ひろえのキャズ便り

「ひろえのキャズ便り4月20日号」

ひろえのキャズ便り2018年04月20日号です。

 彫刻家の金沢さんと、音楽家である浦さんのコラボレーションによる展覧会
『Scores』。ある規則のもとにアルミの角パイプにスリットを入れた金沢さんの
作品があり、彼の彫刻の面を楽譜に見立てた浦さんによる音楽も展示に関連付け
て再生されている……と書いてしまうと、BGMが流れる彫刻展示みたいでよろ
しくないのだけれど、説明としてはわかりやすいと思うのでお許し願いたい。
 実際のところ、もれなく耳に入ってくる浦さんの電子音の存在感は絶大で、空
間を満たす音の威力はあなどれないといった印象。というか、単なるBGMだっ
てその場の気分を左右するわけだから、音のクオリティの問題よりも、そもそも
彫刻に音がともなうこと自体、どうなんだろう(?)と思わないでもない。もっ
とも、金沢さんによると「『Scores』の音楽は彫刻の分身、あるいは彫刻の影の
ような存在」であり、「(浦浩幸とのコラボレーションは)彫刻とその構造を基
にした音楽を同居させ、一体化した空間が生み出せるのか探る試み」なんだとか。
彫刻の音をその刻み目で聴きながら、音楽を捉える耳で彫刻をみる。そんな往還
を繰り返すなかで、みるでもなく聴くでもない感覚が研ぎ澄まされていくのかも
しれない……とは思うけれど、それこそ鑑賞者の力量次第の実験といえるかもし
れない。
 ここで、このたびの『Scores』の前奏曲ともいえそうな過去の金沢さんの作品、
『「層-8枚の板による」120のヴァリエーション』(2013年12月、キャ
ズ)を振り返っておきたいと思う。これは長方形の鉄の板8枚を、あるルールで
もって重ねることで120個のヴァリエーションとして展開し並べるというもの
で、この時も、各造形物を一音として制作された音楽が展示空間に流れていたと
記憶している。制作のための単純なルールが繰り返された結果として、各ピース
の集積が自ずと「楽譜」(scores)になるというところまでは今回の『Scores』
と同じなのだが、『120のヴァリエーション』は、素材が鉄であるためか「も
の」としての存在感がありすぎて、目で音を聴くといった軽やかさを促しがたい
ところがあった。一方、『Scores』は、なめらかなアルミの面の「刻み」(scores)
が記号の立体物のようでもあり、「scores」(楽譜)というタイトル通りの彫刻
ではないかと思われる。 もっとも、「刻み」であれ「楽譜」であれ、結果とし
て残る「scores」は目的ではなく、そこにいたるまでの行為こそが重要であるこ
とを見逃すわけにはいかないだろう。というのも、素材こそ違うものの、「単純
なシステムや技術的なアプローチといった造形上の方法論は、私が自分の限界を
越え、鉄という素材の中で自由になるための約束ごとである」注1)という金沢
さんの、10数年を経ても変わらないその姿勢こそが問題なわけだから。学生時
代に鍛金を学び、金属に形を与えることを徹底的に体で覚えた金沢さん。その彼
が、造形物があらわれるところで終わる彫刻を放棄し、ひたすらある法則にのっ
とって制作し続けてきた、そのあらわれとしての『Scores』。彼が自らに課す幾
何学的なルールは、なにより無限に繰り返し得るあたりが宇宙を表現する数式の
ようだし、存在物よりもむしろそれが在るための枠組みがすべてといわんばかり
の彼の行為は、全宇宙のことわりを創造した(と豪語する?)神のふるまいに似
てやしないだろうか。そう、あることの不思議どころか、われわれが住まうこの
空間のはじまりさえ引き受けてしまう「それ」に……。最後に、それでも存在す
る「もの」としての『Scores』の、その「scores」(刻み)の部分は「空」(くう)
であることを思い起こしておきたい。

注1)「はがねの変相―金沢健一の仕事」(2002年、川崎市岡本太郎美術館)
のカタログより。

__展覧会のご案内________________________________________________________

CAS ACTION COMMITTEE
Scores 金沢健一 (彫刻) + 浦 裕幸 (音楽)

http://cas.or.jp/2018/KANAZAWA/index.html

■会期 2018年4月7日(土)~4月21日(土) 14:00-19:00 月・木休み

パフォーマンス/トーク 金沢健一/浦裕幸:4月21日(土)16:00~(参加費¥500)

__次の展覧会のご案内____________________________________________________

CAS ACTION COMMITTEE
笹岡敬展「Luminous2018」

http://cas.or.jp/2018/SASAOKA/index.html

■会期 2018年5月19日(土)~6月2日(土) 14:00-19:00 火・水休み

オープニングレセプション:5月19日(土)17:00~¥500(1ドリンク付き)
アーティストトーク(鼎談):6月2日(土)16:00~(参加費¥500) 
             大野浩志(美術家)、山崎亨(美術家)、笹岡敬

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特定非営利活動法人キャズ(CAS)
大阪市浪速区元町1丁目2番25号 
A.I.R.1963 3階
TEL/FAX 06-6647-5088
Web http://cas.or.jp/
E-mail info@cas.or.jp
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ひろえのキャズ便り

発行周期: 不定期 最新号:  2018/12/13 部数:  106部

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