弁護士前田尚一の「本当は怖い身近な法律問題」

【本当は怖い身近な法律問題】


カテゴリー: 2009年09月09日
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       本当は怖い身近な法律問題 vol.3 2009.9.10
           http://www.smaedalaw.com/
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 皆さん、こんにちは。弁護士の前田尚一です。

 今月は,とても忙しいです。東京出張が3回あります。ひとつは,千葉県の
ある田園地域の裁判所支部で担当している相続事件。ひとつは,勉強に参りま
す。
 そして,もうひとつは,弁護士生活21年目にして,初めて,最高裁判所(
最高裁)の
口頭弁論という手続に呼ばれて赴きます。最高裁の口頭弁論というと,全国か
ら回ってくる事件をさばくため,高等裁判所(高裁)の判決のままであれいば,
口頭弁論を開く手間を省きます。
 というわけで,民事事件で,わざわざ口頭弁論を開くということは,高裁判
決を変更するのが通例ですので,とても期待を持っているのです。
 なお,刑事事件ですと,高等裁判所で死刑判決だったような場合は,人の命
にかかわる,極刑の判断であるだけに,例外的に,結論にかかわらず,口頭弁
論が開くのが通例です。
 光市母子殺人事件を思い出すとご理解いただけると思います。 ただ,ある
意味では,もっともらしさの演出という見方もできます。
⇒http://www.hokkaido-365.com/365column/bengoshi/2008/04/post-19.html

 その賛否はともかく,裁判員制度が始まった今,我々は,冷めた目を持ち合
わせ
ることも必要です。
 
 ご意見をお願いいたします。今後の糧にさせていただきます。
 ⇒ http://www.smaedalaw.com/

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 前回,孫引きした言葉が評判が良かったので,今回も一回孫引きを。

   **************************
 君は本気か?ならばこの瞬間をとらえよ!
 できることを,あるいはしたいと思うことを,いますぐ始めよ。
 大胆さには非凡な力と魔力が宿る。
 ただ没頭せよ。そうすれば心が熱を帯びてくる。
 いますぐ始めよ。そうすれば仕事は達成できる。
                                                 (ゲーテ)
   **************************
        神田昌典『お金と英語の非常識な関係・下』193頁より
                   [2006年,フォレスト出版])
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 裁判員裁判が始まりました。
 マスコミは,裁判員の質問が素晴らしかったと,裁判員に賛美を送るばかり
です。裁判員制度の問題は何も解消されません。
 
 「まがさす」という言葉を,時々,使ったり,聞いたりします。
 辞書を引いてみると,「魔が差す」とは,
 「悪魔が心に入りこんだように、ふとふだんでは考えられないような悪念を
起こす」と説明されています(広辞苑)。


 今回は,ちょっと気弱なP太郎君が,極悪人となるプロセスを追ってみるこ
とにしましょう。 

 P太郎君は,フリーター。現在は,自分の才能を買ってくれる仕事が見当た
らず,実家で暮らしています。
 とはいっても,“世の中は見る眼がない”とか,“オレの才能を見出す賢人
はいない。”などと公言しているP太郎君としては,ただただ“食っちゃ寝”,
“食っちゃ寝”の生活では格好がつきませんし,さすがに,親から遊ぶ小遣い
をもらうわけにもいきません。
 そこで,自分で汗をかいて,P太郎君は,お金を得ようと決意したのです。

 彼は,確信しました。隣の一人暮らしの婆ちゃんの家に忍び込み,年金を,
ちょっとだけお借りしようと。自分が,“大器晩成”したとき,100倍に
してお返しすればよいだけなのだから・・・・・・。

 自宅から,隣の婆ちゃんの家に忍び込むのは簡単。きっと,タンスの引き
出しに,2,3万円入っているはずだ。
 とりあえず,それらしく,パンストをかぶって,婆ちゃんの家に忍び込む。
 年金をせしめようと思い,タンスの引出しを開ける行為,とりあえず,窃
盗罪(刑法235条)となります。
 窃盗罪というのは幅広い,万引き,すり,置き引き,空き巣などなど。

 もっとも,そっと盗むのは窃盗ですが,盗むための手段として,暴行や脅
迫をすると,強盗になってしまいます。P太郎君,実はこのあたりあるお手
軽本を立ち読みして研究していたのです。

  窃盗罪であれば,1月以上10年以下の懲役
  強盗罪であれば,5年以上20年以下の懲役と,刑法236条で刑罰は,
飛躍するのです。

 寝酒の大好きな婆ちゃんは,いびきを書いてぐっすり寝込んでいる。

 ところが,タンスの引出しを開いた途端,婆ちゃん,「誰だい??」と。
 年を重ねるほどに眠りが短くなるとか,アルコールを飲むと眠くなるけれ
ど,実は浅い眠りになるだけ,といった知識が,残念ながら,P太郎君にな
かったのでした。

 そして,婆ちゃんは,「ど,ど,ど,どろぼう~」と叫ぶ。
 しかも,明治生まれの気丈なばあさんは,P太郎君にしがみついてきまし
た。
 
 P太郎君は動揺しまくります。

 「はなせ,ばばあ。はなさないとぶっ殺すぞ」と怒鳴って,押し倒してし
まった。
 この一言が良くない。だって,脅迫ですから。しかも押し倒す。暴行です
ね。

 しかし,脅迫,暴行を用いても,盗むための手段としなければ,刑法23
6条の強盗にはなりません。

 でも,P太郎君,もう少し本をきちんと読むべきでした。刑法は抜かりな
く,事後強盗罪という犯罪(刑法238条)を,メニューとして用意してい
るのです。
 ちょっとだけ,六法全書を見てみましょう。

