ひろえのキャズ便り

「ひろえのキャズ便り2017年02月23日号」

ひろえのキャズ便り2017年02月23日号です。

 「時間は過去から未来に流れるだけのものではなく、(認識は)逆戻りしたり
繰り返されたりするなかで形成していくものではないか」(笹岡敬)。そんな、
物理学であり哲学でもあるような仮説のもと、展覧会と称して時間にまつわる実
験をやっているようでもあった、昨年の笹岡敬展『TIMES 2016』。そして、その
進化形ともいえるこのたびの『TIMES 2017』は、同じ二つの映像が微妙なずれと
ともに流れ続けるという手法こそ変わらないものの、前作にも増して冷徹な科学
者を思わせるまなざしのもと、「時間」と呼ばれるものをただそのものとして提
示し、そのいわく言いがたいところに思い至らせてくれる作品です。
 おもえば、「WATER」と題する作品では水に、「Reflex」や「Luminous」のシリー
ズでは光に、それ以上でも以下でもない存在としてのあらわれを与えてきた笹岡
さん。そして、このたび2作目が発表された「TIMES」では、水や光よりもさらに
定義しがたい「時間」を意識化し、その名付けがたさに応答せよと鑑賞者に迫っ
てくるようなところがあります。展示室に投影される映像は、そのこころみのた
めの、いわば時間のサンプリング(?)だと思われますが、前作は徹底的にストー
リー性を剥奪された風景の連なりだったところが、新作では、ついこの間までキャ
ズで開催されていたグループ展の作品群を、回転し続けるビデオカメラでスキャ
ニングするように撮影したものだったりします。しかも、その映像がループし続
けるのは、かつてその作品たちがあったのと同じ部屋の壁。そうして、かつて確
かにそこで行われた展覧会は、仮想空間のなかで永遠の命を獲得したかのように
もみえるのですが、ホワイトキューブという空間が本来的に持っている特権的な
性格(神格化の装置?)を考えると、永遠のなかに永遠が取り込まれたようなそ
の入れ子構造に、もはやいかなる方向にも時間軸を引けない奇妙な世界をのぞい
てしまったような気分にさせられたりもします。その一方で、まるで時間から解
放されたような映像の繰り返しは、静けさをたたえた見かけとはうらはらに、二
つの映像の微妙なずれによって、絶え間ない異議申し立てよろしく、鑑賞者をな
んとも落ち着かない気分にさせるところがあるんですね。われわれが持続してい
ると信じて疑わない時間の連なり、「いま」といった瞬間に「過去」になり、延々
とその差異をなぞり続けるしかない無限の運動を、脅迫的に感じさせるというか…
…。
 そんな、意識の微分化ともいえそうな体験は、ひとを実存的な位相に閉じ込め
もすれば、非人称の外部に開かれる位置に立たせもするわけですが、いずれにせ
よ、お互いにそれと確認しあえる共通のことばを見出しにくいこの手の体験は、
共通感覚どころか個人的な直観さえ無効化してしまい、なんだかもやもやした気
分のうちに立ち止まらせるところがあります。そして、いまさらながらに思うん
ですね。なんなんだろう、「時間」って……。ともあれ、記憶のなかでいまが過
去とつながってしまう既視感あたりが、かろうじて言語化できる一例だったりす
るでしょうか。いいかえるなら、有限のなかに顔のない顔をのぞかせる永遠(?)、
あるいは、現在地をさだめられないほどに広がる無限地図(!?)とか……こと
ばにすると論理矛盾でしかない「ありえないもの、あります」的な世界が、この
(こころの?)宇宙には存在するようです。

___展覧会のご案内_______________________________________________________

笹岡敬展

http://cas.or.jp/2017/SASAOKA/index.html

■会期 2017年2月11日(土)~25日(土) 14:00-19:00 月・木休み

●アーティストトーク:2月25日(土)16:00~(参加費¥500) 
 聞き手:実冬(アートエッセイスト)、中西 美穂(アートマネジメント研究)
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特定非営利活動法人キャズ(CAS)
大阪市浪速区元町1丁目2番25号
A.I.R.1963 3階
TEL/FAX 06-6647-5088
Web http://cas.or.jp/
E-mail mailto:info@cas.or.jp
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ひろえのキャズ便り

発行周期: 不定期 最新号:  2018/12/13 部数:  109部

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