ヴォイストレーナーの選び方

「ヴォイストレーナーの選び方」 第173号


カテゴリー: 2018年10月31日
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「ヴォイストレーナーの選び方」 第173号 2018.10.31
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こんにちは、「ヴォイストレーナーの選び方」です!
このメールマガジンは、ヴォイストレーニングに関心のある人のために、問題の提起や解決へのヒントとして、配信しています。
実際にトレーニングをしている人、声に関心のある人は、ぜひ参考にしてください。
皆様のご意見、ご感想もお待ちしております。
「ヴォイストレーナーの選び方の要項」も参照ください。http://www.bvt.co.jp/new/voicetrainer/

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○舞台とトレーニングの違い

 まず、私の「レッスンとトレーニング(応用と基本についての相違)」を引用しておきます。
a. ステージ 本番 歌 全体的 無意識 調整 状態づくり
b. トレーニング 練習 声 部分的 意識的 強化 条件づくり
 aの理想は即興でのファインプレー、bは将来へ計画的ということです。ですから、aとbでも、bのなかでも、一見全く反対のやり方をとるトレーナーやトレーニング、方法やメニュもあります。どちらが正しいかではないのです。
 多くのケースでは、どちらも必要です。その割合や優先順位が目的、レベルによって、トレーナーによって、そして何よりもあなたの個体差によって違ってくるのです。

 私は最初から異なるタイプの二人のトレーナーにつくことを勧めています。そのことで、かなりの独りよがりを防げます。
 多くの場合、独りよがりを防ぎたいからトレーナーにつくのですが、初心者ではトレーナーの偏りに対抗できません。これは、一人の歌手の歌しか聞かないカラオケファンが、その歌手の影響下に知らないうちに100%置かれてしまうことで明らかです。
 トレーナーのレベルの問題もあります。トレーナーといっても、長くなると、客観性を持たないで、そのトレーナーの主観だけでの判断が行なわれていくものです。どんなに優れたトレーナーでもその可能性は否定できません。

○声の多彩さと難しさ

 なぜ私が他の分野の専門家やビジネスリーダーなど多彩な人と関わりあうようになったのか、今もそうしているのかを述べたほうがわかりやすいかもしれません。それこそが、声というものの多彩さを表すからです。表現ということを追求すると、すべての人間の活動に関わらざるをえなくなるからです。声―表現に関わらない人は、世の中でほとんどいないといってもよいからです。

 トレーナーは、心身のことにおいて、その人の実力や処方のレベルとしてはピンきりです。また、一人でどこまでできるかということも、人間であれば、すべてに万能とはいえないと思います。相手あってのものなので、まさに、健康法のようなものと思ってよいでしょう。
それにしても、今の専門家、特に体のことを扱う医師などとそれを伝えるマスメディアの、一つの方法と理論だけをシンプルにとりあげる風潮は危険です。一律、誰にでも効果のあるように思えても、その分、偏向しすぎているからです。

〇専門とは何か

 声については、専門家のようであって、専門は何かといえば、出自(出身畑)のことに過ぎないのです。それがアナウンサーなのか劇団員(役者)なのか、歌手なのか、演出家なのか、セールスマンか、声優なのか、ということになります。
ただの人でも、人生経験をたくさん積んだら、専門家ということもあり、でしょう。まして人心を掌握するために声を毎日、使ってきた政治家や社長、セールス、渉外、交渉、水商売の人なら、声の表現技術のスペシャリストといえます。
ですから、誰にでもできる、誰に対しても何かできる、と思ってしまう危険性があります。

〇専門家の条件

ここでは2つだけ注意します。
 一つは、専門家というのは、自分の専門の範囲や能力の限界を知っている人です。
 もう一つは、専門家は、他の分野の専門家の範囲や能力を知っていること。自分よりもふさわしい人材がいるときは、そちらを紹介できる能力、人脈を持っていることです。
 私を頼っていらっしゃるのは、この2つをもっているからです。
 研究所内にも多彩な人材をおき、外にもそういうネットワークを持っています。そこで我を離れた判断ができるのが、専門家の価値です。素人にはできない、専門家ゆえの強みです。でも、本人が使えているのかということです。

 ですから、皆さんは次のことを覚えておくとよいでしょう。
1.世の中に万能な人はいない
2.その専門家の専門領域と、その専門外を知ること(本人に聞いて、きちんとそういうことを話せる人は少ないです)
3.今、ここでの判断が、ベストとは限らない。ずっとその疑いはあってもよい。今の楽や今のもっともよいのが将来によいとは限らないし、むしろ可能性を早く狭めることもあるようなことです。

