田中優の“持続する志”

第676号:「水俣病」のメカニズムで「トリチウム」が世界を汚染する

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田中優の“持続する志”

優さんメルマガ 第676号
2018.9.25発行
http://www.mag2.com/m/0000251633.html

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□◆ 田中 優 より ◇■□


『「水俣病」のメカニズムで「トリチウム」が世界を汚染する 』
 

▼なぜ「トリチウム汚染水」から「トリチウムを含む処理水」になったか


 現在、「福島第一原発・汚染水タンク撤去後の放射性物質トリチウムを含む処
理水の取扱いに関する説明・公聴会」が開催された。そのタイトルは「トリチウ
ム汚染水」ではなく「トリチウムを含む処理水」となったのか。要はトリチウム
以外にも取れていない汚染が含まれていたことがばれたからだ。


 特に問題なのは放射性ヨウ素129で、この数は陽子と中性子の合計で、陽子の数
が同じ数のものが同じ「ヨウ素」という物質名になるので、ヨウ素129はそれ以外
の中性子が76個ということで、ヨウ素131なら中性子の数が78個になる。

 今、福島で甲状腺の集団検査をしているのは、放射性ヨウ素が甲状腺に溜まっ
て甲状腺がんや障害を起こす可能性があるためだ。そのうちこれまで調べてきた
ヨウ素131は、その半分がキセノンの放射線を出さない安定した物質になる(こ
の半分になる期間を「半減期」という)のに8日だ。だから80日経てば1024分の
1に減る。

 ところが今回の福島の汚染水で問題になっているヨウ素129は、半減期が1700
万年もかかるのだ。1024分の1に減るまでには1億7000千万年もかかるのだ。
考えてもらえばわかる通り、人間の生存から考えたら永遠になくならないことに
なる。将来の人類や他の生物全部を含めて、「今流していいのかどうか」を問わ
れているのだ。

 ヨウ素は人間を含めて他の動物にとっても必須なもので、しかも自然界には
「放射性の」ヨウ素などなかったから生物は気づかずに必死に集める。ヒトな
ら五か月の胎児期から成長のためにヨウ素を集めるのだ。


 このヨウ素が甲状腺に集められて成長ホルモンを作る。だから甲状腺がんを作
ってしまうから、ヨウ素131を気にして甲状腺の集団検診が始まった。甲状腺に
対する被害はヨウ素129でも同じだから、これからは世界中で半永久的に検診が
必要になってしまう。


 ところがその超問題で超危険なヨウ素129を含めて海に放出しようとしている
のだ。「アルプス」という名の浄化装置はトリチウム以外の放射線核種は除去
できるということになっていたのだが、ヨウ素129を含めて基準を超える汚染水
を二年前から放出をしている。どうやらフィルターの交換頻度を下げたせいら
しい。規制委員会は水に希釈すれば問題ないとか言い出し、挙句には「フィル
ターの交換頻度をあげれば対処できる」などと言って、規制するつもりがない。


 これが世界中にばら撒かれれば、たまたま摂取してしまった人に被害をもたら
すことになる。規制委員会とは名ばかりで、「汚染許容委員会」なのだ。トリチ
ウム以外にもそんな危険なの核種も垂れ流すことになったので、「トリチウムを
含む処理水」と名が変わった。しかし対策だけが変わりばえがない。ただ希釈し
て海に垂れ流すのだ。
 

 これまでもトリチウムの方は、世界中で「除去できないし生物によって濃縮さ
れないから」ということで流していた。しかし1990年頃から研究が進み、「生物
濃縮はされないから希釈すれば流しても大丈夫」と言われてきたのがそうではな
いことがわかってきた。


 「水俣病」で問題だったのは水銀だが、正しく言うと「メチル水銀」という有
機化した水銀だった。水銀が有機物と結びついて「メチル水銀」という有機水銀
になることで、飛躍的に有害性が高くなって被害をもたらしたのだ。


 実は同じように有機物と結びつくことで、トリチウムも生物が濃縮するように
なることが明らかになった。「薄めて流せば大丈夫」と言われていたものが、自
然界の生物たちが濃縮することによって有害性が飛躍的に高くなることが明らか
になったのだ。

 そうなると水俣病を経験した私たち日本人ににとってみれば、「トリチウムは
自然界で有機化するのだから、流してはいけない」となるはずだった。ところが
多くの人々が知らないことをいいことに、これから放流しようとしているのだ。
それに対して漁業者団体は理解を示しつつあると報道されたが、公聴会での参考
人の人々はみな反対だった。


 世界の生物たち、未来の地球に生きる者たちにとっては、「理解を示す」こと
などできない。人類の歴史より長い期間を過ぎてもヨウ素129は残り続けてしまう。
その選択を世界のほんの一部の者だけで決めていいはずがない。
 

 それに比べるならトリチウムの半減期12.9年など短いものだ。トリチウムを考
えるだけなら129年間保存してから放流する方法を考えればいい。その間に放射
能は千分の一以下に下がるのだから。そして永遠に残り続けるヨウ素129を考え
るなら、きちんと浄化装置のフィルターを使って集めて、絶対に流さないように
管理すべきだ。


 このままでは「公聴会」の後には、垂れ流しが決まってしまう。地球上の生き
とし生けるものの未来が決まってしまうのだ。従来の政治なら、今の利益の調整
だけでいい。しかし少なくとも環境を語るのであれば、遠くに住む人たちや未来
に暮らすことになる人々の利益も考えられなければ意味ないだろう。


 確かにただ垂れ流すだけなら対策費は安い。しかしそうして「水俣病」が起こ
った。それを繰り返すような事態を繰り返すのか。水銀は「メチル水銀」になっ
てはるかに甚大な被害を与えた。トリチウムも同じなのだ。今や私たちはそのこ
とを知ってから判断すべきだろう。私はこんなことの「共犯者」とされてしまう
ような社会に属していたくない。しかし共犯者にならないためには、社会を変え
なければ解決できない。


 「誠実さ」の問題だと思う。今回の処理水には昨年から基準を超えるヨウ素129
などの汚染物質が含まれている。そのことが報道されたのは今年8月19日になっ
てからだ。青森県六ケ所村にある再処理工場の冷却水のつなぎに割れがあり、
なんと18年間もチェックされていなかった事がわかった。東海村では再処理工場
でプルトニウム汚染事故が発生していたことがわかった。この事態は「アンダー
コントロール」どころではない。


 まずはこうした問題のあることを知って、みんなで共有してほしい。
そして多くの人が声を上げるとき、社会は変わり始めるのだろう。
多くの人たちと共に社会を変えていきたい。
 


(川崎市職員労働組合様へ寄稿したものを、好意を得て転載しています。)



☆こちらもご参考ください☆

図やグラフを用いてよりわかりやすく解説しています↓

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