立命館大学生存学研究センター メールマガジン

「生存学」創成拠点メールマガジン第20号

カテゴリー: 2011年11月23日
◆立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点メールマガジン
2011年11月23日発行  第20号[通巻31号]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◇立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点ウェブサイト
http://www.arsvi.com/

◇立命館大学生存学研究センター
http://www.ritsumei-arsvi.org/

■生きて在るを学ぶ───────────────────────────

立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点メールマガジン
第20号です。

このメールマガジンでは、当拠点に関する様々な情報を定期的にお送り
していきます。

□目次──────────────────────────────────

1 「生存学」創成拠点事業推進担当者より(16) 松田亮三 
2 第8回京都学生人間力大賞で特別賞受賞  小辻寿規
3 拠点関連の書籍
4 開催報告「第2回障害学国際研究セミナー」
5 開催報告「ワイズマンと出会う」
6 開催報告 山本眞理氏公開インタビュー「『精神病』者集団、差別に抗す
    る現代史」
7 拠点関連イベント・研究会
8 編集後記

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】「生存学」創成拠点事業推進担当者より(16) 松田亮三
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

グローバルCOEプログラム「生存学」創成拠点では、事業推進担当者として教
員計17人が活動しています。今回は本学産業社会学部教授、松田亮三のメッ
セージを掲載します。

医療制度の比較研究をしていても、生活者として他国の医療制度と触れる機
会はあまりない。2007年から2008年にかけてのロンドン滞在では、図らずも
そういう機会に「恵まれて」しまった。

イギリスの公的医療は税金による公共サービスとして、利用時の負担は患者
に課せられない。ありがたいことに客員研究員として1年間滞在した筆者とそ
の家族にも、医療サービスを無料で利用する資格が与えられた。

無料というのは文字通り無料である。筆者が神経痛で診療所にかかった時も、
息子が骨折で病院に運び込まれた時も、まったく支払いはなかった。それどこ
ろか、病院には、少なくとも目立つところに会計などなかったのである。利用
時の患者負担がないということは、請求業務がないことでもあった。もっと
も、薬局で処方薬を受け取る時には若干の定額負担があったが、さほど高いも
のではなかった。

無料で医療を受けられるのは、もちろん結構なことであり、当時物価と為替の
両面でロンドンの生活費に悩まされていた私にすれば、費用負担を心配しない
で受診できることはありがたかった。けれども、診察後何も支払わず病院や診
療所を離れる時には、どうも落ち着かない気持ちになった。

日本では医療機関を利用したらその場でいくらかの金銭を支払わねばならず、
時にそれは外来診療といえどもかなりの金額となることがある。診察が終わっ
たら、会計に身構える、というようなところがある。それがなかった。あるべ
きものがない、という感覚があった。そうしたモヤモヤした感じが、私の中で
の日本医療の「常識」と英国医療の「常識」との体感的出会いであった。

◇松田 亮三(まつだ・りょうぞう)。本学産業社会学部教授。専門は医療社
会学・比較医療政策。『健康と医療の公平に挑む』(編著、2009年)、『医療
制度の国際比較』(共著、2007年)、『わかりやすい医療経済学』(編著、
1997年)ほか。

◇関連リンク
・個人のページ(本拠点内)
http://www.arsvi.com/w/mr02.htm
・拠点事業推進担当者の一覧
http://www.arsvi.com/a/s.htm

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【2】第8回京都学生人間力大賞で特別賞受賞  小辻寿規
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本拠点のメンバーであり、本学大学院先端総合学術研究科の院生である
小辻寿規(http://www.arsvi.com/w/kh15.htm)が、第8回京都学生人間力大賞
で特別賞を受賞しました。以下は受賞者からのメッセージです。

この度、日頃から行ってきた居場所づくり及び普及活動「つながるKYOTOプロ
ジェクト」や、まちづくり活動を評価していただき、第8回京都学生人間力大
賞特別賞を受賞させていただきました。

私自身、社会的孤立問題(無縁社会問題)やソーシャル・ネットワーキング
・サービス(SNS)の研究を行ってきた訳ですが、その中で調査などを通じて
知り合った生きづらさを抱える人たちの多くが何か支えを欲していながらも
何らかの事情により直接の対面では上手くそのことを他者に表現できず、孤
立する様やインターネット上のみでしか本心をさらけ出せることができない
現状に直面してきました。