 あなたにとっての世界一の優れたトレーナーに会うのは、あなたが優れていくことによって、そのあとに起こってくればよいことです。
 私は、それを妨げない努力をしています。よりふさわしい人を紹介するというのも、医療などでないとわかりにくいものですが、そのためにあなたが判断力をつけられるレッスンやトレーニングをセットするように心がけています。

○声の可能性と限界

 専門家とは、わからないことがあること、わからないことについてはわからないとはっきり言える人です。これが今や、「何でも努力すればできる」などと、いらした人を説得する傾向の強い人ばかりです。本人さえもできていないことや努力していないことも勧めていることが多いのです。
 トレーニングは誰でも始められ、やることはできます。それを人に問うことになると、可能性よりも、限界が突きつけられます。本当の壁を破ったり超えたり、見極めて方向を変えたりするために、トレーナーやメンターを使うのです。自分にとってどうなのかは、最終的に自分で判断するしかないからです。

 それでも、多くの人は、好き嫌いや一時の他人の評判や権威に価値をおいてしまうものです。しかし、その眼をくもらせないためにレッスンがあります。その眼をくもらせてしまうレッスンのほうが多いのは、甚だ問題です。
観る眼を求めている人が少ないというのは、よく感じます。人間的、性格的に好きなトレーナーといたいというのが本音というケースもよくあります。眼力をつけるために他に学びにいくのです。
 あなたの才能の発掘と、それを活かす学び方を身につけていくのが、レッスンだとしたら、楽しいことばかりではありません。己を知り、限界を知り、そこから可能性を、努力で得ていくのです。目的は目先でなく、一歩も二歩も先にあるのです。

〇ヴォイトレの複雑さ

 医者も整体師もプロデューサーも、分野を問わず、優れた人はそういうことをよく知っています。彼らは知識や時代、歴史を、先人やライバルから学びつつ、現場で最良のセレクトをできるように努力します。本能的、直感的なものを大切にしつつ、科学的・客観性をも整合させようと日夜、努力しています。それはすぐに結果の出るものではありません。
 まして、このような未熟な分野で、未熟な人の集まるところでは、科学や理論といいつつ、もっともそこから離れたもの、偶然の経験や実験、少ない症例などで自己証明したと思い込んだことだけを主張している人も少なくありません。
 大切なのは、一時、自己否定することになっても現場で効果をもたらすもの、短期でなく長期にもたらすものを見抜く力です。
 未熟な分野は未熟な人が集まります。頭であれこれ考えてまわりと同調し、多数決のような感覚で判断します。その結果、いつまでも烏合の衆から出られなくなります。
未熟と思えば、分野を超えて、すぐれた分野や人に学ぶことに尽きます。

〇失敗、未完成の現実直視

 声や歌は、日常のものがうまく育っていないのが現実です。ある意味で、日本における声の問題はその未熟性の結果なのです。ですから、そこを見据えて、今の自分自身の判断を保留しなくては、そのままで昇華しないのです。
 ヴォイトレが複雑になっているのは、心身の問題、未熟さが声に結果として出てくるのです。
 気分のよいとき、体調のよいときの声がよいのは、生命体なら当然です。レッスンの目的にとることではありません。現実に多くのヴォイトレは、そのスタートラインの前提(入口)のはずのことが目的化しつつあります。トレーナーも心身リラックスに重きをおかざるをえません。病気や医療の副作用で人並みの声のリハビリが最終目的の人は別です。彼らには、日常を取り戻すこととして、それが大切です。
 しかし、目的をアップすることでもっと効果のあがる人が、そこで満足することはもったいないことです。必要性をアップさせる、モチベーターとしての役割が主流となりつつあるのが、ヴォイトレに限らないのではないのでしょうか。
 レッスンにヴォイトレそのものよりも自ら生きてきた人生の経験の力を使うようにしています。そこはまだ未熟、世の中には人生の大家はたくさんいます。トレーニングとうまく使い分けてください。

○声の基礎と役割分担

 声の基礎づくりについてみていきましょう。
第一レベルは、心身の基礎。スポーツ選手に対するメンタルトレーナー、パーソナルトレーナー(フィジカル)、マッサージ、整体師、医者、栄養士などです。
第二レベルは、専門へ特化するためのそれぞれの基礎。たとえば野球であればバッティングコーチやピッチングコーチにあたります。それぞれに目的も専門も違っています。

