週刊「日本語教育」批評

週刊「日本語教育」批評 ─第62号─


カテゴリー: 2013年10月09日
[2013-10-9]
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 週刊「日本語教育」批評 ─第62号─(大河への批評)

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┏┏┏┏ 今号の目次
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◆編集部よりお知らせ◆----------------------------------------------

◆批評空間F◆------------------------------------------------------
 日本語教育の危機と危機感の共有(5)
                              古屋憲章
◆批評空間S◆------------------------------------------------------
 休載
                              佐藤貴仁
◆ 寄 稿 ◆------------------------------------------------------
 インドネシアで猛省
                        堀次麻里子・平澤栄子
◆SF活動状況◆----------------------------------------------------
 更新なし
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☆☆ 編集部よりお知らせ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

【「批評空間S」「批評空間F」「寄稿」「往復書簡」のタイトル】
 メルマガも号(業?笑)を重ね、
自分でも何を書いたか忘れてしまうため、自身の備忘の意味もあり、
これまでの
「批評空間S」「批評空間F」「寄稿」「往復書簡」のタイトルを
掲示板にまとめてみました。
 http://nkhihyo.bbs.fc2.com/
ふと過去の記事が読みたくなった際に
(そんな人はいるのだろうか 笑)、ご活用ください。
今後も、折に触れ、更新していければと思います。

【注目の問題提起】
 佐藤さんによるエッセイです。
「日本語教育の罪深さ」に関し、考えさせられる内容となっています。

 佐藤貴仁
 「ある台湾日本語世代の牧師の記憶」
 http://p.tl/Z9jb
 台湾情報誌『交流』2月号(第863号),pp.21-29
 http://p.tl/Xi0P

 「現在を生きるかつての「日本人」―台湾日本語世代の今―」
 http://p.tl/rWnE
 台湾情報誌『交流』5月号(第866号),pp.30-35
 http://p.tl/XcJd

 ※「日本語教育の罪深さ」(本誌第35号 2013/04/03)
   http://archive.mag2.com/0001573661/20130403211131000.html
  「日本語教育の罪深さ(付記)」(本誌第36号 2013/04/10)
   http://archive.mag2.com/0001573661/20130410222214000.html
  もご参照ください。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

## 批評空間F ####################################################

 日本語教育の危機と危機感の共有(5)
                                                  古屋憲章
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(前号からの続き)
 先日、私がこれまでに
「日本語教育の危機と危機感の共有」に書いた内容に関し、
読者の方から次のようなご意見をいただいた。

> 「学問の英語化」と「学習の自律化」について
>
> 留学生を対象とした「日本語教育」に関して言えばそうですが、
> 今後は移民政策の一環として、日本語教育が考えられると思います。
>
> また「学習の自律化」については
> インターネット環境が整備されていれば
> 確かにその通りですが、
> 語学教育は異文化交流、異文化理解が不可欠であり、
> 人と人との直接的な交流も欠かせません。
> 上に延べたように外国籍住民が日本人のコミュニティに溶け込む過程で、
> 人と人との交流は重要で、
> そこで日本語教師が活躍する場はあると思います。
>
> 以上の理由で私としては、
> 日本語教育の将来をこの二つの点に収斂させて
> 悲観するべきではないと考えます。
>
> 安倍首相のASEAN重視の姿勢は今後具体的な政策となってくると思われ
> 日本文化を発信するための方策の一つとして日本語教育を挙げています。
>
> 官僚に期待することは難しくとも現場から日本語教育はこうあるべきだと
> 発信することは大切かと思います。

 実は、私はどなたかから上記のような指摘があるのではないかと
何となく予想(期待?)していた。
(妙な言い方かもしれないが)
予想通り、ご指摘をいただいたことをうれしく思っている。
今回は、上記のご指摘に対し、誌面上にてお応えする。

