F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-

【F.M.Letter No.163】

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.163◇
 2019年3月7日(木)[和暦 如月朔日]発行
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◆ F.M.豆知識  福島・双葉郡の人口推移
◆ O.カレント  谷 咲月(さつき)さん
◆ ほんのさわり 菅野正寿、原田直樹『農と土のある暮らしを次世代へ』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 和暦では今日から如月(きさらぎ)。梅や桃が咲き、草木や虫たちが活動し始める「気」が更に来る月を迎えました。
 和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している拙メルマガ、今号では福島・浜通りの現状と将来について考えてみました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/mame/

-福島・双葉郡の人口推移-

 間もなく東日本大震災から丸8年、この間、日本や被災地の人口はどのように推移しているでしょうか。
 リンク先の図115は、住民基本台帳に基づく人口の推移をみたものです(2010年3月=100)。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2019/03/116_jinkou.pdf

 これによると、日本全体の人口(日本人)は2018年には1.5%減少しているなかで、東京都は4%増加しています。同じ大都市圏でも、愛知県は1.1%増にとどまり、大阪府は0.6%減少していることと比べても、東京都の人口増は顕著です。

 一方、東日本大震災で大きく被災した3県についてみると、宮城県は1.6%減と、日本平均とほぼ同様の減少率となっていますが、岩手県は6.5%減、福島県は7.1%減と、大きく減少しています。

 さらに、福島県のなかでも原発事故の影響を直接蒙った双葉郡についてみると、実に14%も減少しているのです。避難指示は、順次、解除されてきているものの、双葉郡では、現在も人口減少に歯留めがかかっていません。
 これまで避難生活を強いられつつも住民票は以前の町村から移していなかった方の中にも、転出される(住民票を移す)方が増えている状況が伺えるのです。

[資料]
 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」
 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/jinkou_jinkoudoutai-setaisuu.html

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/pr/

-谷 咲月(さつき)さん-

 谷さんは静岡県の出身。東京で会社員をしていた2011年4月、目にした悲惨なニュースに大きな衝撃を受けました。原発事故により立入りが禁止された区域内で、置き去りにされた馬や牛が次々に餓死している様子が報じられていたのです。

 何とか助けたいと思った谷さんは、情報を収集し発信する活動を始めたところ、現地の方から「助けに来て欲しい」という要請が来たのです。谷さんは、東京から福島・浜通りに足を運びました。
 一時立入りの許可を得て警戒区域内に入った谷さんは、馬やポニーは救出された一方、牛の多くは牛舎につながれたまま死亡するなか、自力で山に逃げて生き延びている牛がいることを知りました。

 しかし、立入禁止区域内に十分な飼料を継続的に届けることは困難です。
 一方、区域内には多くの農地もあります。農家の方たちは、先祖代々守り抜いてきた田畑を自分の代で荒らしてしまうことに、大きな罪悪感を持っていました。

 そこで谷さんは、地元の方やボランティアとともに、大熊町内の耕作できなくなった農地を柵で囲み、生き残った牛を集めて放牧する「もーもーガーデン」をスタートさせたのです。
 ちなみに「もーもー」には、「もー(牛)が“Mow”する(草を刈る)」という意味があるそうです。

 放射能に汚染された牛たちは、肉として出荷することはできません。その代わりに、谷さんは牛たちに「除草」という役割を託しました。
 働き者の牛たち(谷さんは愛情を込めて「もーもーイレブン」と呼んでいます)は、田畑に生えた雑草や灌木を食べ、踏み慣らすことで、農地を保全するだけではなく、環境や景観を守り、害虫を防除し野生鳥獣害を抑制するとともに、火災(野火)や犯罪等の予防にもつながるなど、大きな役割を果たしています。

 谷さんが2012年に設立した(一社)ふるさとと心を守る友の会は、本年2月、第5回「日本復興の光大賞」(NPO日本トルコ文化交流会)を受賞しました。1890年に和歌山県沖でトルコ軍艦が遭難した時に地元住民が人命救助に奔走したことを記念して創設された賞です。
 また、もーもーガーデンでは、寄付金やオーナーの募集のほか、クラウドファンディングの取組みも始められました。

 「何をするにも日本一大変な土地だからこそ培われてきたノウハウで、全国で活用できる牛たちによるエコ除草・資源循環・環境保全のモデルを築いていきたい」と語る谷さんの活動を、私も応援していきたいと思います。

[参考]
 もーもーガーデン
 https://moomowgarden.or.jp/
 (一般社団法人)ふるさとと心を守る友の会
 https://www.facebook.com/friends.fumane/
 クラウドファンディングのページ
 https://readyfor.jp/projects/moomowgarden