 ヴォイトレを、大きく3つに分けると、
A.表現 ―本番、ステージ、レコーディング ―ディレクター、プロデューサー
B.歌唱 ―作詞作曲、アレンジャー、SE、ヴォーカルアドバイザー
C.発声 ―ヴォイストレーナーほか
 もちろん、私は、A~Cを通してみる立場です。それぞれの専門家との共同作業をしています。Cは声楽家のトレーナーと発声の基礎づくりのところで行なっています。 このもう一つ基礎に、ゼロレベルとして
D.健全な心身
というのがあります。これが最近は大きな課題です。

 そこで、医者(音声専門)、整体師、メンタルトレーナー(心療内科、精神科医)、ST(言語聴覚士)、MT(音楽療法士)とも連携を深めています。
 最近、広義のヴォイトレには、ジム、ヨーガ(占い、ヒーリング)などあらゆる心身運動の分野が混在してきています。トレーナーが、他の専門や関心をもっていたら、おのずと、これらは混じってくるものです。それは、声が日常生活とともにあるからです。ただし、セラピーの方向については、医療などの専門家以外の人が言及するようなことは、気をつけなくてはなりません。

○2つの面からのアプローチ

 私も多くの専門家と交わることで多くの分野の勉強、研究をすることになりました。声を扱う以上、「声のしくみ」(ヤマハミュージックメディア)で明らかにしたように、人間の活動領域全般に関らざるをえないからです。今も大学に行ったり、教育関係者とも、いろんな研修や研究をしています。
 主として次の2つの面からアプローチしています。
1.心身、自己の確立
2.コミュニケーション、表現

 参考までに、学校での教科としては
国語―日本語、読む聴く、朗読劇、せりふ
理科―物理、音声音響、生理―生物、成長、発達史、遺伝学、骨相、考古学
英語―語学、外国語、発音、聴きとり(ヒアリング)
社会―日本、世界、歴史地理
音楽
体育―保健、成長期、老化
大学であれば文化人類学、解剖学、哲学、美学など、さらに含まれるでしょう。
 大まかには、国語、物理、生物、体育、音楽がメインです。

○トレーナーの使い方

 人をみる眼を持つことは大切です。すべては人との関係で築かれていくからです。なかには腐れ縁というものもあります。人をよしあしやメリットデメリットでみることはよいこととはいえません。
 しかし、自分の時間やお金を投資する、つまり、何かを得ようというときは、よくよく考えてみるのです。
 人そのものに価値があるかないかはわかりません。自分がその人を活かせるかを考えます。その人に便宜を図ってもらうのではありません。その人と接することで自分が変われるか、発想や考え方や行動に刺激を受けるかです。
 自分の日常性を破ってくれるかです。それを直感として見抜けるかです。
 その人が多くの人に力を与えているから、自分もそうなるとは限りません。自分に対してだけ、そうなることもそうならないこともあるかもしれません。
 私は自ら、とりにいくようにしています。誰にでも与えられるような人を選びません。誰もがとれるものに価値はありません。他の誰もがとれなかった何かをとりにいきます。それが自分にも相手にも価値のあることだからです。要は自分次第です。

○相性とスタート

まだ何者でもない人は、トレーナーなどを選ばなくてよいと思っています。本人が未熟な経験で選ぶより、私が選ぶほうが結果として適切なはずです。
 でも、あえて自己責任で遠回りをしてみるのも悪くありません。自分にぴったりのトレーナーや歌にめぐり会うには、自分を知らなくてはなりません。それは、すでにある自分ではないのです。そのままで相手に通じる、そんな天才なら、すでに世の中でかなりのことをやっています。
 自分に合う相手や、相手に合う自分が、あるのではないのです。自分を知るために相手に会うのです。会ってから、合うところや合わないところを知って、合わせていくのです。
 ここでは複数のトレーナーにいろんなメニュをセットしています。
 そのバリエーションからあなたの素質や才能、個性や性格が発揮されてくるように、です。
 自分のことは自分だけが知っていて、正しい判断で選べるなどというのは、根拠のない自信です。それで事に当たると、続かなくなります。すべては新しいスタートなのです。

○トレーナー捜し

 トレーナーを探すのは、自分の能力をつけていくためです。どんなトレーナーであれ、あなたがそのトレーナーを最大限に使い、最も大きな成果を求めていくことです。
 すぐに合わないと決めてしまうのも、心の問題です。優れた人は、どのトレーナーにも合うのです。合うなかで、最良の選択をしていけるのです。それは、トレーナーのよいところを取り出し、最大限に活かせるからです。
 トレーナーの悪いところを最大限に見つけるような才能は、愚の骨頂です。自己満足、自己保身でしかありません。変わりたくないなら、一人でやればよいのです。今の自分の肯定をしてもらいたくてトレーナーを探す人、そこで応じる人(トレーナー)、これは、医者とカウンセラーの関係です。芸や仕事の力をつける関係ではありません。

