ニュージーランド移住記録「西蘭花通信」

「西蘭花通信」~NZの大学学費無料化~ Vol.0738

カテゴリー: 2018年05月15日
2ヵ月ぶりのメルマガ更新。いつもご無沙汰ばかりですみません。
オークランド大学の卒業式は伝統的に5月なのですが、生徒たちは去年で卒業し
ています。
次男も社会人になりました。

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「西蘭花通信」経済・生活編 ~NZの大学学費無料化~   Vol.0738  
2018年5月15日
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2017年10月に政権交代を果たした労働党連立政権は、公約どおり2018年から国
立大学や国立専門学校の初年度1年間の学費無料化に踏み切りました。NZには国
立大学しかないため、留学生扱いの学生を除くすべての大学生は1年目の学費が
無料になります。学費は学科だけでなく履修する科目数でも変わりますが、息
子たちを日本とNZの大学に同時に通わせていた経験からいえば、日本の国立大
学とほぼ同額の感覚です。

NZでは高校を卒業し18歳で成人すると、ほとんどの生徒は自力で進学します。
全日制の学生になるだけで18歳以上なら国から学生手当てが給付されます。こ
れは給付金なので返済の義務はありません。親と同居している場合は親の収入
やきょうだいの人数など条件が付くものの、この国では学生をしているだけで
国からお金がもらえるのです。これをあてにして、通学圏内に実家があっても
独立してしまう生徒が大勢います。24歳以下の満額は週227NZドル、80円換算で
1万8,160円、月額約8万円です。

さらに国が提供する無利息の学生ローンもあり、この2つが自力での進学を可能
にしています。生活費としては週最大229NZドル(1万8,320円)まで借りること
ができ、学生手当てとともにどちらも満額までいければ月額16万円に相当しま
す。「これで1年目の学費がタダなら大学行こうか?」となる生徒が増えても不
思議はありません。

次男・善(21歳)は2017年に大学を卒業し、学費の無料化にはかすりもしませ
んでした(笑)我が家の場合、アジア系の多くがそうしているように、親が学
費を全額出しました。自宅がシティーまで電車で10分という立地だったことも
あり、善は私の上げ膳据え膳に手弁当、夫の洗濯と月100NZドルのこづかい付き
で家から通学し、まだ家にいます。

そんな善が今、非常に懸念しているのが、「大学に行くつもりがなかった子が、
学費がタダになったからと進学する」ことです。この場合の「大学に行くつも
りがなかった子」とは、大学入学資格ぎりぎりの成績で、「学生ローンを背負
ってまで進学しても」と躊躇っていたところに、学費無料化という妙味に釣ら
れて方針を切り変えた生徒を指します。

「大学の勉強ってホント大変だから、ぎりぎりで入って来た子ががんばっても
まず上には行けないんだ。そういう子にとって勉強は先生から教えてもらうも
ので、自分でするものじゃないから、勉強の仕方がわかってない。でも大学な
んて勉強を教えてくれるところじゃないから、何百、何千という生徒の中でど
うしていいのかわからなくなっちゃうんだよね。で、やめちゃう子も多いし。
生徒が多すぎて友だちもなかなかできないから、聞く人もいないしね。みんな
高校時代の友だちかフラッティング(共同生活)してる子と一緒にいるよ。そ
れでも卒業さえすれば仕事があると思ってるんだろうけど、それがね~~~」

善も一応、就活の真似事で数社の会社説明会に行きました。それさえ成績次第
の招待制で一定の成績を修めていないと行けませんでした。特に善は経済だけ
を専攻し、就職に有利とされるコンジョイント(2学位を同時選択するダブルデ
ィグリーに似た制度)を選択しなかったため、3年で卒業となりました。しかし、
大半の大手企業は4年以上大学に行っていない新卒者を採用の対象にしていない
のです。

幸い善は2年生の終わりに、大学が成績上位者に出すオナーズ(優等)学位
https://blog.goo.ne.jp/nzijukiroku-sailanbiyori/d/20161209
への招待を受けていたので、4年履修見込みとみなされて投資銀行や監査法人の
会社説明会に顔を出すことができました。そこで聞いてきたのが、「最低でも
4年以上大学に行っていないと」という一般的に言われている話だけでなく、
「うちはオークランド大学とオタゴ大学からしか採用しない」
「成績はBプラス以上。それ以下は見ない」
といった企業の本音でした。それを聞き、どれだけ多くの学生が大手企業を目
指していながら、そもそも採用の対象外なのかを知り愕然としたそうです。

NZのような小国では一定規模の大手以外は新卒採用がなく、大手でも数名から
十数名の枠です。それさえ在学中にその会社でインターンを経験した学生でほ
ぼ埋まってしまいます。新卒採用を逃すといきなり縁故採用か一般採用となり、
職務経験のない新卒者は非常に不利になるようです。卒業した瞬間から学生手
当ても学生ローンもなくなるので、就活生たちは生活のために学生時代からの
バイト先のカフェやレストランでフルタイムで働きだし、働けば学生ローンの
返済が自動的に始まるので、その分の手取りが減ります。そうこうしているう
ちに1年下の後輩たちが卒業してきます。

私は学費無料化の正体は、若年失業者対策だと思っています。ヨーロッパの主
要国がすでに導入しているように、学費無料化で一定数の若年層を学生として
社会に出さず、失業者数の上昇を抑制するための措置なのではないでしょうか。
失業者となれば国が生活保護を負担しなければならなくなるので、学費の方が
財政的に安上がりな上に求職に有利な知識や職業訓練が身に付くという考え方
です。しかし、これを導入すると後戻りが難しくなります(無料という蜜の味
!)。さらに新卒者には厳しくても、雇用市場がまだまだ健全なNZにあっては
先手を打ったというよりも、政府にとってより頭の痛い新規雇用の創出を先送
りし、若者の受け皿を先に作ってしまったとも解釈できそうです。

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「マヨネーズ」

進学を迷っているのであれば、いつの時代であっても18歳としては重い選択だ
と思います。私の高校はいわゆる進学校だったので、学校を迷っても進学を迷
う人はまずいませんでした。その中で進学しないことを決めた人が非常に大人
びて見えました。警察学校、宝塚、片親を助けての就職、ミュージシャンと彼
らには明確な道がありました。

西蘭みこと

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