F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-

【F.M.Letter No.159】

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.159◇
 2019年1月6日(日)[和暦 師走朔日]発行
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◆ F.M.豆知識  平成の食料・農業
◆ O.カレント  お節料理と和食
◆ ほんのさわり 小谷敏『怠ける権利!』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
 和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している拙メルマガ、今号は師走朔日の配信です(和暦ではまだ年は明けていません)。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータを今年もコツコツと紹介していきます。
 (これまでのコンテンツはこちらにも掲載)
  http://food-mileage.jp/category/mame/

-平成の食料・農業-

 5月1日で改元が予定されている本年のスタートに当たり、平成の時代の食料や農業の推移を振り返ってみます。
 リンク先のグラフ112は、平成時代約30年間の食料や農業に関する主な指標の推移を表したものです。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2019/01/112_heisei.pdf

 平成元年(1989)から平成29年(2017)にかけて、耕地面積約16%減少しました。
 また、販売農家は約4割の水準にまで減少、農林漁業就業者は半減しています。また、農業労働力の高齢化率(基幹的農業従事者に占める65歳以上の者の割合)は、平成2年(1990)の27%から平成27年(2015)には65%へと大きく上昇しました。

 また、食料自給率は、カロリー(供給熱量)ベースでは平成元年(1989)の49%から29年(2017)の38%へ、生産額ベースでは同期間に77%から65%へと、いずれも10ポイントほど低下しています。

 このように平成の期間は、農業生産力を支える土地や労働力の脆弱化、食料自給率の低下という昭和時代からの傾向が継続した時代と捉えることができますが、その一方で、49歳以下の新規就農者が平成25年(2013)を底に増加し、また、減少傾向で推移してきた農業所得が最近は増加に転じる等の新しい動きも見られます。

 ポスト平成の新しい時代の食料や農業がどのように推移していくことになるのか、それは私たち消費者を含めた一人ひとりの選択次第です。

[出典]
 農林水産省ホームページ「統計情報のページ」
  http://www.maff.go.jp/j/tokei/index.html
  総務省「労働力調査」
  https://www.stat.go.jp/data/roudou/index.html

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
 (これまでのコンテンツはこちらにも掲載)
  http://food-mileage.jp/category/pr/

-お節料理-
 「おせち」とは、もともとは宮中で季節の節目である節会(せちえ)に神様に供える料理のことでした。
 節会は奈良時代から行われており、元旦のほか、正月七日の白馬(あおうま)節会、正月十六日の踏歌(とうか)節会、五月五日の端午節会、七月七日の七夕節会、九月九日の重陽節会とありました。
 江戸中期以降は次第に正月が一番盛大に祝われるようになったことから、一般に「お節」と言うと正月の祝膳を指すようになったのです。

 近年は、洋風や中華風の料理が増えていたり、家庭では作らずインターネット等の通販で取り寄せたりしていることについて、日本の伝統が失われるといった批判も散見されます。

 しかし、お節(さらには和食、日本食)については、歴史的にみて最初から定まった型がある訳ではなく、その内容や概念は時代によって大きく変化しているのです。
 もともとは正月料理の主役である雑煮に添えらていたお節は、元禄以降は重箱に詰められるようになりましたが、当時は田畑の肥料として使われる安価な数の子や田作りを中心としたものでした。
 幕末から明治になると海老、塩引鮭、かまぼこ、鳥肉、卵等が用いられるようになり、昭和初期にはハムやローストビーフも加えられ、百貨店でも販売されるようにもなりました。

 伝承料理研究家・奥村彪生(あやお)によると、和食の中核である米や茶の栽培技術、味噌や豆腐の製造技術は中国から導入されたものであり(そもそも「料理」という言葉自体も中国語)、さらに近世は欧米の食文化も私達は柔軟に受け入れてきました。
 つまり和食(日本食)とは、中国を始めとする外来食文化を選択、受容、模倣しながら、日本の気候風土と日本人の気質や嗜好(勤勉、おだやか、繊細、工夫好き等)に合致するように「改創」されたものなのです。
 奥村は「基本的な『型』は守りつつも、時代性を加味し、新しく創造し育てていくことが、これからの和食(日本食)には必要」としています。

 お重に詰められた様々な料理は、多様な異文化を受容する日本人の柔軟さを象徴しているのかも知れません。

[参考]奥村彪生『日本料理とは何か』(2016.4、農山漁村文化協会)
  http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54014255/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。
 (これまでのコンテンツはこちらにも掲載)
  http://food-mileage.jp/category/br/