 「変わらなければ出会いでない」のです。変わるチャンスを自分の考えに囚われ、拒んでいるのは、未熟なのです。
 トレーナー探しが、自分探しになってしまいます。自分を見つめずに、トレーナーをみて判断しようと考えていても、仕方ないのです。トレーナーの目を使って自分の検証をすればいいのです。
 どのトレーナーも万能、完全ではありません。すべてのトレーナーがトレーナーとしてあなたにふさわしいとも思いません。私も私自身を誰にも推薦しません。この研究所には、いろんなタイプのトレーナーがいます。
 少なくとも、トレーナーはそれでメシを食ってきたので、そうでない人が学べるものはたくさんあります。

○変わるために変える

 これまで、いろんな人に会いました。欠点が目につく人ほど、それだけ欠点があってやれているのはたいしたものです。その力の本質は何なのだろうとみてきました。
 いろんなアーティストとつきあってみると、必ずしも、その地位相応に常識やマナーのある人ばかりではありません。自分の世界を創りあげるためには、気を遣い、誰とも仲良くやっているわけにもいかないのでしょう。
 とはいえ、アーティストである限り、作品においては、いかなる制限の下でも、人が期待する以上の力を出してきたから認められてきたのです。
 ですから、トレーナーに就くと活かそうとするのです。トレーナーに自分の力を最大つけさせたいように感化せしめていくのです。このまわりの人をとり込み動かす力がなければ、芸も仕事もまともにできません。

〇無となってとりくむ

 あなたの今の力に何かを加えたいのなら、大きく望むほどに、自分を無としましょう。トレーナーのいうことを聞けというのではありません。その向こうにある超越的な何かを感じること、そこに素直になっていくことです。
 トレーナーは、あなたの潜在させている能力を開花させるための技術(方法、メニュ)を与えて、変化させようとしています。
あなたが何かできるなら、世の中に問うてください。何かできないなら、できるために、与えられたものに無心で全力で取り組み、本当のあなたの力を出してください。仕事も他のことも同じです。

○トレーナーの本当の力

 ときに、「プロの歌手よりうまく歌う、プロの役者よりうまくせりふを読む、アナウンサーよりうまくニュースや早口ことばを読む」などは、トレーナーに求める力とは別です。
 世の中には、スーパーマンのように何でもできる人もいます。しかし、それは器用なだけです。トレーナーは、スーパーマンではありません。そんなことができるといったら、それぞれのプロの人に失礼なことです。
 そういうプロの人とはトレーニングしていないトレーナーなら、のど自慢をするのもよいと思いますが。本当のプロとは、専門の場で長く居つづけた人です。トレーナーはレッスンのプロであり、ステージのプロではありません。

 人の能力や素質、才能などは、わかっているつもりでわかっていないものです。トレーナーも、すぐにはわからないことが多いです。それでも、経験上、10年20年と人をみていくと、経験上、認識を深めていけます。
 私が続けていられるのは、私の力でなく、私に与えられた機会や場のおかげです。そこで取り組むうちに、私のなかのそういう力が出てきたのです。これも、そのプロセスの一部です。こうして伝えようと努力してきた結果です。

 私にとっては、当たり前のことが、世の中の多くの人にわからなくなったのは、中途半端な自己責任、個人主義に走ったためでしょうか。マスメディアや教育やトレーニングの劣化のせいかもしれません。学ぶ人もお客さん気分になってしまったからです。トレーナーの歌に感心するくらいなら、なぜ、その人がプロ歌手として、うまくいっていないかを学ぶことがずっと有意義です。プロ歌手とトレーナーは違います。プロ歌手の二流が、トレーナーではないのです。

○本当の効果、成果とは

 次のことを覚えておくとよいと思います。
・レッスンにきているとか、レッスンが楽しいとか、レッスンが充実しているということと、本当の効果や成果は同じではないということ。
・自分が出ていると感じている効果と、本当に必要とされる成果は同じではないということ。

 目的がレッスンそのものでの快感なら、何もいいません。それが得られているなら、最高によいこと、うらやましい限りのことです。
 声を武器として使いたい、魅力的に使いたいという人には、トレーナーを最大に活かすように使ってほしいし、使えるようになって欲しいのです。心身がリラックスできて発散できれば心地よいという場と、自己修業として能力を高めていく高まり感の必要な場では、違うものということをどこかで気づいて欲しいと思います。