 確かに私が書いた「学問の英語化」に伴う日本語教育不要論は、
留学生に対する予備教育としての日本語教育に限定される話である。

 私は、現状、
曲がりなりにも職業として日本語教育の携わっている方には、
予備教育としての日本語教育に携わっている方が多いであろう
という想定のもとに、当該の記事を書いた。
(私自身がこれまで主に
予備教育としての日本語教育の現場に携わってきたことも、
今回のような書き方をした一因となっている。)
また、日本語教育が予備教育であることが当然の前提となっている点に
一石を投じたいという意図もあった。

 しかし、移民政策の一環としての日本語教育を
視野に入れていなかったわけではない。

移民政策の一環としての日本語教育は、
ドイツやオランダで実施されている
移民を対象とするドイツ語/オランダ語授業のようなイメージであろう。

・文化庁月報 平成23年8月号(No.515)
 海外における移民に対する言語教育
 http://www.bunka.go.jp/publish/bunkachou_geppou/2011_08/special/special_04.html

また、国内の事例で言えば、
中国帰国者定着促進センターで行われている日本語教育に近い
イメージかもしれない。

・中国帰国者定着促進センター 事業案内
 http://www.kikokusha-center.or.jp/kikokusha/tokorozawa/tokocen_f.htm

 確かに日本語教師の身分の安定という面から考えても、
移民政策の一環としての日本語教育は、議論すべき策であろう。
だが、私はこれまで次の二つの懸念により、
移民政策の一環としての日本語教育に関し議論することを躊躇してきた。

・私自身が信念を持って、
 移民政策の転換を支持し、その実現に向け、行動できるかどうか。
 (そのように思うのは、
 移民政策の転換が国民的な合意を得られるかどうかに関する見通しが
 自分の中で立っていないからである。)

・仮に移民政策の一環としての日本語教育が実現した場合、
 それをきっかけに日本語教育の内容・方法等が
 徐々に国家に統制されるのではないか。
 (直接的に統制されないまでも、
 例えば、政府による日本語教師資格/採用試験等をとおし、
 間接的に統制されていくのではないか。)

 けれども、今回のご指摘を受け、
移民政策の一環としての日本語教育に関し、
思考し、議論することは、避けて通れないと考えるようになった。

 私は「日本語教育の危機と危機感の共有」を書き始めた際、
twitter(@NKhihyo)にて次のように発言した。

--------------------------------------------------------------------
  最近、日本語教育の危機、
 あるいは閉塞感がいろいろなところで話題になります。
 それらを受け、「日本語教育の危機と危機感の共有」に関し、
 思うところを書いてみることにしました。

  また手に余るテーマを選んでしまったとも思いますが、
 客観的な事象を描くというよりも、
 自身の実感を綴ってみるつもりです。
 確かに「今担当している授業をどうするか」
 「目の前の学生とどのように接するか」を考えることも、
 必要で大切なことです。
 が、一方で私たちが携わっている日本語教育という営みが
 全体として今どのような状況に置かれているか、
 そして、それを踏まえ、
 今後、どのような方向に進んでいくかを考えることもまた、
 必要で大切なことではないかと思います。

  私たちは、他者からの要請、
 つまり、ニーズに応えることにあまりに慣れすぎていて、
 自分たちがどうするかを自分たちで考えることに
 慣れていないのかもしれません。
 ニーズに応えることを専らにする営みは、
 ニーズがなくなった時点で消滅します。
 それでいいという考え方もあるかもしれません。
 しかし、私は当事者として、
 自分たちの日本語教育という営みをどうしていくかを
 考えてみるつもりです。
 もちろん、これは私だけで考えることでもありません。
 当事者である人が皆で考えていくべきテーマです。
 皆で考えるためのささやかな問題提起ができればと思います。
--------------------------------------------------------------------

 上記の発言からもわかるように、
私は、日本語教育という営みのあり方に関し、
当事者として主体的に考えたいと思っている。
日本語教育という営みが社会的な営みである以上、
「当事者として、自分たちの日本語教育という営みをどうしていくか」
を考えることは、
不可避に「私はどのような社会を志向するか」を考えることにつながる。
そして、移民政策の一環としての日本語教育は、
正に「どのような日本社会を志向するか」と
ダイレクトにつながる問題である。
ゆえに、私にとっては避けて通れない問題となる。

