ひろえのキャズ便り

「ひろえのキャズ便り2016年10月06日号」

ひろえのキャズ便り2016年10月06日号です。

 YouTubeで公開されている映像だったり、作家が日々Twitterにアップしてきた
写真だったりして、作品と非作品とのはざまに迷い込んだような、宙づり感満載
のグループ展、『アウラの行方』。ベンヤミンが論じた複製技術時代を経て、ネッ
ト空間の一般化で写真も映像も個人が気軽に公開できるようになり、まさに大量
生産時代の表現に席巻されつつあるといえそうな昨今。しかるに、一回性も唯一
性もないがゆえに(ベンヤミン的には)アウラがない、そんな超今日的な作品た
ちを、あえて美術の制度のなかに置いてみたらどうなるか?という実験的な試み
でもあるようですが、そんな展覧会の意図はともかく、個々の作品についてみて
みると……。
 まずは、作家自らが作品に乗って旅する映像が、壁いっぱいにロードムービー
的に映し出される國府理さんの作品『Natural Powered Vehicle』。自然の力を取
り込むべく改造され、天井を突き抜けたヨットの帆をはためかせて走る乗用車……
というか、走っているのは國府さんの作ったオブジェなのですが、かつて映像と
ともに展示されたこともあるというそのモノ自体は、どういう事情からか現在は
存在しないようです。ともあれ、映像が作品であるのなら、その撮影のための大
道具(であったオブジェ?)は、はなから重要でなかったのかもしれず、なんに
せよ、映像をYouTubeで無料公開すること自体、作品としての立ち位置を放棄する
素振りのようでもあってみれば、オブジェのアウラはあらかじめ失われて当然だっ
たのかもしれません。それにしても、あの改造車って道路交通法に引っかからな
かったのか!?なんて下世話なことを思うにつけ、作家が形にしようとした夢の
世界をのぞくには、YouTubeののぞき窓のようなサイズがふさわしいのかもしれな
いとも思ってみたり……。
 ひるがえって、というか國府作品の向かい側の壁の、両手のひらに収まるほど
のモニターに映し出されるのが、冨井大裕さんの『今日の彫刻』。冨井さんが「こ
れぞ彫刻!」と感じた情景が、日々、カメラの目で切り取られ、作家の日記のよ
うにTwitterにアップされているシリーズです。今回は、それらをまとめてスライ
ドショー的にみることができるのですが、冨井さんがたまたまビビッときた彫刻
的風景(?)を、ひょいっとつまみ取ったような写真が連なっていて、デジカメ
の手軽さと、撮った次の瞬間にはツイートしはじめている、そんな知覚と身体運
動との軽やかな共同作業的な印象もあり、まさしくSNS時代の表現といえそうな雰
囲気の作品です。とはいえ、「彫刻」といわれると疑問に思ってしまうのは、撮
られた対象が、存在としてはことごとくあやういものであるということ。たとえ
ば、壁に残されたしみだったり、道ばたの石ころだったり、ときに空に浮かぶ雲
だったりするそれらは、はたして彫刻なのか?……そんな根本的な問いに加えて、
もともとTwitterのコンテンツであることも引っかかるのですが、フレームに囲ま
れた小さな世界のなかで、彫刻的なエッセンス(みたいなもの?)があらわれて
いるのは確かなようです。というか、Twitterではなくモニターで連続鑑賞できる
という意味では、疑いなく作品化しているのかもしれません。ならば特注のモニ
ターが彫刻作品なのか?と問い始めると、わけがわからなくなりますが……。
 そして最後に、なにはともあれ物質としては存在する、末永史尚さんの『掲示』。
美術館の情報コーナーあたりにある、各種の展覧会ポスターが貼ってある掲示板
をカメラで撮影し、大きく引き伸ばしてプリントしたものを再びポスターのよう
に掲示するという作品です。といっても、ポスターが一枚ずつ複製されているの
ではなく、その多くは複数のポスターが付き合わされているところをフォーカス
したもので、なんとなくいいかげんに貼られて浮き上がっているところとか、押
しピンの色や形がまちまちだったりするところが、かなり立体的に映り込んでい
る……とそのもの自体を説明しても、「それがなんなの?」って感じですが、今
日のカメラの機能や出力技術の向上抜きには語れない、そんな作品であることは
確かでしょうか。そしてそこには、なにより新しい技術によって獲得された、わ
れわれ自身のまなざしがあらわれているようにも思うのですが、そのあたりがも
っと明確に感じられるのが2点の油画、マーク・ロスコとバーネット・ニューマ
ンを画像検索し、それぞれの代表作がモニター画面に並んでいるさまを描いた作
品です。タテ、ヨコをそろえて絵画が整列している感じは、ちょうど壁や掲示板
のポスターと同じだったりするのですが、印刷物として存在したポスターがいっ
たん写真のデータになったのとは逆に、検索画面の画像として出合われた絵画は、
ふたたび絵具の手触りを与えられて……といった具合に、新しい技術が生み出し
た無限に増殖可能な世界は、ここでも奇妙にねじれて、その場所なき地平と現実
との接続をこころみているかのようです。そんな、えも言われぬひそやかな感じ
もまた、失われたアウラの無の存在感のようなものなのかもしれませんが、個人
的には、必然的にアウラが失われる時代の行方を、(ベンヤミンにならって)あ
くまでも政治的に考え続けていきたいと思っています。

___展覧会のご案内_______________________________________________________

アウラの行方

國府 理、末永 史尚、冨井 大裕

キュレーション:藤井 匡(東京造形大学 准教授)
協力:アートコートギャラリー、YUMIKO CHIBA ASSOCIATES、Maki Fine Arts

http://cas.or.jp/2016/Aura/

■会期 2016年9月17日(土)~10月8日(土) 14:00-19:00 月・木 休み

●クロージングトーク:10月8日(土)16:00~ ¥500(1ドリンク付き)
    小林 公(兵庫県立美術館 学芸員)
    牧口 千夏(京都国立近代美術館 主任研究員)
    藤井 匡(東京造形大学 准教授)
    笹岡 敬(アーティスト、CAS 運営委員長)


___次の展覧会のご案内___________________________________________________

Junglim Han展

http://cas.or.jp/2016/Han/index.html

■会期 2016年10月29日(土)~11月12日(土) 14:00-19:00 月・木 休み

●アーティストトーク 聞き手 平松伸之(美術家) : 10月29日(土)16:00~ 
                                       (参加費¥500 レセプションを含む)

●オープニングレセプション: 10月29日(土)17:00~¥500(1ドリンク付き)
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特定非営利活動法人キャズ(CAS)
大阪市浪速区元町1丁目2番25号
A.I.R.1963 3階
TEL/FAX 06-6647-5088
Web http://cas.or.jp/
E-mail info@cas.or.jp
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ひろえのキャズ便り

発行周期: 不定期 最新号:  2018/12/13 部数:  109部

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