鶴原顕央の【映画批評と物語構成論】

映画批評0428「チャッピー」

  
  
  
┏ 映画批評と物語構成論0428 ┏┏┏┏┏┏┏┏


 『チャッピー』 CHAPPIE (15)
   http://www.chappie-movie.jp
   http://www.imdb.com/title/tt1823672/


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 ニール・ブロムカンプ監督の出身地である南アフリカを舞台にした、警察ロ
ボットの自我と顛末。SFアクションコメディ映画。
 ロボットのデザインは米映画『ショート・サーキット』(86)と士郎正宗の漫画
『アップルシード』を想起させるが、物語自体は新旧『ロボコップ』(87・14)
の逆をゆく。『ロボコップ』は「無機質ロボットは市民に威圧感を与えるから、
瀕死の警官をサイボーグ化して、彼をヒーローロボとして管轄に導入しよう」と
する話。しかし「人間的思考のせいで反応が遅れるから、薬物投与して人間的要
素を抜いてしまおうとする」──それがリメイク版『ロボコップ』のドラマの核
でもあった。いっぽう本作は無機質ロボットが問題なく機能している社会を前提
としている。
 とにもかくにもここ最近はAIを題材にした映画が多い。スパイク・ジョーンズ
監督の『her/世界でひとつの彼女』(13)、ジョニー・デップ主演の『トランセ
ンデンス』(14)。そしてドローンは『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソル
ジャー』(14)や、それこそ新『ロボコップ』。現実の戦場や市街地でドローンが
稼働し、物議をかもしているから時事的問題なのだろう。さらに『アベンジャー
ズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(15)ではAIとドローンの両方を扱っている。
 AIとドローンが、いまのアメリカ映画の主流の題材なのだ。
 本作もその時流に乗っているが、ドローンの存在を否定していない。時事問題
を観客に提起するのではなく、むしろ単純にブロムカンプ監督の過去の短編3作
をベースにしただけだと言ってもいい。
 本作の原型となった"Tetra Vaal"(04) https://youtu.be/VTnxP7e7-YA
 学習型アンドロイド"Adicolor Yellow"(06) https://youtu.be/Jmd8BDiB-qU
 ウサ耳ロボットが職場で働く"Tempbot"(06) https://vimeo.com/76179487
 特に"Tempbot"。興奮すると頭の冷却ファンが高速回転する。かなり面白い。
台詞ではなく、仕草で表現しようという、要するにチャップリンやキートンのサ
イレント映画の趣向を人間型ロボットにやらせている。
 ほぼ喋らない=仕草の、これらのジェスチャーロボットを短編でやっていたに
も関わらず、本作のロボット「チャッピー」は饒舌だ。ほぼ喋らないAIロボット
のCGアニメ『ウォーリー』(08)が先に長編劇場公開されたから類似を避けたのか
もしれない。さらに本作は「自我」を「移植」するというお題をかかげているか
ら、ロボットが主体的に喋ったほうがいいと考えたのかもしれない。結果として
短編とは方向性がまるで異なる。

 そしてニール・ブロムカンプ監督の今作までの長編3作はすべて「主人公が肉
体を変化・変貌」させられている。本人の意志と関係なく肉体が変貌していく。
最初の『第9地区』(09)では主人公の肉体が有無を言わさずに「宇宙人化」し、
つづく『エリジウム』(13)ではマット・デイモン演じる主人公の肉体が(これも
有無を言わさずに)改造させられ、倒された敵側もインスタント再生機で己の肉
体を「修復」。『第9地区』では主人公一人だったが、長編2作目の『エリジウ
ム』では二人の肉体を改変。そして今作では三人が「変貌」する。一人ずつ増や
している。演出家としてのスキルアップを、キャラクター数を一人ずつ増やすこ
とで実践して、証明しているのだろう。

 肉体の変貌、異物との融合。
 これがこの監督の興味の対象なのだ。
 次回作として挙がった新『エイリアン』。コンセプト画で主人公リプリーがエ
イリアンと合体している※。なるほど。当然だと判る。
 ※ http://cdn.hitfix.com/photos/5910395/Blomkamp_Alien_article_article_story_large.jpg

『第9地区』で移民の問題を、『エリジウム』で貧困層との格差を、そして本作
で社会犯罪と暴動鎮圧を。設定としてこれらを用意するが、結局は主人公の心身
の行方のほうに関心が集中していく。真に社会問題に興味があるのであれば警察
上層部との軋轢を、あるいはロボット開発会社女社長との駆け引きをまるで母子
関係のようにして愛憎劇として描くのだろうが、本作で社長を演じるシガニー・
ウィーバーは背中を見せて走って逃げてそのままフェイドアウト。その意味にお
いて本作は『ロボコップ』と主旨が対極。組織と闘う個人の話にならないのだ。
 キャラクターの肉体の変化以外に本当に興味がないのだろう。
 しかし肉体の変化のことならば、ある種強引な、本人の意志を問わずに臓器移
植するような暴走気味なテンション(=パッションとも言える)が本作にはあ
る。そしてこの強引なテンションは過去2作と変わらぬ、衰えぬテンションであ
る。


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    次週も新作映画を検証します!


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(c)Tsuruhara Akihiro. All rights reserved. 2015.

 
 
 


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発行周期: 毎週月曜昼配信(祝日の場合は翌日) 最新号:  2019/02/12 部数:  141部

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