 移民政策の一環としての日本語教育は、
おそらく、様々な利害や価値観の対立を内包する、
きれいごとではすまない問題である。
しかし、当事者として主体的に考えるということは、
そういった混沌の中に身を投じるということと同義であろう。
(続く)

                             古屋憲章

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## 批評空間S ####################################################

 しばらく、お休みです。
                                                  
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##  寄 稿  ####################################################

 インドネシアで猛省
                            堀次麻里子
                            平澤栄子
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 以前に投稿した海外実践プログラムについて、再び投稿します。

・平澤栄子「日本語を学ぶという希望」『週刊「日本語教育」批評』59号
 http://archive.mag2.com/0001573661/20130919012306000.html

 今回の派遣は、
「早稲田SENDプログラム」事業の一環として行われたもので、
早稲田大学の学部生と大学院生が
ASEAN諸国の協定大学で行われる日本語教育海外実習に参加し、
協働で活動するというものです。

・「早稲田SENDプログラム」
 Webサイト:http://send-waseda.jp/
 facebokkページ:https://www.facebook.com/waseda.send

インドネシアには、日本語教育にまみれた院生である私(平澤)のほかに、
大学院生1名、日本語教育を専門としない学部生9名が同行し、
いっしょに活動をしました。
今回はそのなかから、日本語教育経験者であった堀次麻里子さんに、
この活動通して感じたことを書いてもらいました。
今回の実践では「日本語を教えよう」という企画を提案し、
第2外国語を学ぶ意義や理想の語学教師について、
現地の学生といっしょにじっくり話をする時間を持ちました
(約90分×2)。
この企画は最終的に日本語を教えるのではなく、
現地の学生が、私たち早稲田の学生に、
日本語を媒介語としてインドネシア語を教えるという活動に発展しました。
堀次さんはこの企画に参加しています。
また、教壇実習として、自分達で考えたプランで、
実際に授業を担当する機会もいただきました。

--------------------------------------------------------------------

 9月1日から17日まで、大学の講義「海外実習」で、
インドネシアのバンドンにあるパジャジャラン大学を訪れました。
私は、昨年大学を半期休学して、
ネパールでの日本語教育ボランティアに参加しました。
ですが、自身の未熟さゆえに、
納得のいく結果がだせないまま帰国しました。
そして、「もう1度リベンジしたい」という気持ちで、
この実習に参加したのです。
そして、本実習のおかげで、私に足りなかったものは
「自分と向き合う姿勢」だったのだと気付きました。

 インドネシアでは、大学進学や海外留学が、
日本ほど当たり前ではありません。
ですが、日本語学科の学生たちは、
「日本に行くためには」「卒業するためには」何をすべきなのか
とてもよく考えています。
日本語を勉強する明確な理由をもち、将来設計もきちんとしています。
日本語教育の経験がほとんどない私たちに真摯に接してくれ、
私たちが持ち込んだ準備が十分とは言えなかった企画や実習にも
全力で協力してくれました。
大学進学や卒業後に就職することを当たり前だと考えていた私は、
彼らのこの姿勢に強い刺激を受けました。
「大学生になってから、彼らと同じような姿勢で、
何かを学んだり、何かに挑戦しただろうか」
と自分を振り返ることから始まり、
「就職先が決まって良かった。卒業までたくさん遊ぼう」
という気持ちでいた自分に恥ずかしささえ覚えました。

 ネパールで日本語教師をしていた時は
うまくいかない状況にいらだつばかりで、
自分が悪いとわかっていながらも、環境のせいにしようとしていました。
教科書やノートがないこと、定期的に授業を行えないこと、
言葉が通じないこと・・・
何もかも、これまで私が経験したことのない環境の中での活動でした。
ですが、インドネシアで
日本とは異なる授業スタイルや学生の姿勢を知ってからは、
「環境のせいで教育がうまくいかない
と思っていたのは自分の逃げだった」と痛感し、非常に反省しています。
教育に正解はなく、環境にあわせてベストをつくすことが
教師のすべきことなのかもしれません。