その現状を何とか解消できないかとの思いが募るようになり、研究だけでな
く自らも積極的に参画し、様々な状況によって孤立した人や生きづらさを抱
えた人などが少しでも頼れる人間関係を構築できるようにと仲間と共に始め
たのが「つながるKYOTOプロジェクト」です。この活動を通じて、孤立した人
達や生きづらさを抱える人達がそれらの状態から少しずつでも解消されていく
様に立ち会えることは研究者としてだけでなく、一人の人間として本望です。

今後は、研究を推進すると同時に、活動の進化や誰でも気軽に語り合える居
場所(まちの縁側やコミュニティ・カフェなどと呼ばれる場所)の活動を
まとめた本の出版をできたらと考えています。

つながるKYOTOプロジェクトの活動や居場所の紹介は
http://datsumuensyakai.jimdo.com/
をご覧ください。

◇関連リンク
・第8回京都学生人間力大賞
http://www.kyoto-jc.or.jp/ningenryoku/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【3】拠点関連の書籍
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

□拠点関連の書籍────────────────────────────

本号では次の著書を著者のコメント付きでご案内します。

▽天田 城介 2011/09/20 『老い衰えゆくことの発見』
角川学芸出版,256p. http://www.arsvi.com/b2010/1109aj.htm

以下、著者である本学大学院先端総合学術研究科准教授の天田城介
(http://www.arsvi.com/w/aj01.htm)による紹介です。

この本は、年老いて「できたことが、できなくなる人たち」が生きる「社会」
を書いた本である。第一に、「できたことが、できなくなる人たち」は「で
きたこと」のイメージに囚われて右往左往する。割り切れずに、開き直れず
に、苦悩する。そんな姿を書いた。第二に、「できたこと」の幻影・イメージ
は周囲も引きずるから、周囲もうろたえ、葛藤する。できないながらもできる
ことを見出しては更なる苦悩と葛藤を重ねる。そんな現実を描いた。第三に、
そんな「できたことことが、できなくなる」という「どっちつかず」の状態は、
未曽有の高齢化を遂げつつある社会にあっては、誰もが想像してしまう大きな
「不安」であるゆえに、「できたことが、できなくなる」という状態を想定し
た社会保障制度が整えられることになる。年金然り、医療保険然り、介護保険
然り。そして、戦後日本社会における未曽有の高齢化とは、一言でいえば、
「できたことが、できなくなる人たち」が相対的に増加することを意味する
ものであり、戦後日本社会においては戦後経済成長のもとで恩恵を受けてきた
中産階級たちの多くが「できたことが、できなくなる人たち」になること(な
いしはその大いなる不安を抱えること)なのである。ゆえに、個人史の観点か
らしても、歴史の観点からしても、〈老い衰えゆくこと〉、すなわち「できた
ことが、できなくなる」ようなどっちつかずの状態からこそ、この「社会」を
鮮やかに描き出すことができる。そう思って書いた本である。ちなみに、
「あとがきにかえて」に記したように、この本は拙著『〈老い衰えゆくこと〉
の社会学』(多賀出版、2003年3月刊行、〔普及版〕2007年、〔増補改訂版〕
2010年)をできるだけ平易な文章で書き直したものである。したがって、この
本で引用している事例の多くはすでに拙著にて使ったものであり、その意味で
は「新しさ」はない。ただ、上記のような主張を中心に据えて全体を再構成し
たという意味では「本邦初」の本になったはずである。手にとって読んでいた
だければ嬉しい限りである。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【4】開催報告「第2回障害学国際研究セミナー」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

□拠点イベント
去る2011年11月9日に韓国からの来賓者をお迎えして国際プログラム「第2回
障害学国際研究セミナー」を開催いたしました。前日の歓迎会に引き続き、メ
インセミナー、ポスターセッション、ラウンドテーブルがおこなわれました。

