ITCPA通信

海外製ERPの「会計抜き」導入


カテゴリー: 2013年08月15日
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.99━2013.08.15━


日本IT会計士連盟公式メルマガ 【ITCPA通信】 毎月1日・15日発行


▼ 海外製ERPの「会計抜き」導入

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日本IT会計士連盟(ITCPA)専務理事の五島伸二です。

この夏、各地の観測点で最高気温が更新されているとのことです。
自営業者たる筆者は24時間365日働く所存ですが、さすがにこの暑さには
労働意欲も萎え、世間並みにお盆休みをとることにしました。
まだまだ暑い日が続きそうですので、お体に気をつけてお過ごし下さい。

さて、今回のテーマは海外製ERPの導入における「会計抜き」現象について
です。

なお、本文中、意見に関する部分は私見であることを予め申し添えます。


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■ 「会計抜き」のERP導入とは?
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最近、大型ERPの導入が一巡して、中規模ERPの導入が注目されています。
中規模ERPとは、主として中堅企業向けのERPで、海外製ではIFS Applications
やMicrosoft Dynamics AX、日本製では富士通のGLOVIA smartなどが代表的な
製品として挙げられます。

これら中規模ERPの導入において、販売・購買・生産管理といったサプライ
チェーン管理のモジュールは導入しても会計モジュールは導入しないという
ケースをよく見聞します。
特に海外製ERPの導入では、そのような傾向が顕著なようです。

本稿ではこのような、会計モジュールを除外して海外製ERPを導入するケース
を「会計抜き」ERP導入と呼ぶことにします。

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■ なぜ「会計抜き」?
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では、なぜ「会計抜き」のERP導入が行われるのでしょうか?

そもそも中堅企業でERPを導入する場合、生産、販売、購買、在庫管理などの
事業活動で抱えている経営課題を解決することが主要目的であることが多く、
そのため、ERP導入は経営企画部などが主導し、経理部は蚊帳の外であること
が多かったりします。
また、そういった背景があるので、高度な生産管理機能など、サプライ
チェーンを最適化する優れた機能を持つ海外製ERP製品が選択される割合が
高くなります。

そして、経営企画部が海外製ERPの導入計画を立案して、いざ経理部に話を
持ち込むと、「経理は経理で現行の日本製会計パッケージを使い続けるので
お構いなく。」といったそっけない返事が返ってくるというパタンが多い
のではないでしょうか?

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■ 海外製ERPの会計機能は見劣りする?
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それでは、経理部の方はなぜ海外製ERP導入を渋るのでしょうか?

それは、海外製ERPの会計モジュールが日本製会計パッケージと比べると
見劣りするからです。

ただし、誤解のないようにいうと、見劣りするのはあくまで画面の操作性や
帳票の見栄えのことで、機能的に見劣りするわけではありません。
むしろ、海外製ERPの多くは多機能すぎるぐらいの会計管理機能を有して
います。

しかし、経理部には、伝票入力画面が紙の伝票のように借方・貸方が左右に
並んでいる画面構成であったり、残高試算表が罫線の枠が付いたきれいな帳票
として出力できるといったようなことにこだわる方が多く、外国製のERPの
実用本位の入力画面や帳票は敬遠されがちです。

(たしかに、勘定奉行やPCA会計などの日本製会計パッケージの考え抜かれた
操作性や洗練された画面デザイン・帳票デザインには目を見張るものが
あります。)

それと、一般的に経理部門の方は情報システムに対しては非常に保守的で、
現行システムでうまく動いているものを他部門の都合で変えるなどという
ことは論外なことなのかもしれません。

さらに、固定資産管理業務のように、日本の税法に大きく依拠するような部分
については、海外製ERPでは完全に対応できないこと多く、このことも海外製
ERPの導入が経理部門の方に敬遠される要因となっています。

結果として、生産、販売、購買、在庫の各管理業務はERPで行い、ERPから
会計システムに自動仕訳で生成された会計伝票データを流し込む運用となる
ことが多いようです。
(ちなみに、勘定奉行やPCA会計などの比較的安価な会計パッケージでも、
データベースはOracleやSQL Serverを使っていて、ERPから吐き出される
大量の会計伝票データを余裕で取り込めてしまったりします。)

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■ 「会計抜き」導入は非常にもったいない
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ERPは、生産管理、販売管理、購買管理、在庫管理といった現場管理で発生
した会計取引が、すべて統合データベースの中に保持され、会計モジュールに
リアルタイムで転送されます。
その結果、勘定科目や部門以外のさまざまな切り口(製品グループや顧客グル
ープなど)で会計データを見ることができ、さらに、会計システムから取引の
発生源にさかのぼって(ドリルダウンして)問題点を調査することが可能と
なります。

つまり、企業活動全般を見渡して、どこで損をして、どこで得をしているかを
多角的に分析でき、問題があればすぐにアクションを指示することが可能に
なるのです。

このような全社的な経営管理のレベルアップの実現がERPの大きな価値の
ひとつであり、ERPの導入効果は決してサプライチェーンの最適化だけでは
ないのです。

会計モジュールを導入しないということは、全社的な経営管理のレベルアップ
といったERP導入がもらたすはずだった大きな果実を捨てることになります。
これは、非常にもったいないことだと思います。

筆者は、経理部門の方の画面や帳票に対するこだわりや情報システムに対する
保守的な考え方を否定する意図はありませんが、せっかくERPを導入するので
あれば、やはり、全社的な経営管理のレベルアップを優先し、会計モジュール
も含めて導入するのが合理的だと考えます。
(なお、その場合でも、固定資産管理のような制度に大きく依存する管理業務
に関しては日本製のパケージ製品を活用することが有用と考えます。)

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■  (補足1)「会計抜き」のもう一つのパタン
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さて、「会計抜き」導入はERP導入の重要な効果を享受できずもったいない
と書きましたが、「会計抜き」が合理的な場合もあります。
それは、比較的小さな海外拠点に中規模ERPを導入するケースです。

この場合、現地の会計基準や税制等に対応するために、コストをかけてERPの
設定をしたりカスタマイズしたりするより、現地で一般的に使われている
安価な会計パッケージを使用して、人手をかけて現地対応したほうが安く
あがるケースが多いからです。

したがって、このようなケースでは、「会計抜き」がリーズナブルであったり
します。

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■ (補足2)かつては「会計だけ」のERP導入も
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かつて、大型ERPの導入において、よく「会計だけ」導入が行われました。
文字通り、会計モジュールのみ導入して、ERPを会計パッケージのごとく使用
するケースです。
この場合、「会計抜き」導入とは逆に経理部主導型のERP導入となります。
(「かつて」と書きましたが、もちろん今でもあると思います。)

このような「会計だけ」導入が多く行われたのは、大型ERPの堅牢性やその
会計モジュールの持つ多彩な会計管理機能がとても魅力的だったからだと思い
ます。

そのような導入プロジェクトに多くかかわってきた筆者としては言いにくい
ことではありますが、これも「会計抜き」ERPの導入と同じく、統合データ
ベースを基盤に持つERPのよさを使っておらず、もったいないケースに該当
します。

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■ ERPは全部入れてこそ真価を発揮する
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先に挙げた海外拠点に中規模ERPを導入するようなケースを除き、やはり
ERPは主要業務で使うモジュールを全部導入して活用することで、はじめて
真価を発揮するものです。
中堅企業でこれからERPを検討される場合は、ERPのもつ特質を理解して導入
計画を立案されることをお勧めします。


本日も【ITCPA通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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発行人:特定非営利活動法人 日本IT会計士連盟  代表理事 坂尾栄治
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