BOMB書店☆静かなる読書

BOMB書店☆静かなる読書 No.311

カテゴリー: 2019年03月24日
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            - 市川裕子劇場 - 
                                                    No.311
                                                                                                        
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市川裕子の詩や物語を紹介する「BOMB書店☆静かなる読書」です。
■発行者プロフィール ⇒ http://ichikawayuko.com/


こんにちは☆ 発行者の市川裕子です。

毎週日曜日に、市川裕子の描く、

様々な作品をお届けするメルマガです☆

私は、詩を中心とした創作活動をしていますので、

小説は、「詩的なものを物語化している」と思っていただけたら、

分かりやすいかと思います。

現在は、「オレンジとアップルと9cm王国」をお届けしています☆

オレンジとアップルという二人が、

屋敷を取り囲む塀を作り、部屋の壁に絵を描いたことから、

白いネコのキャロルが行方不明になるという事件が起こります。

そして、何かの異変により太陽が出なくなり、

暗闇の中をいろんな人物たちが彷徨います。

支配していた者たちが囚われ、

囚われていた者たちが逃げ出すなど、

それぞれが、それぞれの目的で動き回り、

そして、いろいろな出会いを経験していきます。

さて、太陽は、どうやって戻るのか?

キャロルは、記憶を取り戻すことができるのか?

オレンジとアップルは再会することができるのか?

現在、第五部を開始し、最終話に向かっております。

どうぞ、お楽しみくださいませ☆


☆前回のラストシーン☆

スダエルは、空を見上げる。
「高い位置へ。高い位置から見れば、何かが見えるはずだ」
その見上げた空に、一瞬、キラリと光るものが見えた。
高い高い空の上で、ピカリと光る星のようなもの。
スダエルは目を凝らす。

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【★】「オレンジとアップルと9cm王国」  第五部  
☆第十二章 白い鳥のサーと一番最初に作られたガラス鳥のシュウオンの使命☆ 
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暗い空に、ピカリと煌めく星のようなもの。

