っている
。しかし,個々の実例における選択を決定する法則については,我々はまったく何も
知らない。我々は(ロンドンの)バディントン駅の切符売り場の係員(booking-office
 clerk)と同じ立場にある。彼はその気になりさえすれば,パディントン駅からバー
ミンガム駅へ,パディントン駅からエクセター駅へ、また,パディントン駅からその
他の駅へ,向かう旅行者の割合について知ることができるが,ある場合にある選択を
行い、別の場合には別の選択を行うにいたった個々の理由については何も知らない。
けれども,これらの事例は(物理学者の事例と切符売りの事例とは)「完全に」類似
しているわけではいない。なぜなら,切符売りは,仕事以外の時(moments 瞬間,機
会)を持っており,その時には,切符を扱っている時には彼らが言及しないような,人
間に関するいろいろなことを発見できるからである。物理学者にはそういった利点
(advantage 長所)はない。なぜなら,彼(物理学者)は仕事をしていない時には原
子を観察する機会はまったくないからである。彼は,実験室にいない時には,何百万
もの原子から成り立っている大きな塊(注:large masses 分子でできているもの;
大きな質量)によってなされることを観察可能なだけである。そうして,(原子を観
察できる)実験室においても,原子は,汽車が発車直前に急いで切符を受け取る人々
(乗車客)よりも話しかけることができるということはほとんどありえない。従って
,物理学者の(原子の行動に関する)知識は,切符売りが勤務時間外に常に居眠りし
ていた場合(時)の知識のようなものであろう。

 これまでのところ,原子の行動から導き出される,決定論に反対する議論(論拠)
は,ほとんど我々の現時点での無知に基づいており,また新法則の発見によって近い
将来(to-morrow = tomorrow)反駁されるかも知れない,と思われるかも知れない
(it might seem that)。ある点まで,,それは真実である。原子に関する我々の詳細
な知識はごく最近のものであり,それは今後増すだろうと考える充分な理由がある。
どうして,一つの原子がある瞬間にある一つの可能性を選択し,他の瞬間には他の可
能性を選択する理由を示す法則が発見されるかも知れない,ということを誰も否定で
きない。現在のところ我々は二つの異なった選択がなされる先行(状態)(antecedent
 前件;先立つもの,先行するもの)の相違について何も知らないが,何時かそのよう
な相違が見出されるかも知れない。もし,我々が決定論を信ずる何らこの強力な理由
を持つとしたら,この議論(論拠)は重要な役割を果たすであろう。(If we had 
any strong reason to believe in determinism,仮定法)

Chapter 6 Determinism, n.7

According to quantum mechanics, it cannot be known what an atom will do in 
given circumstances ; there are a definite set of alternatives open to it, 
and it chooses sometimes one, sometimes another. We know in what proportion
of cases one choice will be made, in what proportion a second, or a third,
 and so on. But we do not know any law determining the choice in an 
individual instance. We are in the same position as a booking-office clerk
 at Paddington, who can discover, if he chooses, what proportion of 
travellers from that station go to Birmingham, what proportion to Exeter,
 and so on, but knows nothing of the individual reasons which lead to one
 choice in one case and another in another. The cases are, however, not 
wholly analogous, because the booking-office clerk has his non-professional
moments, during which he can find out things about human beings which they
 do not mention when they are taking tickets. The physicist has no such 
advantage, because in his unprofessional moments he has no chance to observe
 atoms ; when he is not in his laboratory, he can only observe what is done
by large masses, consisting of many millions of atoms. And in his laboratory
 the atoms are scarcely more communicative than the people who take tickets
 in a hurry just before the train starts. His knowledge, therefore, is such
 as the booking-office clerk's would be if he were always asleep except in
 working hours. 

So far, it might seem that the argument against determinism derived from the
behaviour of atoms rests wholly on our present ignorance, and may be refuted
 to-morrow by the discovery of a new law. Up to a point, this is true. Our
 detailed knowledge of atoms is very recent, and there is every reason to 
suppose that it will increase. No one can deny that laws may be discovered
 which will show why an atom chooses one possibility on one occasion and 
another on another. At present, we know of no relevant difference in the
 antecedents of the two different choices, but some such difference may be
 found any day. If we had any strong reason to believe in determinism this
 argument would carry great weight.
 出典:Religion and Science, 1935, chapt. 6: 
 情報源:https://russell-j.com/beginner/RS1935_06-070.HTM

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発行周期: ほぼ 日刊 最新号:  2018/12/10 部数:  71部

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