○歌手の新分類

 歌手において、プロや職業的歌手ということを、歌で生計を立てているかどうかで問うことの無意味さを述べたことがあります。次のように分けてみるのは、一つの案かと存じます。
1.芸術的歌手(オペラ歌手)
2.総合的歌手(シンガーソングライター)
3.パフォーマンス的歌手
4.役者的歌手
5.タレント的歌手
6.ビジュアル的歌手
7.レコーディング歌手(流し、声優)
8.カヴァー歌手(オールディーズ)

 重なるところも多いとは思いますが、その要素は次のようなことです。
1.楽器プレイヤーの演奏レベル
2.作詞・作曲・アレンジ・演奏のトータルレベル
3.振り、アクション、ステージ、ライブ
4.ことば、せりふ、雰囲気、振り、表情、アクター
5.知名度を活かしての歌
6.ルックス、スタイル、ファッションを活かしての歌
7.何でも声でみせられる
8.どこまで似ているか
 7は、耳へ働きかける音の力として1と通じますが、ラジオ、CDに強い人、アニメソングや唱歌の歌手などが代表例です。8は日本のように外国の力(海外の流行のプロデュース)だけで成立してしまう国では、ほとんどのポップス歌手も含まれるといえます。

○歌手、役者の特異性~学ぶべきものの専門範囲がない

 ヴォイトレと似ているものとして、話し(方)、語学(日本語、外国語)に関わる人、プレイヤー、役者、歌手、声優、アナウンサーなどで例をとります。
 たとえば、アナウンサーや声優は、2年くらいの養成所(スクールなど)での勉強の期間が必要でしょう。私どもも、滑舌や早口ことばを実習に入れますが、これは彼らの得意とするものです(つまり、きちんと習って身につけてきている)。普通の人なら2年くらいかかります。普段の生活にはない特殊な技術の一つです。いつも早口ではっきりとしゃべっている人のなかには、労せずマスターできる人もいるかもしれません。技術として、日常では個人差が大きいものの一つでしょう。
1.高低アクセント
2.イントネーション
も、標準語としての日本語(共通語)として教わりマスターします。方言は直さなくてはなりません。報道、放送のための共通のルールです。
 それに対して、歌手、役者はあまりスクールのようなところに行きません。実生活のなかでスキルを得てきます。他の人よりもおしなべて高い、感性、感覚と声の調整能力があると考えられるでしょう。
 研究所にくると、プロ歌手なのに音程、リズムから徹底して基礎をやらなくてはいけない人もいます。楽譜が読めても読めなくてもプロにはなれますが、耳・声のプロセスは、欠かすことはできません。
 
 レッスンとなると、「レッスン=トレーニングで上達する」というプロセスを歩ませますから、「楽譜を読めるように」とか、「楽器が弾けるように」というのを加えることがあります。音楽の世界で長くやっていきたい人なら効果的です。これまで入れていなかったから、入れることで大きく上達するからです。変わる可能性があればやるに値するのです。

○プロの条件

 歌手も役者も、出口は、表現力となります。そこで歌手は音楽の、役者は演技の振り、しぐさや表情といった、プロを目指さなくてはいけません。素人であってもプロ以上のプロ、役者以上の役者もいるので、いくつか定義してみます。

 プロであるには「プロみたい」「歌手みたい」「役者だね」といわれるようではだめです。最低の条件として、
1.いつでもどこでも(いろんな制約下で)最高のパフォーマンスができる。
2.不調のときにも、最低限許されるレベルより上で演じられる。
 そこでは応用性と再現性の2つが徹底して問われます。
 心身の能力が高いことがそれを支えます。感性や視野の広いこと、即興性も必要です。考え方や振る舞い方もプロでないと、務まらないわけです。非日常において日常であることができることはそういうことです。
 ですから、レッスンもトレーニングも非日常でセットしないとよくないのです。日常で、非日常なことをするのは、奇人です。プロは、日常と非日常を自由に行き来します。日常を一瞬で非日常化する力をもつのです。
 状況対応力は、プロの条件です。状況打破力は、一流への道、いつでも現状を自分で変えられる人、つくれる人だけが、生涯のプロ=一流となれるのです。その状況を指して、その人の世界というのです。

