バートランド・ラッセルの言葉366

ラッセル『宗教と科学』第5章 魂と肉体 n.18

カテゴリー: 2018年11月07日
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 読者と一緒に育てていきたいと思っていますので,誤訳や不適切な訳等がありましたら,お知らせいただければ幸いです。

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 ラッセル『宗教と科学』第5章 魂と肉体 n.18
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 第5章 魂と肉体 n.18

 最後に述べておくべきことは,魂と肉体との旧来の区別は,「心」がその霊性(霊
的性格)を失ったと同様に「物質」もその旧来の堅固さまったく失っってしまったた
めに,消失してしまったということである。物理学のデータは誰もが見ることができ
るという意味において公的なもの(人間共通のもの)である一方(whereas しかるに
,これに反し),心理学のデータは(個々人の)内省(内観)によって得られるという
意味で個人的(私的)なものであると今でも時々考えられており,また,従来広く考
えられていた。けれども,この(両者の)差(相違)は程度の差(相違)にすぎない。
二人の人間が同時に厳密に同じ対象を知覚することは出来ない。なぜなら,二人の視
点の差(違い)が,彼らが見るもの対する差(差異,違い)を生じさせるからである。
(従って/即ち/このように)物理学のデータも,厳密に検証すれば(吟味すれば),
心理学のデータと同様の種類の個人的性質(privacy 私的性質)を持っている(ので
ある)。そして,物理学のデータが持っている準周知性(quasi-publicity)は心理
学においても必ずしも不可能ではない(注:個々の人間が採取する物理学のデータは
どうしても一部個人的な性質が含まれてしまい、心理学のデータはかなり個人的な性
質がある。しかし,心理学ノデータも,物理学のデータ同様に,「準」周知性(人間
共通の知識)をもたせることも不可能ではないだろう,といったニュアンスか?)。

 これら二つの科学(物理学と心理学)の出発点を形作る(諸)事実は,少なくとも一
部は,同一のものである。(たとえば)我々が見る色の付いた布片(patch of colour)
は,物理学と心理学にとって,等しく,データである。物理学はある種の文脈のなかで
一連の推論をすすめ,心理学は別の文脈のなかで一連の推論をすすめる。非常に雑な
言い方であるが,物理学は脳の外部の因果関係を取扱い,心理学は脳の内部の因果関
係を取扱う,と言ってもよいかも知れない。ただし,後者の場合,脳を調べる生理学
者の外的観察によって発見されるものは除外する(必要がある)。物理学と心理学の
両方に共通したデータは,ある意味で,脳内で起こる(生じる)出来事(events 事象)
である。それらの出来事(事象)は,物理学によって探求される外的な原因の連鎖と,
心理学によって探求される内的な結果 -記憶や習慣など- の連鎖を有している。し
かし,物理学的世界(物的世界)と心理学的世界(心的世界)の構成要素の間に何ら
か根本的な相違(違い)が存在するという証拠はまったくない。我々は両者について
,以前にそう思われていたほど,知識をもっていない。しかし,我々は「魂」も「肉
体(身体)」も(両方とも,現代科学の中に存在する余地がないことは,かなり確実
であることを充分知っている。(注:たとえば,物理学においては,人間であろうが,
石ころであろうが,同じ原子の集合にすぎない。)

Chapter 5: Soul and body, n.18

Finally, it should be said that the old distinction between soul and body 
has evaporated quite as much because "matter" has lost its old solidity as
 because "mind" has lost its spirituality. It is sometimes still thought, 
and it used to be thought universally, that the data of physics are public,
 in the sense that they are visible to anyone, whereas those of psychology 
are private, being obtained by introspection. This difference, however, is
 only one of degree. No two people can perceive exactly the same object at
 the same time, because the difference in their point of view makes some 
difference to what they see. The data of physics,"when closely examined, 
are seen to have the same kind of privacy as those of psychology. And such
 quasi-publicity as they possess is not wholly impossible in psychology.

The facts which form the starting-point of the two sciences are, at least 
in part, identical. The patch of colour that we seel is a datum for physics
 and psychology equally. Physics proceeds to one set of inferences in one 
sort of context, psychology to another set in another sort of context. One
 might say, though this would be putting it too crudely, that physics is 
concerned with causal relations outside the brain and psychology with causal
 relations inside the brain - excluding, in the latter case, those which are
 discovered by the external observation of the physiologist inspecting the 
brain. The data for both physics and psychology are events which, in some 
sense, happen in the brain. They have a chain of external causes, which are
investigated by physics, and a chain of internal effects - memories, habits,
etc. - which are investigated by psychology. But there is no evidence of any
 fundamental difference between the constituents of the physical and the 
psychological world. We know less of both than was formerly thought, but we
 know enough to be fairly sure that neither "soul" nor "body" can find a 
place in modern science.
 出典:Religon and Science, 1935, chapt. 5: 
 情報源:https://russell-j.com/beginner/RS1935_05-180.HTM

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