それは、白い羽と透明な羽を持つ二羽の鳥だった。

白い大きな鳥サーと
一番最初に作られたガラス鳥のシュウオンである。

二羽は、近付きすぎず、遠くなりすぎず、
ピタリと同じ位置を飛んでいく。

それは、一つの塊のような
一つの生命体のようでもあった。

彼らは、妙に先の尖ったポールをひたすら目指している。

時折、赤い火のような光が立ち昇り、
そのポールの姿が見えるが、すぐに消えて見えなくなってしまう。

「大体、あの辺りであるとは分かるのに、
なぜ、辿り着くことができないのだろう」
 
サーもシュウオンも不思議に思う。

眼下では、全てが静まり返っているように思える。

暗闇の世界に誰も呼吸していないかのように。

「もう少し、高度を下げてみよう」
と、どちらからともなく合図し合い、
二羽はゆっくりと下降していく。

その時だった。

眼下に、
地面と平行に、赤い線が走っている様子が見えた。

ぐるりと輪を描くように、赤い光の線が見えるのである。

「火?」

「燃えている?」

「…亀裂が入っているようにも見える…」

「…地平線が浮き出てくるみたいだ…」

「まさか…」
 
サーとシュウオンは、赤い線を目で追う。

遠い彼方に、
高速な赤い線がぐるぐると円を描くように走っている。

「塀?」
 
サーとシュウオンが顔を見合わせた時だった。

強い風の音と共に、
ヒャーヒャーというような薄気味悪い音が聞こえたのである。

「風? いや、違う」

「人の声? 笑い声か?」
 
二羽は、更に高度を下げる。

「笑い声…」
 
二羽は、辺りを見渡す。

どこからか笑い声が聞こえ、
どこからか怒鳴る声が聞こえ、
どこからか叫ぶ声が聞こえてくる。

「私は、支配者である! 
アー、ハッハッハ! オー、ホッホ! 
ウー、フッフッ、へー、ホッホ! 
ヒャー、ホッホ、フー!」

「私は、ジャック・ジョーカーだ!」

「この屋敷は、私のもの。我が名は、ジャック・ジョーカー!」
 
二羽は、耳を澄ます。

「誰の声だ?」

「一人は、ドクターJ・ジョーカー氏の声だ。他は?」
 
見知らぬ声が絡み合い、自己主張しながら、
お互いを罵るかのように聞こえてくる。

「それぞれ違う場所から聞こえてくる…」

「三人、バラバラな所にいるということか…」
 
サーとシュウオンは、再び、高度を上げた。

叫び声を上げている三人の位置を確かめようとしたためだった。

が、高く飛んでも、上からは何も見えなかった。

また、赤い火のような光が立ち昇る。

遠くに聳え立つ、妙に先の尖ったポールが一瞬見える。

そのポールとそれから、自分たちを含めて、全てを取り囲むように、
赤い線が地面に円を描くように走り続けている。

地面に地平線を描いていくように。

「やはり、塀なのだろうか?」

「だが、塀がそんなに広大な土地を囲っているわけではなかったはずだ」

「ということは、塀が広がっているということだろうか?」

「塀が広がるということは、一体?」

「成長しているのか?」

「生きているのか?」

「生き物?」
 
サーとシュウオンは、自問自答しているのか、
お互いが意見を言い合っているのか、
それぞれ呟いているだけなのか分からなくなってしまっていた。

「高く飛んでも全てが見えない…」

「低く飛んでも全てが見えない…」

「所詮、全てを見渡し、細部を見ることなど、できないというわけか…」
 
サーとシュウオンは、
遠くに霞んでいく妙に先の尖ったポールを眺め、
円を描く地平線のような赤い線を眺め、
三方向から聞こえる奇怪な叫び声を聞き続けた。

サーとシュウオンは、ふと思う。

「もしかしたら…
すでに、妙に先の尖ったポールに、
お婆さんはいないのかもしれない」
 
サーとシュウオンは、お互いの目を見た。

口には出さなかったが、お互い同じことを思ったことを悟った。

二羽は、妙に先の尖ったポールに置き去りにしてきた、
老婆アールを助けようとここまで来たのだったが、
老婆は、もうすでに、自分たちを必要としていないということに気付いたのだった。

「僕は、すぐに戻ってきますと言ったんだ。
でも、お婆さんは、そんな言葉なんか信じなかった。
きっとそうだ。
お婆さんに、僕は必要ないんだ。
僕には、僕のやるべきことがあるとお婆さんは言った。
使命…使命のようなもの。
その使命のようなものを僕は果たさなければならない。
でも、それは、何だろう? 
一番最初に作られたできそこないのようなガラス鳥に、
一体、どんな使命があるっていうんだろう? 
お婆さんの命より大切な使命なんて、あるのだろうか?」
 
シュウオンは、呟くように、だが、はっきりとサーに尋ねた。

「アールお婆さんは、僕にも言ったよ。
あんたには、使命があるってね。
思い出せなくても忘れられない使命がってね。
でも、記憶をなくした自分の使命って何だろう? 
ずっと自問自答しているよ。
本当の名前が見付かったら分かるかもしれないと思ったけれど、
サーエルという名が自分の名前かもしれないことが分かっても、
それでも、自分の使命なんて分からないよ。
妙に先の尖ったポールが見えても近付けないように、
赤い線がぐるりと輪を描いても、それが何なのか分からないように、
三人の声が聞こえても、どこにいるのか分からないし、
彼らをどうしてよいのか分からないというように、
自分は…僕は…さまよっている。
…でも、君が…
君と一緒にいるから…
それから、あの湖の所には、
ガラス鳥の仲間やメノーお爺さんや影作りのお姉さんたちがいるから…
僕は…僕は…探せると思う。
自分の使命というか、
生きていくための何かが、
見付かると思う」
 