 日本語について、私たちは日本語を大して努力せずに話しています。多くの場合、音声で放送したり演じるレベルには磨かれていないので、トレーニングが必要です。
 その人の今のレベルというのは、それぞれに違います。必要とされるレベル(目標)も、それぞれに違います。
 その2つをはっきりさせます。トレーニングを曖昧にしないためです。アナウンサー、ナレーター、声優なら、目標を表現や演技で、音声で放送できるレベルに設定します。

○トレーナーの条件に~日本語教師を例に

 日本語を外国人に教えられると思うのですが、相手の母語国語についての知識がないと効率が悪いものです。日本語教師は必ず、日本語だけでなく、相手の母語との音声での比較を学びます。
 ヴォイストレーナーにおいても、自分がしゃべれる、話せる、歌えるだけでは足りません。相手がどういう状態かを知り、それと自分とを比べるだけでなく、ここがポイントで難しいのですが、相手の理想像をセットしてのアプローチが必要となります。それには多くの経験を他の人の心身を通じて積んでおくことです。

日本語教師
a:日本語
b:相手の母語
aとbの比較
を埋めるトレーニング

ヴォイストレーナー
a:自分の声と心身
b:相手の声と心身
aとbの比較
それに加えて
c:いろんな人の声と心身
aとbとcの比較
d:相手の理想イメージ
bとdの比較
e:自分(トレーナー)の理想イメージ
bと(aとcとd)から導いたeの比較
そのギャップを埋めるトレーニング
知識だけでない分、このように複雑なのです。

〇トレーナーの条件~話し方の先生を例に

 「話」となると比べるとどうでしょう。話し方教室を例に比べてみます。
1.リラックス、緊張緩和、あがり防止
2.スピーチやプレゼンテーション、音声コミュニケーションの技術(パフォーマンス)
3.話の構成、内容、意味(ここは、文章で起こしてもわかる部分)

 声もせりふや歌のように使うところは、「話」と共通します。誰でも話せるし歌えるのです。そこに立ち返るのなら、より話せるより歌えるように、という比較の問題です。
1.(外部)うまい人と比べる
2.(内部)前の自分と比べる
 この2つの軸で比べます。それとともに、プロの条件として、コンスタントにその力を発揮するということです。そこを再現性、耐久力など目標にするとわかりやすいでしょう。

 スピーチ、面接、司会など人前であがりやすい人なら、心身のリラックスが問題となります。プロでも状態が未知数であったり、状態が不安(体調不良、準備不足)であれば、同じようなことが起こりやすいです。それが外にわかるかということのほうが現実としては問題です。
 次の2つを踏まえておくことになります。
1.状況
2.状態
「500人の前で話してもあがりません」ということなら、500人の前で話す機会を与えて場慣れをしたらよいのです。経験を重ねることで自信をつけさせるのは、恐怖症の克服と同じくとても有効です。

○ピークパフォーマンスとレッスン

 基礎と応用、練習と本番を結びつけておくこと、これを常に考えてレッスンをするのが大切です。
 基礎のレッスンと即興のレッスンを比較しました。いつでも、もっともよいところのみで状態を取り出すこと(ピークパフォーマンス)は、メンタルトレーナーの専門です。スポーツや歌など人前で演じるアートでは、一つの分野といってよいほど、大きな課題なのです。
 誰にもメンタル面で落ち込むことはあります。うつ病は今や国民病といわれるくらい社会問題です。意欲、モチベーションなどが関わるからです。
日本だけではなく先進国では一般的なことですが、日本ほどひどくありません。先日、いきなり何百人ものまえで話せといわれたシチュエーションで、外国人と日本人との比較(心拍数)実験がTVで流れていました。日本人の結果は、最低でした。

〇英語とヴォイトレ

 英語でなく英会話が苦手という人も、これに通じます。外国人とうまく話せない人は、外国語力だけでなく、外国に接していない、慣れていないことが大きいのです。メンタル面の自信のなさが、フィジカルに影響して、実力を発揮できないのです。
英会話学校の体験レッスンで初回は全くできないのが、4、5回でそれなりに話せるとなれば、英会話力でなく、慣れによって変わったのです。
 話し方や内容を学ぶよりも、人前に立って話すことで舞台慣れをさせていくほうが効率的なのです。これは人前で行なうことには共通のことでしょう。

 「英語耳ヴォイトレ」の執筆のときに、改めて英語でのコミュニケーションは音声の力に大きく依存することを確認します。特にヒアリング(リスニング)と発音といった、発声、呼吸に関わるところには、準備が必要な人が少なくないことに気づきました。外国人の前で外国語でというまえに、人前で大きい声を出せるか、強く息を吐けるかということです。

