バートランド・ラッセルの言葉366

ラッセル『宗教と科学』第4章 悪魔研究と医学 n.17

カテゴリー: 2018年10月05日
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 読者と一緒に育てていきたいと思っていますので,誤訳や不適切な訳等がありましたら,お知らせいただければ幸いです。

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 ラッセル『宗教と科学』第4章 悪魔研究と医学 n.17
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 第4章 悪魔研究と医学 n.17

 これまで見てきたように,中世時代を通して,病気の予防と治療は,迷信的あるい
はまったく恣意的な(arbitary 原則によらず勝手な)方法で試みられた。解剖学及び
生理学なしには(当時)より科学的なもの(予防や治療)はまったく不可能であり,
そうしてこれらの科学も教会が反対する解剖を行なわないでは可能ではなかった。解
剖学を初めて科学的なものにしたヴュサリウスは,皇帝チャールズ五世 -彼はチャ
ールズ五世は自分が愛顧している医者を失ったら自分の健康は害されるかも知れない
と恐れていた- の医者(侍医)だったので,暫くの間,公的な非難を首尾よく免れ
ていた。王はこのお気に入りの医者がいなくなったら,自分の健康がそこなわれはし
ないかと恐れていた。チャールズ五世の治世下,神学者会議は,ヴュサリウスについ
て助言を求められ,彼らの意見として,解剖は神物冒涜(sacrilege 罰当たりな行為)
ではないと回答した。しかし,(チャールズ五世ほど)病弱でないフィリップ二世は一
人の被疑者(a suspect 嫌疑をかけられた者)を保護する理由を認めなかった。
(そうして)ヴュサリウスはそれ以上解剖のための死体を得ることができなかった。
キリスト教会(カトリック教会)は,人体の中には復活(再生)する肉体の核となる
一つの(頑丈なため)破壊できない骨があると信じていた。ヴュサリウスは,そのこ
とを問われ,そういった骨を未だかつて発見したことがないと告白した。これは具合
わるいことだったが,おそらく,それほど悪いものではなかった。ガレヌス(Galen 
- Claudius Galenus, 129年頃 - 200年頃:ローマ帝国時代のギリシアの医学者で,
彼の学説はルネサンスまでの1500年以上にわたり、ヨーロッパの医学およびイスラー
ムの医学において支配的なものとなった) の医学上の弟子たちは -物理学において
アリストテレスがそうであったように,彼らは医学の進歩において大きな障害になっ
た- ヴュサリウスを無慈悲な敵意をもって追求し,そして遂に(at length)彼を
破滅させる機会を見出した。(即ち)彼が,親族の者の同意を得て某スペインの大公
(grandee 最高位の貴族)の遺体を調べている時,(執刀用)ナイフの下で(その貴
族の)心臓が動いている徴候を示しているのが観察された - あるいは彼の敵たちが
そう言った。彼は殺人の罪の疑いがかけられ,異端審問所に告発された。王が影響力
を行使することによって,彼は聖地への巡礼により懺悔する(罪の償いをする)こと
を許された。しかし,巡礼からの帰路,彼は難破に遭い,岸に達したけれども,疲れ
切って亡くなった。だが,彼の影響力は生き残っった。即ち,彼の弟子の一人のファ
ロビクウ(Fallopius = Gabriele Falloppio ガブリエレ・ファロッピオ, 1523-1562
:イタリアの16世紀を代表する解剖学者で医師)は顕著な仕事をした。そうして,医
療専門職たちは,徐々に,肉体のなかにあるものを発見する方法は(外から眺めるだ
けでなく,実際に)人体の中に存在するものを視線を向けて見る(look and see)こと
だと確信するようになった。

Chapter 4: Eemonology and Medicine, n.17

Throughout the Middle Ages, as we have seen, the prevention and cure of 
disease were attempted by methods which were either superstitious or wholly
 arbitrary. Nothing more scientific was possible without anatomy and 
physiology, and these, in turn, were not possible without dissection, which
 the Church opposed. Vesalius, who first made anatomy scientific, succeeded
 in escaping official censure for a while because he was physician to the 
Emperor Charles V, who feared that his health might suffer if he were 
deprived of his favourite practitioner. During Charles V’s reign, a 
conference of theologians, being consulted about Vesalius, gave it as their
 opinion that dissection was not sacrilege. But Philip II, who was less of 
a valetudinarian, saw no reason to protect a suspect ; Vesalius could obtain
no more bodies for dissection. The Church believed that there is in the 
human body one indestructible bone, which is the nucleus of the resurrection
body ; Vesalius, on being questioned, confessed that he had never found such
 a bone. This was bad, but perhaps not bad enough. The medical disciples of
 Galen - who had become as great an obstacle to progress in medicine as 
Aristotle in physics - pursued Vesalius with relentless hostility, and at 
length found an opportunity to ruin him. While, with the consent of the 
relatives, he was examining the corpse of a Spanish grandee, the heart - or
 so his enemies said - was observed to show some signs of life under the 
knife. He was accused of murder, and denounced to the Inquisition. By the 
influence of the king, he was allowed to do penance by a pilgrimage to the
 Holy Land ; but on his way home he was shipwrecked, and although he reached
 land he died of exhaustion. But his influence survived ; one of his pupils,
 Fallopius, did distinguished work, and the medical profession gradually 
became convinced that the way to find out what there is in the human body 
is to look and see. 
 出典:Religon and Science, 1935, chapt. 4: 
 情報源:https://russell-j.com/beginner/RS1935_04-170.HTM

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発行周期: ほぼ 日刊 最新号:  2018/12/12 部数:  71部

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