76 通病 世人の通病、事に先んじては体怠り神昏し。事に臨んでは手忙しく脚乱る。事を既えては意散じて心安んず。これ事の賊なり。(明・呂新吾『呻吟語』) 誠によく穿っている。平生に修養を積まねば結局みなこういうことで終ってしまう。これではいくら経験を積んでも何にもならない。まして大事は成せそうにもない。 政策は事件に先立たねばならぬ。事件が起ってから、政策がその後を逐う始末では、結局「手忙しく脚乱る」で、混乱を免れない。日本も御多分にもれず、予め用意することなく、いつも問題が起ってから大騒ぎするばかりで、ろくな始末もつかない。(安岡正泰 先生)