〇気づきと補充

いっぺんにすべてのことを行なおうとするとわかりにくくなります。ピアノの初心者なら、すぐ弾くのではなく譜面読みや指の運動を、別々にトレーニングした方がよいのです。
結果というと先のほうにばかり気がいきます。そこで直そうとして直せるくらいなら、すでにすぐに直っています。直っていないケースでは、もっと根本の問題に気づき、改めなくてはならないのです。改めるというと、正しく直すように思われがちですが、多くは不足しているものを補うことです。入っていないものを入れること、気づいていないことに気づくこと、そこから、感覚を変え、体を変えていくのです。体を変えていくこととは、感覚を変えていくことでもあります。
 歌でいうと、音感(音高や音程)やリズム感のよくない人には、間違ったところを正しい音やリズムに直すのでなく、気づかせること(気づく能力をつける)です。次に気づいたことを自らやり直し、正すことです。これを一人でできないから、トレーナーが指導したり、判断をするのです。しかし、教えるのではなく、一人で発見して矯正できるようにしなくては意味がありません。
 トレーナーは正誤の判断をするのではありません。その人の判断のレベルを判断することです。7音の曲を5音で捉えている人には、2つの音の存在を気づかせなくてはなりません。そのときに2つの音だけ教えて出させたところでは直りません。
 リズムを間違う人は、一定のテンポを正しくキープできません。テンポなしに正確なリズムは刻めません。トレーナーは、その人の大まかな、あいまいな、だらしないところを(プロのレベルからみて)判断の基準そのものを高めていきます。きめ細かく、ていねいで厳密な判断ができるようにしていくのです。

○体と心と声

 私は「方法とメニュでなく、基準と材料を与える」と言ってきました。息や声は一時、表現から切り離して、体中心に理想に整える。息吐きなどで条件をつくる、鍛えるということです。
英語を話すのに息を強く吐くトレーニングをしていたら、バカのようにみえるでしょうか。私はそこからヴォイトレととらえているのです。 
ですから、ヴォイトレでは
1. フィジカル、表情、しぐさ
2. メンタル、心、感情
を同時に扱っていきます。スピーチやプレゼンテーションでの疑問点や相違点もわかりやすくなるでしょう。

 プロは身内でなく、第三者(初めて会う人)に通じる力、プロが(ほかの分野のプロも)認める力が必要といえるかもしれません。
 フィジカルでも、脳科学を使った方法で、画期的にうつ病や認知症などが治ったという事例がたくさん出てきています。しかし、かつてのロボトミー(脳梁で左右脳を分離する手術、後遺症が出て→失敗)などと同じで、誰かに一時、プラスであっても、一般化については、短期的にみて、すぐに肯定してよいものではありません。
研究や実験は大切です。それで進歩していくところもあります。しかし、客観的な評価ができると限らない分野もあります。科学的という売りに振り回される人が少なくないのは、どの分野も同じです。試みにすぎないのに、理論・理屈や検査で安心したいのです。人より機械やコンピュータ、実の声よりも理論を信じるようになってきたのです。どんな体験談も検査値も、必ずしも自分に当てはまるものではないことを知っておくことです。
 医者(他人)を信頼するだけで、かなりのことはよくなるのは確かです。医者やトレーナーを頭から疑ったり、比べて欠点ばかりをあげつらうのは、本人の成長のためにはお勧めできません。
 その人の性格や考え方が、その人をつくってきているのです。一時、少なくともレッスンでは、我というものを離してみることです。他人のように自分を眺められるようになることが大切です。そのことが芸を高める条件でさえあるのです。

○前向きな姿勢が最大の薬

 わがままと個性、くせと個性をわけるのは、難しいことです。専門家といっても、本当の専門家は、何をもってどう示すのかも難問です。声がよいからヴォイストレーナーとして優秀とはいえないでしょう。トレーナーの判断と自分の判断にどう折り合いをつけるのかは、難しい問題です。
 でも折り合いを付けなくてもよいのです。全てを受け入れつつ、よいところを活かしていく、どこまでも前向きな姿勢こそが何よりも大切なのです。
 将来に目標を持つ、目的を立ててそこに歩むこと以上に、よい薬はないのです。
 科学的手法について、私はかなりの情報を集めています。しかし安易に使うのではありません。
ここに訪れる人やその人が通うところの情報を知っていることで相手や担当するトレーナーに安心を与えられることのほうが大きいのです。

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○ブレスヴォイストレーニング研究所では、プロ対象、初心者、一般向けなど、皆様の希望に応じた個人レッスンを行なっています。
福島英の選んだ十数人のトレーナーとともに、充実した時間を過ごしましょう。(どんな目的でも相談に応じています)
お気軽にいらしてください。
http://www.bvt.co.jp/new/order/