サーは、シュウオンに答えながら、
自分にも答えているかのように口にした。

「探せる…見付かる…」
とシュウオンは呟く。

「太陽が昇れば、全てが見えると思う。
僕らは…
たぶん、太陽が昇る手助けをするのだと思う」
とサーは言う。

「太陽が昇る手助けを? どうやって?」

「分からない。
でも、自分は、声を聞いてきた。
どこからか聞こえてくる助けを求める声を。
その声が聞こえたら、自分は、そこへ飛んでいった。
ドクターJ・ジョーカー氏だって、助けたんだ。
でも、彼は、命はあるものの、今、がんじがらめになっている。
声は聞こえているけれど、
でも、あの声は助けを求めている声じゃない。
他の二人の叫び声もそうだ。
助けを求めている声じゃない。
お婆さんも…
アールお婆さんの声も聞こえない。
やはり、お婆さんも助けを求めていないと思う。
だとしたら?」

「サー。いや、サーエル。どちらの名前で呼んだらいいかな?」
とシュウオンが聞く。

「どちらでもいいよ。好きな方で」
とサーが答える。

「では、サー。
もしかしたら、だけど…
太陽が? 
太陽が、助けを求めている?」

「…」
 
サーは、嘴を一旦強く結んで、それから、そっと開いた。

「…求めていると思う。
今…彼は、産まれるんだ。
新しく。
…僕らは、それを手伝う。
お婆さんもそれを望んでいる。
太陽が昇れば、すべての位置が決まり、安定するんだ。
お婆さんは、
妙に先の尖ったポールから脱出して無事に自分の場所に戻ることができて、
僕らも、自分の使命とか目的が見付かるはずだ」




 


 




To be continued. 

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【★】編集後記
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「市川裕子の聖なる創作空間」

前回、お伝えした
「絵本はパンク」のセールで、
自分も購入してしまいました。笑。

「絵本はパンク」
https://suzuri.jp/ichikawayuko


いつも購入してくださる方が
また買いたいということで、
一緒買いしました。

その方は、
パソコン事情で、
自分で購入できないんですよー

そんなこともありますねぇ〜

皆さん、お忙しいので、
なかなか展示を観に来れない方には、
直接、手製本などなどお見せしたりもしています。
お買い物代行ももちろん、
こんなのが欲しいという
ご注文を受け付けたりも。

よくよく考えてみると、
観たい方に観ていただく、
欲しい方に手渡す、というのが一番なので、
それでいいのかな、と思っていて、
むしろ楽しんでいます。

というわけで、
もし、
これを観たい!
というご要望があれば、
ご一報を!
という企画を考えました♪

例えば〜

もしかしたら、
どこかWEB上に写真があるかもしれないけれど、
どこを探してよいか分からないので、
これを観たい! とか、

この展示の時の、この写真を観たい! とか、

何でもいいので、
何かありましたら、こちらまで↓
http://form1.fc2.com/form/?id=517387

お答えできる範囲で
お答えしたいと思います。

もしかしたら、
写真などを探す時間が必要な時もあるかもしれませんが。苦笑。

期限は、
一応、決めておくと考えやすいかもしれませんので、
ゴールデンウィーク終了までにしましょうか。
その期間に、
お問い合わせいただければ、
お答えできるものには、
お答えしたいと思います。

http://form1.fc2.com/form/?id=517387


そして〜

春のイベントは、
4月20日
HP「情熱シネマ」公開5周年記念
8ミリフィルムの上映会。

5月中旬には、
「HOUSE OF D」vol.30開催。

そして、もう一つ、
4月の展示イベントに参加する予定です。

詳細が決まり次第、
「流星ラビットパンチ」のブログで、
お知らせしていきます〜
http://ameblo.jp/rabittpunch/





それでは、また次回!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました♪


「オレンジとアップルと9cm王国」は、
2013年8月25日から第一部開始、
2014年7月20日〜2015年7月19日までが第二部。
2015年7月26日〜2016年10月16日までが第三部。
2016年10月23日〜2018年12月30日までが第四部。
2019年1月6日より第五部が始まりました。


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