バートランド・ラッセルの言葉366

n.1306 ラッセル『権力』第14章 競争 n.6


カテゴリー: 2018年02月03日
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 「ラッセルの英語」では,英語の学習に参考になりそうな例文をラッセルの著作
  からご紹介していますが,「ラッセルの言葉366」では,日本語にした時の'内容'
  に注目して,ラッセルの発言をご紹介していきます。
  読者と一緒に育てていきたいと思っていますので,誤訳や不適切な訳等がありま
  したら,お知らせいただければ幸いです。

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 ラッセル『権力』(Power, 1938) 第14章 競争 n.6
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 第14章 競争,n.6

 生産分野においては,多数の中小企業間(small firms 小企業)の競争は -それは
産業主義初期を特徴づけるものであったが- 最も重要な生産部門では,それぞれ少な
くとも一つの国家と同じだけの拡がりをもったトラスト(企業合同)の間での競争に
席を譲ってきた(注:全国規模の大企業間での競争)。国際的なトラスト(企業合同)
として重要なのは唯一,軍需産業であり,それは,ある企業への発注が別の企業への
発注の原因にもなるという点で,異例のものである。(即ち)ある国が武装すれば,
他の国も武装するのであり,従って,競争のための通常の動機は存在していない。こ
のような特別な場合は別として,ビジネス(実業)における競争はいまでも存在する
が,しかし,それは現在では国家間の競争に溶け込んでおり,この競争において,戦
争が成功か不成功かの究極の決定者である。従って,現代のビジネス(実業)の競争
の功罪は,国家間の対抗(競争)の功罪と同一である。
 けれども,今も昔と変わらずに熾烈な,もう一つ別の形の経済的競争,即ち(私が
言おうとしているのは)職を求めての競争(就職競争)が存在している。この競争は
奨学金取得のための試験から始まり,大部分の人々が働いている間中ずっと続く(引
退するまで続く)。この形の競争は緩和可能であるが,全面的に廃止することはでき
ない。全ての役者が同じ給料を受けとるとしても,人は第一の水夫(船乗り)の役(シェ
ークスピア劇『ハムレット-デンマークの王子の悲劇』の中の) the First Sailor)
よりはハムレットの役のほうをやりたいと思うであろう)。そこで守るべき条件が二
つある(注:みすず書房版の東宮訳では,「我々として観察しなければならないが条件
が2つ出て来る」と訳出されているが,to be observed の observe は「観察する」
ではなく、ここでは「守る」の意味)。第一の条件は,職(やポスト)を求めて失敗
した人も避けることのできる難儀で苦しむべきではない、ということであり,第二の
条件は,職(やポスト)を求めての成功は可能な限り,なんらかの本物の長所の報奨
であるべきであり,へつらい(sycophancy)や狡猾さの報奨であってはならない,と
いうことである。この第二の条件については,(これまで)それに値するよりもずっ
とわずかしか,社会主義者たちの注意を受けてこなかった。けれども,本題をそれる
恐れがあるので,この問題についてはこれ以上追求しないことにする。

Chapter 14: Competition, n.6

In the sphere of production, competition between a multitude of small firms,
 which characterized the early phase of industrialism, has given place, in 
the most important branches of production, to competition between trusts 
each coextensive with at least one State. There is only one important 
international trust, namely the armament industry, which is exceptional in
 that orders to one firm are a cause of orders to another: if one country 
arms, so do others, and therefore the usual motives for competition do not
 exist. Apart from this peculiar case, competition in business still exists,
 but it is now merged in the competition between nations, in which war is 
the ultimate arbiter of success. The good or evil of modern business c
ompetition, therefore, is the same as that of rivalry between States.

There is, however, another form of economic competition which is as fierce 
as it ever was, I mean the competition for jobs. This begins with 
scholarship examinations at school, and continues throughout most men's 
working lives. This form of competition can be mitigated, but cannot be 
wholly abolished. Even if all actors received the same salary, a man would
 rather act the part of Hamlet than that of the First Sailor. There are two
 conditions to be observed : first, that the unsuccessful should suffer no 
avoidable hardship ; secondly, that success should, as far as possible, be
 the reward of some genuine merit, and not of sycophancy or cunning. 
The second condition has received much less attention from Socialists than
 it deserves. I shall not, however, pursue this subject, as it would take 
us too far from our theme.
 出典: Power, 1938.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/POWER14_060.HTM

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■編集・発行:(松下彰良/まつした・あきよし) 
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