○ブログもお楽しみください。
「夢実現・目的達成のための考え方と心身のトレーニングブログ」をご覧ください。
http://bvt.txt-nifty.com/trainersen/
「発声と音声表現のQ&Aブログ」ヴォイトレ関連の世界最大のFAQサイト 
http://bvt.txt-nifty.com/qablog/
「ヴォイトレレッスンの日々ブログ」研究所NEWS トレーナーとスタッフと投稿 
http://lessonhibi.hateblo.jp/

○福島英と研究所の本のご案内
http://www.bvt.co.jp/new/media/

☆新刊のお知らせ
「人は『のど』から老いる 『のど』から若返る」(講談社)福島英著1,000円税別
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☆増刷中 
「読むだけで、声と歌が見違えるほどよくなる本」(音楽之友社) 福島英著2,200円
http://www.bvt.co.jp/books/yomudake.htm

☆電子書籍の一覧
http://www.bvt.co.jp/new/digitalbook/

〇ブレスヴォイストレーニング研究所公式サイト
ヴォイストレーニング、発声、表現に関する情報を提供しています。
http://www.bvt.co.jp/new

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今週のおすすめ!メルマガ3選

サラリーマンで年収1000万円を目指せ。
高卒、派遣社員という負け組から、外資系IT企業の部長になった男の、成功法則を全て公開します。誰にでも、どんな状況、状態からでも自分の力で人生を変えるための情報と知性を発信しています。人生を意のままにするには、脳みそとこころの両方が進化しなければなりません。そんな進化とは何か?をお届けする四コママンガ付きメルマガです。2014年から4年連続でまぐまぐ大賞部門賞を受賞しました 学歴やバックグラウンドに拘わらず、人生を思いのままに生きるために必要な考え方が書かれた、「良書リスト」も希望者に差し上げています。
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親鸞に学ぶ幸福論
【あなたを幸せにさせない理由はただ一つの心にあった。その心がなくなった瞬間に人生は一変する】と親鸞は解き明かします。 「本当の幸福とは何か」はっきり示す親鸞の教えを、初めての方にもわかるよう、身近な切り口から仏教講師が語ります。登録者にもれなく『あなたを幸せにさせない5つの間違った常識』小冊子プレゼント中。
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日本株投資家「坂本彰」公式メールマガジン
サラリーマン時代に始めた株式投資から株で勝つための独自ルールを作り上げる。2017年、億り人に。 平成24年より投資助言・代理業を取得。現在、著者自身が実践してきた株で成功するための投資ノウハウや有望株情報を会員向けに提供しているかたわら、ブログやコラム等の執筆活動も行う。 2014年まぐまぐマネー大賞を受賞。読者数3万人。雑誌等のメディア掲載歴多数。 主な著書に『10万円から始める高配当株投資術』(あさ出版)『「小売お宝株」だけで1億円儲ける法』(日本実業出版社)
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今週のおすすめ!メルマガ3選

右肩下がりの時代だからこそ、人の裏行く考えを【平成進化論】
【読者数12万人超・日刊配信5,000日継続の超・定番&まぐまぐ殿堂入りメルマガ】 ベストセラー「仕事は、かけ算。」をはじめとするビジネス書の著者であり、複数の高収益企業を経営、ベンチャー企業23社への投資家としての顔も持つ鮒谷周史の、気楽に読めて、すぐに役立つビジネスエッセイ。 創刊以来14年間、一日も欠かさず日刊配信。大勢の読者さんから支持されてきた定番メルマガ。 経験に裏打ちされた、ビジネスで即、結果を出すためのコミュニケーション、営業、マーケティング、投資、起業、経営、キャリア論など、盛り沢山のコンテンツ。
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●人生を変える方法【人生をよりよくしたい人必見!誰にでもできる方法を組み合わせました。】
■「人生(自分)の何かを変えたい!」と思ってる方、まずは最初の1分から始めましょう!今日は残っている人生の一番初めの日です。今、「人生を変える方法」を知ることで、一番長くこの方法を使っていくことができます。コーチングで15年間実践を続けてきている方法なので、自信をもってお勧めできます。「人生を良くしたい!」と思うのは人として当然のこと。でも、忙しい生活の中で人生(自分)を変えることって諦めてしまいがちですよね。誰かに変える方法を教えて欲しいけど、その方法を知っている人は少ない。だからこそ・・・。
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サラリーマンで年収1000万円を目指せ。
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