-小谷敏『怠ける権利!』(2018.7、高文研)-
 http://www.koubunken.co.jp/book/b371637.html

 1956年鳥取市生まれの大妻女子大・人間関係学部教授(現代文化論)による「怠惰」の勧めの本です。

 ポール・ラファルグ(フランスの社会学者)は、1880年に発表した論文で「1日3時間以上働くべきではない」と主張しました。過剰な労働は民衆の健康状態を損なうだけではなく、それがもたらす過剰生産が帝国主義の対立を強めると考えたためです。
 バートランド・ラッセル(イギリスの数学者、哲学者)は『怠惰への賛歌』と題するエッセイ(1935)のなかで、「人間の勤勉の産物の多くは戦争とその準備のために費やされている」としています。

 ジョン・メイナード・ケインズ(イギリスの経済学者)は1930年に行った講演の中で、「100年後に生きる孫たちは1日3時間も働けば生活の必要を満たすことができる」と予言しましたが、これが外れたのは、人間は「足るを知る」存在ではなく、他者に優越したい(見下されたくない)という「嫉妬や羨望」に支配されているためと著者は分析しています。

 著者は、日本人の労働時間が依然として長く過労死が増加しているのは、高度経済成長期における成功体験の呪縛から逃れられていないためであるとし、「勤勉は死に至る病」と断じています。

 一方、著者と同郷の漫画家・水木しげるは、「なまけ者になりなさい」という言葉(「幸福になるための七箇条」の第6条)を遺しています。また、ソーステン・ヴェブレン(アメリカの経済学者、社会学者)は、人間の知的活動はプラグマティズム(卑俗な実用主義)の対極にある「怠惰な好奇心」に突き動かされるものであると主張しています。

 著者は、水木の「なまけ者になりなさい」という言葉は、ヴェブレンの言う「怠惰な好奇心」の赴くままに生きよという意味と同じであるとしています。
 つまり、「成功や勝ち負けにこだわるのではなく、自分のやりたいことに忠実であれ」とという、卑俗なプラグマティズムの支配に窒息しかかっている日本人への叱咤激励の言葉でもあるのです。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 霞ヶ関ばたけ × かがり火 合同感謝祭[12/24]
 http://food-mileage.jp/2018/12/24/blog-167/

○ 平成最後の「顔の見える」忘年会[12/30]
 http://food-mileage.jp/2018/12/30/blog-168/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 逢坂泰精 Debut 20th Anniversary Live「多謝」
 日時:1月13日(日)13:00~
 場所:サラヴァ東京(東京・渋谷区松涛1)
 主催:逢坂泰精さん
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://ameblo.jp/yasukiyokun/entry-12425992732.html

○ 銀座農業コミュニティー塾 第7回勉強会
 日時:1月16日(水)19:00~21:00
 場所:中央区立環境情報センター(東京・中央区京橋3)
 主催:銀座農業コミュニティー塾
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://www.facebook.com/events/876254399230455/

○ しごと塾さいはらプロジェクト
  堆肥づくりのための落ち葉掃き&麦踏み&門男づくり
 日時:1月14日(月・祝)8:26 JR中央線上野原駅集合
 場所:山梨・上野原市西原地区
 主催:しごと塾さいはら
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://shigotojyuku-saihara.jimdo.com/

○ ばばらいぶ第4次関東遠征
 日時:1月19日(土)12:30~13:50/17:00~18:00
 場所:新宿御苑前パペラ/横浜青葉台りんごライフ
 主催:ばばらあやかさん
 (詳細、お問合せ先等↓)
 https://ameblo.jp/tomatthy/entry-12425287666.html

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*今号のコツコツ小咄
 あけコツ。「ホッピー・ニューイヤー!」
 (新年会は串カツ屋さんでホッピーを頂きました。)

 コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
  http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号 No.160は、1月20日(日)[和暦 師走十五日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信等に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
  https://archives.mag2.com/0001579997/
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  http://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
  http://food-mileage.jp/category/blog/
 発行システム:『まぐまぐ!』 
  http://www.mag2.com/


F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-

発行周期: 月2回(和暦の1、15日:新月とほぼ満月の日)に発行します。 最新号:  2019/01/06 部数:  138部

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