ひろえのキャズ便り

「ひろえのキャズ便り10月10日号」

ひろえのキャズ便り10月10日号です。

 「タン・ルイ展」の初日、名刺をわたしながら自己紹介したときのこと。「こ
れで『ヒロエ』さんなんですか!?」と、タンさんにびっくりされてしまいまし
た。あまりに驚くので、私も自分の名前の文字がなんだか不思議なものに思えて
きたのですが、なんでも私の名前「ひろえ(宏栄)」は、タンさんの感覚では男
性の名前なんだそうです。そういえば、昔、台湾からの留学生のかたに同じこと
を言われたことがあったっけ……同じ文字を別の仕方でながめる人たちがいると
思うだけで、なんだか不思議な気がします。別の構造をもった言語で切り分けら
れた世界は、私たちがみている世界とは異なるはずですから-外国人アーティス
トの作品をみるときのワクワク、ドキドキは、このあたりからくるのかもしれま
せん。
 今回の展覧会タイトル「籠児 Rouji」-不思議なひびきを持つこのことばに
はり付いている、なんだかよくわからない微妙なニュアンスを知りたくて、タン
さんご自身にうかがってみました。「『籠』は、えっと~『cage』、そう
『かご?』ね、『児』は……」「『child』ですか?」「そう、『child』!」。
流暢に日本語を話されるタンさんですが、自分の核の部分にあるものについては、
別の言語で考えているのかもしれません。中国語とか、英語とか、たぶんマレー
語とか……そして、「籠児」は、日本でいう「飼い犬」の概念のない文化に育っ
たタンさんによって発見された、「私たち」のスタイルなのです。「ジョン」と
か「ぽち」といった名前で呼びかけ、首輪をつけて散歩につれていき、健康管理
にも気をつけて……家族同様に室内で飼われている犬たちなんか、たぶん自分を
犬だと思ってないな、こいつ!みたいな表情でこちらを見つめてきますが、マレー
シアの「犬」は、近所をうろうろしている犬たちに縁を感じた人(?)が、その
つどきまぐれに餌を与えている、そんな存在なのだそうです。
 この「籠児」に感じた驚きを、タンさんは、日本で出合ったもうひとつの不思
議、「ダンボールの箱」で表現しています。ダンボールといってもいろいろあり
ますが、タンさんの心にひっかかったダンボール箱は、コンビニやスーパーの片
隅に積み上げられた、ペットボトルや缶飲料の流通に使用する小ぶりの箱だった
ようです。こんなふうに捨てられるのを待つだけの段ボール箱見たことない!と
いう驚きと、打ち捨てられた野良犬とは違う「犬」の存在に触発されて誕生した、
機械仕かけで動く5匹(?)の犬たち。手をたたくとその音に反応してこちらに
向かってくるその姿は、もう犬でもダンボールでもない、なんとも名づけ難いも
のではあるのですが、一応、そのうちの4匹はまとめて「Bobby」、特別仕様の1
匹は「Lou Wong」と名前がついているのも、なんとなく笑えます。
 ときにダンボール箱を高く積み上げられてできた壁にぶつかったり、お互いに
衝突したりしながらも、しばし見る人のお相手をしてくれる作品の犬たち。裏返
しにされ、その本来の機能を失うことで、人間の欲望の果てしなさを逃れた彼ら
と、ただそこにあるとしか言えないダンボール箱の壁の奇妙な存在感。そして、
その壁に仕切られ、いつもと異なる表情をみせるキャズ空間-たぶん、いや確実
に、いまそこは見慣れぬやつらが住まう「どこでもない場所」になっているよう
な気がしています。

__展覧会のご案内________________________________________________________

タン・ルイ展 「籠児 ロウジ」
キュレーター:岡地 史(インディペンデントキュレーター)
http://cas.or.jp/2009/Tan/

■会期
2009年10月3日(土)~11月7日(土)
1:00pm-7:00pm 水、木、金、祝日休み <= お休みが変わりました

●アーティストトーク:11月7日(土) 16時~ (参加費500円)

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大阪市浪速区元町1丁目2番25号 
A.I.R.1963 3階
TEL/FAX 06-6647-5088
Web http://cas.or.jp/
E-mail info@cas.or.jp
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ひろえのキャズ便り

発行周期: 不定期 最新号:  2018/12/13 部数:  109部

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