午前のメインセミナーでは、「被災した障害者の避難をめぐる困難について」
「障害者介助サービスに対する日韓比較」、「わが国における自立生活セン
ターの課題と今後の動き」の3報告のほか、韓国の障害者政策や運動をめぐる
対談がおこなわれました。午後のポスターセッションでは、障害に関する数多
くのポスター報告がなされました。引き続き開催されたラウンドテーブルで
は、「障害・政策・家族」を共通テーマとして、日韓における障害者登録制度
や「家族」について議論されました。

今回のセミナーは2回目(第1回目は韓国で開催)となり、来年度も韓国で第
3回目を開催する予定です。国連の障害者権利条約など、「障害」はすでに国
家を超えたテーマとなっています。このような国際的なセミナーにおいて議論
を継続していくなかで、「障害」をめぐる取り組みをすすめていく必要がある
ことを実感するセミナーとなりました。来訪していただいた皆様や、開催にご
尽力いただいた皆様にこの場を借りてお礼申し上げたいと思います。
(渡辺克典・ポストドクトラルフェロー)

◆立命館大学グローバルCOE「生存学」創成拠点 国際プログラム
 第2回 障害学国際研究セミナー

日時:2011年11月9日(水)
会場:立命館大学衣笠キャンパス
(午前)創思館1階 カンファレンスルーム
(午後)学而館2階 第2研究会室、第3研究会室

◇関連リンク
・第2回障害学国際研究セミナー
http://www.arsvi.com/a/20111109.htm
・第1回障害学国際研究セミナー(2010年度、韓国・ソウル)
http://www.arsvi.com/a/20101123.htm

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【5】開催報告「ワイズマンと出会う」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本学大学院先端総合学術研究科教授の渡辺公三による報告です。

稀有なドキュメンタリー映画作家の、ほぼ40本にのぼる全作品上映企画FREDERICK
 WISEMAN RETROSPECTIVEが10月末から11月にかけて全国各地で開催された。
その一環として、11月5日(土)、6日(日)の二日間、立命館大学朱雀キャン
パス大ホールで「ワイズマンと出会う」が開催された。衝撃的な出世作「チチ
カット・フォーリーズ」(1967)を含む5作品の上映の後、ワイズマン監督自
身への公開インタヴューの形をとった講演会でしめくくられ、延べ900人近い
人びとが参加する盛会となった。作品の劇的な構造を編集作業で作り上げる過
程で、使われるのは撮影された映像の一割にもならないこと、今後も作り続け
られる作品群は、現代アメリカの博物誌の記録となること、といった監督の言
葉は聴衆に深い印象を残した。
(渡辺公三・本学大学院先端総合学術研究科教授)

◇関連リンク
・ワイズマンと出会う http://www.ritsumei-arsvi.org/news/read/id/455

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【6】開催報告 山本眞理氏公開インタビュー「『精神病』者集団、差別に
抗する現代史」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

去る2011年10月9日、立命館大学グローバルCOE「生存学」創成拠点院生プロジ
ェクト「精神保健・医療と社会」研究会では、山本眞理(長野英子)氏(全国
「精神病」者集団会員/障がい者制度改革推進会議総合福祉部会・部会メンバ
ー/World Network of Users and Survivors of Psychiatry 理事)への公開
インタビューを実施しました。聞き手は立岩真也(本学大学院先端総合学術研
究科教授)、コーディネーターは阿部あかね(本学大学院先端総合学術研究科
一貫制博士課程4回生/精神科看護)がそれぞれ務めました。以下、本学大学
院先端総合学術研究科一貫制博士課程6回生の山口真紀
(http://www.arsvi.com/w/ym10.htm)による報告です。

10月9日(日)、「『精神病』者集団、差別に抗する現代史」と題して、山本
眞理(長野英子)さんへの公開インタビューが開催されました。インタビュー
は2回の休憩を挟んで4時間以上にも及び、また学外の院生や当事者の方も参加
され、会場には熱気がこもりました。前半では、山本眞理さんご自身の体験を
交えながら、「全共闘のしっぽ」の残る70年代当時の精神医療の実態や、当事
者運動のうねりについてお話しくださいました。百人委員会の集会のお話など
からは、文献や資料からは知ることのできない当時の「におい」を感じました。
後半は、精神医療の現在的な問題へと射程を伸ばした議論となり、例えば向精
神薬服用の考え方、生存をめぐる自由と介入の境界などについて、立岩先生と
意見交換されました。最後の質疑応答の時間に、精神医療の地域移行について
批判的な問題提起をされていたことも強く印象に残っています。この貴重なイ
ンタビューは、いずれ皆様にも読んでいただけますよう準備を進めています。

