バートランド・ラッセルの言葉366

ラッセル『宗教と科学』第5章 魂と肉体 n.13


カテゴリー: 2018年10月31日
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「(ほぼ日刊)バートランド・ラッセルの言葉366」
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 読者と一緒に育てていきたいと思っていますので,誤訳や不適切な訳等がありましたら,お知らせいただければ幸いです。

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 ラッセル『宗教と科学』第5章 魂と肉体 n.13
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 第5章 魂と肉体 n.13

 心理学と(人間の)意志に関する理論に戻ろう。多くの,もしかすると大部分の,
我々(人間)の意志には原因があることは,常に明らかである。しかし,正統派の哲
学者たちは,これらの原因は物理的世界(物的世界)における(諸)原因とは異なり
,必ずしも結果を伴うものではない,と主張した(necessitate their effects 結果
を必要とする,結果を伴う)。最大限強い欲求にも純粋な(混じりけのない)意志行
為(注:機械的な行為ではなく意志が介在する行為)によって抵抗することが常に可
能であると,彼らは主張した(注:sheer 混ぜ物のない;全くの/荒地出版社刊の津
田訳では「a sheer act of will」を「意志の全力でもって」と訳出している。/こ
こでは全力かそうでないかは関係ないことに気づくべきであろう)。こうして,次の
ように考えられるようになった。(即ち)我々(人間)の行為が強い感情(激情)に
よって導かれる時には原因があるゆえに(我々は)自由ではないが,時に「理性」と
呼ばれ,時に「良心」と呼ばれる能力(function 機能・働き)が存在し,その導き
に従う時,理性や良心は我々に本物の自由を与える。こうして,単なる気まぐれ
(caprice)と対立する「真の」自由は,道徳律への服従と同一視された。ヘーゲル学
派(ヘーゲル主義者たち)はさらに一歩を進め,道徳律を国家の法律と同一視し,そ
うして「真の」自由は警察に従うことにあった(注意:つまり国家権力に従うこと)
。この説は政府によって大いに好まれた(のであった)。

 けれども,(人間の)意志には時に(時々)原因がないという説(理論)を維持する
ことはとても困難であった。最も有徳な行為さえ,動機が(まったく)ないとは言え
ない。(たとえば)人は,神を喜ばしたいとか,隣人あるいは自分自身の是認を得た
いとか,他人(誰か)が幸せであるのを見たいとか,苦痛を軽減したいとか(いった
動機である)。これらの欲求の中の一つ(どれか)は善い行ないを起こさせる可能性
があるが,もし人にある種の善い欲求が存在していないなら,その人は道徳律が是認
するようなことをしないだろう。我々(人間)は今日,欲求の(いろいろな)原因に
ついて,以前我々が知っていたよりずっと多くのことをを知っている。(その欲求の
原因として)時には内分秘腺(ductless glands)の働きの中にその原因が発見され,
時には初等教育に,時には忘れていた(過去の)経験に,ときには是認されたいとい
う欲求の中に,その他(の中に)(欲求の)動機が発見される。ほとんどの場合,多
くの異なった起源のものが(個々の)欲求の因果関係(the causation of a desire)
の中に入ってくる(enter into ~の一部となる)。そうして,我々(人間)が決意する
時(何かを自分で決める時) -我々を(その欲求の)反対の方向に押しやろうとす
る別の欲求が同時に存在しているかも知れないが- 何らかの欲求の結果として決意
をしていることは明らかである。そのような場合,ホップスが言っているように,意
志は熟慮における「最後の(貪欲な)欲求」(the last appetite in deliberation)で
ある。このようにして,全く原因のない意志行為を防御することはできない。このこ
とが倫理学においてどのような結果をもたらすかについては,後の章で取り扱うこと
にしよう。

Chapter 5: Soul and body, n.13

To return to psychology and the theory of will ; it was always obvious that
many, perhaps most, of our volitions have causes ; but orthodox philosophers
 maintained that these causes, unlike those in the physical world, do not 
necessitate their effects. It is always possible, so they maintained, to 
resist even the most powerful desires by a sheer act of will. Thus it came
 to be thought that when we are guided by passion our acts are not free, 
since they have causes, but that there is a faculty, sometimes called 
"reason" and sometimes "conscience," which, when we follow its guidance, 
gives us real freedom. Thus "true" freedom, as opposed to mere caprice, was
 identified with obedience to the moral law. The Hegelians took a further
step, and identified the moral law with the law of the State, so that "true"
 freedom consisted in obeying the police. This doctrine was much liked by 
governments. 

The theory that the will is sometimes uncaused was, however, very difficult
 to maintain. It cannot be said that even the most virtuous acts are 
unmotived. A man may wish to please God, to win his neighbours' approval or
 his own, to see others happy or to alleviate pain. Any one of these desires
may cause a good action, but unless some good desire exists in a man he will
not do the things of which the moral law approves. We know much more than we
 knew formerly as to the causes of desires. Sometimes they are to be found 
in the working of the ductless glands, sometimes in early education, 
sometimes in forgotten experiences, sometimes in the desire for approval,
 and so on. In most cases, a number of different sources enter into the 
causation of a desire. And it is clear that, when we make a decision, we do
 so as a result of some desire, though there may at the same time be other
 desires pulling us in a contrary direction. In such cases, as Hobbes said,
 will is "the last appetite" in deliberation. The idea of a wholly uncaused
 act of volition is thus not defensible. With the results of this in ethics
 we shall be concerned in a later chapter.
 出典:Religon and Science, 1935, chapt. 5: 
 情報源:https://russell-j.com/beginner/RS1935_05-130.HTM

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