ひろえのキャズ便り

「ひろえのキャズ便り10月24日号」

ひろえのキャズ便り10月24日号です。

 「先のところに釘かなにかを打ちつけてある角材を、ミノルさんが教室みたい
なところで思いっきり投げつけてるの。それをちょっと離れたところから見てた
のね。またなんて危ないことしてるんだろうってハラハラしながら……」。展覧
会初日、キャズの壁に素焼きの皿を数十枚投げつけるというパフォーマンスを敢
行したみ荒木みどりさんが、その着想の元になった夢のはなしをしてくださいま
した。「ホントはパフォーマンスなんてしたくないのよ」と、まるでヨシダミノ
ルにそそのかされての行為だったといわんばかりのみどりさん。いや、ホントに
そうなのかもしれませんね。そろそろこれやっとく?みたいな感じで、ミノルさ
んが夢のなかでささやいたのかもしれません。数年前にミノルさんが他界してか
らも、こんなふうに夢で交信しているお二人なんでしょうか。究極の距離に隔て
られながら、夢という超プライベートな空間でつながっているんだとしたら……
なんだかロマンチックですね。
 そういえば、みどりさんの映像作品の語りにも、距離をめぐるこんなくだりが
含まれていました。

(きらめくセーヌの)その流れのずっと先のほうにエッフェル塔が見える。
 ちょうどいい距離感。
 マスキュランのエッフェルとフェミナンのミラボー。
 どちらも19世紀の鉄の建造物。
 絶妙な距離を保ちながら呼応しあっている。
 すばらしい。(『水晶の行方 パリ編』より)

 この映像には、小さな手のひらサイズの水晶をセーヌの流れに投じるべく、エッ
フェル塔を背に、ひとりミラボー橋の上に立つみどりさんの姿があります。この
水晶は、『水晶の舟』として出品されたこともある舟形をしたふたつの水晶のう
ちのひとつで、その片われのほうは、このパリ行きの数カ月後、ミノルさんの棺
のなかにこっそりおさめられたんだとか。そして、展覧会初日の皿を投げつける
パフォーマンスは、このふたつの水晶をめぐる一連のエピソードがつづられた『水
晶の行方 炎編』を掲げた壁に向けて行われたのでした。「よい心地で彼方の岸
まで辿り着ければいいのに、と思った」(『水晶の行方 炎編』より)とその文
章は締めくくられていますが、いまもその彼方へ届けたい思いがつのる日々なの
かもしれません。
 ところで、距離といえば、展覧会前から妙に気になっていることがひとつあり
ます。ミノルさん、みどりさんのご子息である省念さんが、みどりさんを名前で
呼んでおられたことが……パフォーマンスの打ち合わせの席で、たまたまそうい
う気分だったのかもしれませんが、名前で呼び合うだけで親子の間にちょっとし
た距離ができるというか、個人がまさに「個」として立っている感じがして、な
んだかステキに思えたんですね。もっといえば、そこには、親密であるがゆえに
排他的でもあるような関係ではなく、限りなく社会的なものに親和性がある、そ
んな開かれた家族みたいなものがあるようにも思ったりなんかして……そう、三
十数年前、ミノルさんとみどりさんの出会いからはじまったこの家族は、そんな
家族の姿そのものを作品として意識してきたわけですね。『現代家族』という名
で……。
 「現代の家族」といった一般性には決して回収されない強度をもちながら、な
ぜか固有名としては違和感あり過ぎな「現代家族」。それは、私的なものと公的
なものとの間に現れをもつに至った家族だけにやどる、ある名付けがたい精神み
たいなものなのかもしれません。エッフェル塔とミラボー橋のある風景にもたと
えられる、ある関係の美学でもってそこにあるような……。
 楽しみなのは、本展最終日に『現代家族パフォーマンス』なるものが行われる
こと。そう、みどりさん、省念さんと(その弟の)朝麻さんによって─ヨシダミ
ノル亡きいま、インスタレーションから思いめぐらせるほかはなかった『荒木み
どりM←→mヨシダミノル』展の「M←→m」の部分を、ライブで感じることができ
る貴重なパフォーマンスになりそうです。

__展覧会のご案内________________________________________________________

荒木みどりM←→mヨシダミノル 展

http://cas.or.jp/2013/ARAKI_YOSHIDA/index.html

キュレーション:長谷川新(キュレーター)
コーディネート:中前寛文(アーティスト)

■会期 2013年9月28日(土)~10月26日(土) 14:00-19:00 水・木休み

現代家族パフォーマンス(荒木みどり、吉田省念、吉田朝麻):
 10月26日(土)17:00~¥500(満員の場合は入場をお断りする場合があります)

__次の展覧会のご案内____________________________________________________

CAS ACTION COMMITTEE
青木万樹子展 Point

http://cas.or.jp/2013/AOKI/index.html

■会期 2013年11月2日(土)~11月23日(土) 14:00-19:00 水・木休み

オープニングレセプション: 11月2日(土)17:00~¥500(1ドリンク付き)
アーティストトーク: 11月9日(土)16:00~(参加費¥500)
                     聞き手 室井絵里(キュレーター)

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特定非営利活動法人キャズ(CAS)
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TEL/FAX 06-6647-5088
Web http://cas.or.jp/
E-mail info@cas.or.jp
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ひろえのキャズ便り

発行周期: 不定期 最新号:  2018/12/13 部数:  109部

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