 ネパールの失敗から約1年、
ようやく自分の非をきちんと認め、反省することができました。
この点からも、私が日頃どれほど自分と向き合うことを避けてきたが
伝わると思います。
この失敗を二度としないためにも、
「今現在の自分には何が足りないのか」
「これからどのように日本語教育と接したいのか」を考えたうえで、
残り半年間の大学生活を送りたいです。
日本語を教えに行くという気持ちで臨んだ実習でしたが、
根本的な私の考え方に刺激を与えるほど
大きなことを教えられた実習となりました。

                            堀次麻里子
          (早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科 5年)

--------------------------------------------------------------------

 今回の企画では、
「教える」というよりもお互いに学び合う活動が中心となりました。
それは、日本語教育に染まっていない学部生たちが、
現地の学生と同じ目線で交流をする様子を見て、
「教える」「教えられる」の力関係を作りたくないと感じたからです。
彼女の「猛省」はこの学生同士のやりとりの経験から生まれたものです。
今後、彼女は日本語教育とは別の道に進みます。
しかし、どこかで日本語教育に携わりたいとも言っています。
彼女たちのような様々な立場の人が、
いろいろな形で日本語教育に関わっていったら、
もっと日本語教育も変わってくるのはないかと思っています。

                             平澤栄子
            (早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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◆◆ SF活動状況 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

━【佐藤】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎これまでの活動
 http://gsjal.jp/kawakami/doctoral12.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━【古屋】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎これまでの活動
 http://gsjal.jp/tateoka/furuya.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

■■ ご意見・投稿お待ちしています ■■■■■■■■■■■■■■■■
 みなさまのご意見・ご感想をお寄せください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 記事に対するご意見・ご感想、
ご自身の「日本語教育」に関する活動の報告、
「日本語教育」に関わる諸事象の批評等々、
「日本語教育」に少しでも関わる内容であれば、
何でも掲載いたします。

 私たちは、本メルマガが「日本語教育」をめぐる
多様な議論が展開される場となることを目論んでおります。
投稿いただけるかたは、下記のメールアドレスまで原稿をお送りください。

 nihongokyoikuhihyo1208@gmail.com

 よろしくお願いいたします。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編┃集┃後┃記┃
━┛━┛━┛━┛

 今回の「批評空間F」では、
読者の方からのご意見にお応えすることをとおし、
私が日本語教育に関し、思考し、議論する際の基本的な立場を
あらためて表明させていただきました。

 今回のようなご指摘は、我々にとって本当にありがたいです。
ご指摘をいただき、議論をしてこそ、
毎週、拙文を公開する意味もあろうかと思います。

 また、今号に掲載した堀次さん、平澤さんのエッセイは、
我々も含め「日本語教育にまみれた」方々にとって、
新鮮、かつ貴重な気づきの得られる内容ではないかと思います。

 ご意見、ご寄稿とも、引き続き、よろしくお願いします。

 以下、募集のお知らせです。
【エッセイ募集】
ご自身が日本語教育(また広くことばの教育)に携わるに至った経緯を
メルマガに書いてみませんか。
自分ではありふれていると思う経験も、
受け手にとっては、独特で、それ故何らか感ずるところがあるものです。
短くても長くてもかまいません。
ご興味がおありの方は、ご連絡ください。

                             古屋憲章

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・誌 名:週刊「日本語教育」批評 第62号
・発行日:2013年10月9日
・発行所:週刊「日本語教育」批評 編集部
 Twitter 
  https://twitter.com/NKhihyo
 掲示板
 http://nkhihyo.bbs.fc2.com/
  Webサイト
 https://sites.google.com/site/nihongokyoikuhihyo/
 連絡先
 nihongokyoikuhihyo1208@gmail.com
・編集者:古屋憲章
・発行責任者:古屋憲章、佐藤貴仁
・配信システム:まぐまぐ
 http://www.mag2.com/
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0001573661.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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