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (過去の記事はこちらにも掲載)
 http://food-mileage.jp/category/br/

-菅野正寿、原田直樹『農と土のある暮らしを次世代へ』 (2018.7、コモンズ) -
 http://www.commonsonline.co.jp/books/books2018/201807no_to_tuchi_noaru_kurashi.html

 編著者は、福島県有機農業ネットワークの前代表である二本松市東和地区の農家と、日本有機農業学会理事を務める新潟大学教授の2人。
 2011年3月、春の作付けに向けて準備をしていた福島の農家は、未曾有の原発事故による放射能汚染に見舞われ、これまで経験のなかった不安と混乱の中に叩き込まれました。
 県内には前途を悲観して自ら命を絶つ方さえおられました。

 このようななか、二本松市東和地区の農家の方達は話し合いを重ね、土を耕し、種を播き、作物を育てる決断をします。
 当時、原子力等の研究者のなかには、より広い地域の住民の避難を主張したり、あるいは被災地における営農継続は汚染の拡大につながると否定したりする論調もありました。

 しかし、新潟大学農学部の野中昌法教授(当時。2017年に逝去)を始めとする農学者のグループは、明確に立場を異にしました。
 まずは現地に赴き、苦悩し模索している農家と伴走することを選んだのです。

 野中先生たちが重視されたのは、農家の主体的な取組みのサポートに徹すること、「測定」を起点とすること、地元の安心感を作ることを優先すること、生産者・消費者・流通・研究者が一体となって理解を深める機会を設けること等でした。

 まずは圃場ごとに綿密な測定を行ってデータを収集し、放射性物質による汚染の実態を明らかにしました。
 その過程で、良質堆肥をしっかりと施用し豊かな土地を育てていくという有機農業(本来の農業)は、放射性物質を土壌中に固定し、作物への移行を抑制するというメカニズムも解明されたのです。

 原発事故から8年が経過した現在、山菜など一部を除いて基準を超過する品目はありません。
 このように福島の農業の復興と再生が実現した背景には、農家の方たちの自主的な取組みと、現地に入って農家とともに歩んだ農学者たちのグループの「協働」があったのです。

 なお、本書の主な舞台(阿武隈山地)は典型的な中山間地域で、零細で自給的な農業が中心で、規模拡大による効率的な農業の実現は困難な地域です。
 本書には、今後の日本農業のあり方を考える上でも、多くの示唆が含まれています。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
(今回はたくさん書きました 汗)
○ シンポジウム「関東にFEC自給圏を」[2/20]
 http://food-mileage.jp/2019/02/20/blog-177/

○ 問いの思考塾(対話塾・実践編)[2/21]
 http://food-mileage.jp/2019/02/21/blog-178/

○ ふくしま有機ネット交流サロン in 東京[2/23]
 http://food-mileage.jp/2019/02/23/blog-179/

○【報告】空が青いからお寿司を巻くんです[2/24]
 http://food-mileage.jp/2019/02/24/blog-180/

○ ローカル線で地域を元気に @なみへい[2/28]
 http://food-mileage.jp/2019/02/28/blog-181/

○ 森の食卓 早春のんびりbar-アフリカンナイト-[3/2]
 http://food-mileage.jp/2019/03/02/blog-182/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ おいしいローカル線の日 Vol.0
 日時:3月15日(金)18:30~21:00
 場所:なみへい-全国うまいもの交流サロン(東京・神田)
 主催:なみへい-全国うまいもの交流サロン
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/1494480507352164/

○ 鍬で畑うない、竹籠で山の落ち葉掃き
 日時:3月17日(日)9:00~16:00
 場所:山梨・上野原市西原地区
 主催:しごと塾さいはら
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/308169533228238/

○ 第2回 風町読書会<キャンセル待ち>
 日時:3月17日(日)14:00~16:30
 場所:BEARS TABLE(東京・台東区雷門2)
 主催:風町読書会
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/406515589910655/

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*舞麗児忽々の今号のコツコツ小咄
「首脳会談って、お互いに計算し尽くしているんだろうね。加減乗除と」
「特に重要なのは「乗」と「減」だって。駆け(×)引き(-)だけに」

コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
 http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号 No.164は3月21日(木)[和暦 如月十五日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
  https://archives.mag2.com/0001579997/
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  http://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
  http://food-mileage.jp/category/blog/
 発行システム:『まぐまぐ!』 
  http://www.mag2.com/

F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-

発行周期: 月2回(和暦の1、15日:新月とほぼ満月の日)に発行します。 最新号:  2019/03/21 部数:  137部

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発行周期:  月2回(和暦の1、15日:新月とほぼ満月の日)に発行します。 最新号:  2019/03/21 部数:  137部

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