バートランド・ラッセルの言葉366

ラッセル『宗教と科学』第5章 魂と肉体 n.12


カテゴリー: 2018年10月30日
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「(ほぼ日刊)バートランド・ラッセルの言葉366」
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 読者と一緒に育てていきたいと思っていますので,誤訳や不適切な訳等がありましたら,お知らせいただければ幸いです。

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 ラッセル『宗教と科学』第5章 魂と肉体 n.12
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 第5章 魂と肉体 n.12

 この説(心身並行説)は信じ難い上に,自由意志を救いえないという欠点がある。
心身並行説では,身体の状態と心の状態との間には厳密な対応があると想定されてお
り(There wa supposed to be),従って,どちらか一方(の状態)を知ることができれ
ば他方(の状態)も理論的に(は)推論可能だと考えられた(のである)。この対応
説を知っており,かつ,物理学の法則も知っている者は,充分な知識とスキルさえあれ
ば,物理的な出来事(事象)と同様に心的出来事(事象)(の生起を)を予言可能に
なる。いずにせよ(in any case)心的な意志作用は,もしそれに身体的な表現
(manifestations 現れ)が伴わなければ無用なものとなる。あなたは「今日は(お元
気ですか」と言おうとする時,それは身体的行為(物理的な行為)であるので,物理
学の法則が支配した(determined 決定した)。そうして,もしあなたが反対の(意
味の)ことを言うことが事前に決定していたとするなら(=今日はという事が物理的
/身体的に事前に確定していたとするなら),「さようなら」と言おうと「意志する」
こともできたと信ずることはほとんど慰めにならないであろう(注:精神は物質に影
響をまったく与えないというなら,「さようなら」と言いたくても言えない、という
こと)。

 従って,18世紀のフランスにおいて,このデカルト説(心身並行説)が,人間を完全
に物理学の法則によって支配されるものとして扱う純粋な唯物論に席を譲ったことは
驚くべきことではない(注:give place to 席を譲る,~にとって代わられる)。こ
の哲学(唯物論哲学)においては,(人間の)意志はもはやいる場所はなく,罪の概念
は消失する。魂(精神)といったものはまったくせず,従って,人体の中で一時的に
結合するバラバラの個々の原子の不滅(不死)以外には不滅(不死)なものは存在し
ない。唯物論哲学は -フランス革命を過激なものにする一つの要因になり- (フラ
ンス革命中)恐怖の的となり,恐怖政治の時代(注:フランス革命時にロベスピエー
ルを中心とするジャコバン派が行った統治のこと)以後は,当初はフランスと戦って
いる全ての人々にとって,(また)1814年以後はフランス政府を支持した全ての人々
にとって,恐怖の対象となった((注:ナポレオン戦争中の1814年5月30日に,フラン
ス帝国と第六次対仏大同盟の間の戦争を終わらせたパリ条約が締結された。) 英国
は正統信仰にあと戻りし,ドイツはカントの後継たちの理想主義哲学(idealistic 
philosophy)を採用した(idealistic philosophy 理想主義。idealism は理想主義
と訳されたり,観念論と訳されたりするが,ここでは理想主義が適切と思われる)。
次に,ロマン主義(浪漫主義)運動が起こり,感情を好み,人間の行為を数学の公式
によってコントロールすることに耳を傾けようとはしなかった。

 その間,人体生理学において,唯物論を嫌った人たちは,神秘主義あるいは「生命
力」(vital force)の中に逃避した(注:たとえば「生命に非生物にはない特別な
力を認める」生気論(italism)など)。科学は決して(生きた)人体を理解できない
と考える者もいれば,化学や物理学の原理以外の原理に頼る(訴える)ことによって
のみ科学は人体を理解することができると宣言する者もいた。後者には現在いまだ少
数の支持者がいるが,両方の見解のどちらも,今日では生物学者の間にあまり人気が
ない。胎生学,生化学,有機化合物の人工生産等においてなしとげられてきた成果に
より,生命体の特質が化学や物理学の言葉(用語)によって完全に説明可能となるこ
とがますます有り得そうになってきている。もちろん,進化論は動物の体に適用され
る原理は人間の身体には適用され得ないと想定することを不可能にしてきた(してき
ている)。

Chapter 5: Soul and body, n.12

This theory, besides being difficult to believe, had the disadvantage that 
it could not save free will. There was supposed to be a strict 
correspondence between states of body and states of mind, so that, when
 either was known, the other could theoretically be inferred. The man who
 knew the laws of this correspondence, and also the laws of physics, could,
 if he had enough knowledge and skill, predict mental occurrences as well as
physical ones. In any case, the mental volitions were useless if no physical
 manifestations followed. The laws of physics determined when you would say
 "how do you do," since this is a physical action ; and it would be small 
consolation to believe that you could will to say "goodbye" if it was 
foreordained that you should in fact say the opposite. 

It is not surprising, therefore, that the Cartesian doctrine gave place, in
 eighteenth-century France, to pure materialism, in which man is treated as
wholly governed by the laws of physics. Will no longer has any place in this
 philosophy, and the concept of sin disappears. There is no soul, and 
therefore there is no immortality except that of the separate atoms which 
are temporarily joined together in the human body. This philosophy, which 
was supposed to have contributed to the excesses of the French Revolution,
 became an object of horror, after the Reign of Terror, first to all who 
were at war with France, and then, after 1814, to all Frenchmen who 
supported the government. England relapsed into orthodoxy, Germany adopted
 the idealistic philosophy of Kant's successors. Then came the romantic 
movement, which liked emotions and would not hear of the control of human 
actions by mathematical formulae. 

In human physiology, meanwhile, those who disliked materialism took refuge
 either in mystery or in the "vital force" : some thought that science could
never understand the human body, others declared that it could only do so by
 invoking principles other than those of chemistry and physics. Neither of 
these views has now much popularity among biologists, though the latter 
still has a few supporters. The work which has been done in embryology, in
 bio-chemistry, and in the artificial production of organic compounds, makes
 it more and more probable that the characteristics of living matter are 
wholly explicable in terms of chemistry and physics. The theory of evolution
 has, of course, made it impossible to suppose that principles applicable to
 animal bodies are not applicable to those of human beings.
 出典:Religon and Science, 1935, chapt. 5: 
 情報源:https://russell-j.com/beginner/RS1935_05-120.HTM

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