   ***(引用始め)******

    (事後強盗)
    刑法238条 窃盗が,財物を得てこれを取り返されることを防ぎ,
逮捕を免れ,又は罪跡を隠滅するために,暴行又は脅迫をしたときは,強盗
として論ずる。
 
   ***(引用終わり)******

 P太郎君は,ただただ逃げるため,つまり,「逮捕を免れ」るために,「暴
行又は脅迫をした」のですから,「強盗として論ずる」,つまり,強盗と同
罪。一挙に,5年以上20年以下の懲役に進化してしまったのでした。
 ちなみに,執行猶予は,原則として,懲役であれば,3年以下の場合。
強盗罪ということになれば,原則として,執行猶予はつきません。

 でも,「魔が差す」とそれだけではとまりません。
 P太郎君が押し倒したら,飛んでいき,お婆ちゃんは,タンスに頭をぶつけ
てしまう・・・・・。

 打ち所が悪かったようです。お婆ちゃん,亡くなってしまいました。
 ここまでで,P太郎君は,強盗罪,それがあっという間に,強盗致死傷罪。

 強盗致死傷罪,刑法240条に,次のように定められています。

   ***(引用始め)******

    (強盗致死傷)
    刑法240条 強盗が,人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲
役に処し,死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

  ***(引用終わり)******

 そう,P太郎君。いつの間にか,死刑又は無期懲役の刑罰に服さなければな
らない立場になっていたのでした。
 
 刑法には,刑の軽減のほか,いろいろ決まりがあるので,ケースバイケース
の面があります。しかし,P太郎君の展開,もしかしたら,ありがちなんて思
いませんか。

 P太郎君,死刑か無期懲役といわれると,ちょっと可哀想な気もします。
 でも,「死人に口なし」の状況。実際の話を弁解したとき,裁判員は,信じ
てくれるのでしょうか。
 


追伸 もっとも,職業裁判官であれば,適切かというと,そうとは言い切れま
せん。
 とりあえず,
 ⇒ http://www.smaedalaw.com/mt/2009/07/post-10.phpから,「誤嚥事故
と損害賠償」をどうぞ。

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【お知らせ】

● 判例登載
  当事務所で担当した訴訟事件が,重要な裁判例として,二大判例雑誌の一
つである『判例時報』に登載されました。
  「交通事故」の案件で,頑張った甲斐があってかなり上手くいった事案で
あり,同雑誌の解説でも,「本判決は,・・・・・・,実務の一般的傾向より多くの
逸失利益を認めた点に特色があるので,実務上の参考として紹介する。」と評
釈されています。
 
 交通事故という日常生活に関わる法律問題に属する案件ですので,関心のあ
る方は,こちらからどうぞ。 

 ⇒ http://www.smaedalaw.com/mt/2009/08/post-13.php

● 執筆
  北海道のローカルニュースを発信する情報サイト「BNNプラス北海道3
 65」で連載中の『弁護士Mの小咄』は,こちらからご覧になれます。
   ⇒ http://www.hokkaido-365.com/365column/bengoshi/

  最新記事は,
  「裁判員ドラマの『主人公』酒井法子容疑者の犯罪」
⇒ http://www.hokkaido-365.com/365column/bengoshi/2009/08/post-23.html
  アクセス数が,1万を超えたようです。 

  「BNNプラス北海道365」では,まもなく,「動機なき殺人の怪」(仮題)
を寄稿する予定です。

● 執筆
  完了した「介護新聞」(発行 株式会社北海道医療新聞社)の連載『介護
と法律』
 (5回)は,こちらからご覧になれます。
   ⇒ http://www.smaedalaw.com/mt/2009/07/post-10.php 
 
 「新型インフルエンザと介護現場の関係」,「解雇のハードルは高い」,
「団体交渉と労働組合法」,「誤嚥事故と損害賠償」,「法律問題かどうかを
嗅ぎ分ける能力を」

 終息したかのように見えた「新型インフルエンザ」,上記「介護新聞」の連
載でちょっとだけ触れましたが,日経の記事によると,この事態を想定してビ

ジネスを展開しようとする起業があります。脱帽。

● 執筆
 コラム
   ⇒ http://www.smaedalaw.com/consulting/column.php

● 小冊子ダウンロード(無料)
   ⇒ http://www.smaedalaw.com/consulting/freebook.php

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◎ 講演・執筆・取材の実績の確認・ご依頼については,こちらからどうぞ。
   ⇒ http://www.smaedalaw.com/consulting/lecture.php

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 このメールマガジンで,今回取り上げていない事項については,次をご参照
下さい。

【個人の法律問題】
○債務整理   http://www.smaedalaw.com/personal/
○過払い   http://www.smaedalaw.com/personal/excess.php
○交通事故  http://www.smaedalaw.com/personal/trafficaccident.php
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○不動産・借地借家 http://www.smaedalaw.com/personal/realestate.php
○C型肝炎  http://www.smaedalaw.com/personal/c_virus.php

【企業の法律問題】
○労働問題・労働審判 http://www.smaedalaw.com/company/labor.php 
○民事再生・企業倒産 http://www.smaedalaw.com/company/bankruptcy.php
○企業法務  http://www.smaedalaw.com/company/legalaffairs.php
○顧問弁護士 http://www.smaedalaw.com/company/adviser.php

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○無料法律相談 http://www.smaedalaw.com/consulting/free.php
○お客様の声 http://www.smaedalaw.com/company/voice.php

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  弁護士 前田 尚一(まえだ しょういち)
      E-mail:maeda@lawyers.or.jp
   前田尚一法律事務所 
     〒060ー0061
     札幌市中央区南1条西11丁目1番地 コンチネンタルビル9階
      TEL 011-261-6234 
      相談受付専用 0120-481744(24時間受付)
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