新幹線の時間までインタビューに応じてくださいました山本眞理さん、参加さ
れた皆様、この日に心を尽くされた方々にお礼を申し上げます。ありがとうご
ざいました。

◇関連リンク
・山本眞理氏公開インタビュー「『精神病』者集団、差別に抗する現代史」
 http://www.arsvi.com/o/m03e20111009.htm
・「精神保健・医療と社会」研究会 http://www.arsvi.com/o/m03.htm
・山本眞理(長野英子) http://www.arsvi.com/w/ne01.htm
・阿部あかね http://www.arsvi.com/w/aa01.htm

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【7】拠点関連のイベント・研究会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□セミナー  ──────────────────────────────
「アフリカ障害者の10年」セミナー:
アフリカ社会と障害者――カメルーンの都市と森で暮らす障害者の生活から
────────────────────────────────────

日時:2011年12月3日(土)14:00~17:30
場所:立命館大学衣笠キャンパス創思館401・402

【プログラム】
14:00 開会
14:00~14:10  開会のあいさつ
立岩真也(立命館大学先端総合学術研究科教授)
14:10~14:30 
「アフリカ障害者の10年」セミナー開催の経緯と問題意識
斉藤龍一郎(アフリカ日本協議会)
14:30~14:50 
「生存学の視点からアフリカ・感染症を見る」
新山智基(立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー)
14:50~15:00  休憩
15:00~16:10 
「報告:アフリカ社会と障害者――カメルーンの都市と森で暮らす障害者の生
活から」
戸田美佳子(京都大学アフリカ地域研究資料センター)
16:10~16:20  休憩
16:20~16:30  指定コメンテーター・コメント
中村香子(京都大学アフリカ地域研究資料センター)
16:30~17:30  質疑応答
17:30 閉会
※プログラムは変更の可能性があります。

主催:アフリカ日本協議会、立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」
創成拠点、立命館大学生存学研究センター、DPI日本会議
共催:立命館大学大学院先端総合学術研究科、「生存」の人類・社会学研究会

◇関連リンク
・企画ページ http://www.arsvi.com/a/20111203.htm

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【8】編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▽11月9日の障害学国際研究セミナーは偶然的な出会いがありました。ソウル
にある、ある障害者自立センターの方が、私の知り合い(日本人)の友人とい
うことでした。手話やろう者の世界は狭いと言われていますが、手話やろう者
の世界を超えての別の世界でも意外な接点がありました。必ずどこかでつなが
っていることを信じて、研究活動に精進したいと思います。(甲斐更紗)

▽先日初めて祇園で食事をしました。祇園と言えば、京都で住まい探しをした
時のこと、不動産屋さんが「“祇園”と住所につけば、北向きだろうが何だろ
うがどんな物件でも構わない」とのたまう喫驚なお客のさんの話をしてくれま
した。私たちを魅了してやまない京都。巡る場所はまだまだ尽きません。
(加藤有希子)

【お願い】───────────────────────────────
生存学ウェブサイトでは、アクセシビリティの向上に日々努めています。
表示が見にくい、分かりにくいなど、お気づきの点がありましたら、ご意見を
以下のアドレス宛にお寄せいただければ幸いです。よろしくお願いします。
宛先: webmaster@arsvi.com
────────────────────────────────────

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■発行者:立命館大学生存学研究センター センター長 立岩 真也
〒603-8577京都市北区等持院北町56-1
TEL: 075-465-8475 FAX: 075-465-8342
E-mail: arsvive2010@gmail.com

■編集担当:甲斐更紗・加藤有希子・新山智基・堀智久・渡辺克典
(ポストドクトラル・フェロー)
────────────────────────────────
このメールマガジンは、以下のサイトのご協力により発行しています。
『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/
アドレスの登録・解除先 http://www.mag2.com/m/0001126512.html
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
このメルマガへのご意見・ご感想は、 arsvive2010@gmail.com まで

このメルマガは現在休刊中です

ついでに読みたい

このメルマガは
現在休刊中です

他のメルマガを読む