ひろえのキャズ便り

「ひろえのキャズ便り3月22日号」

ひろえのキャズ便り3月22日号です。

 「大阪はこわいところだと思ってたんですけど、今回の展覧会で大阪にやって
きて、大阪いいなぁと思いはじめてます。自分にあってる気がするし……」。先
日、キャズで行われたアーティストトークで、藤木さんからこのことばを聞いて、
なんかホッとしました。いやですもんね、自分の生まれ育った街がこわいところ
だと思われたりしたら……でも、考えてみたら、私はたまたま大阪に生まれただ
け。それでも、「大阪人が二人集まったら漫才がはじまる」みたいに言われると、
「そんなわけないやろ」と本気で反撃したくなるのも事実。大阪人としてのアイ
デンティティみたいなたいそうなものではないにしても、知らず知らずに背負っ
ているものは確かにあります。そんなゆるやかな意味では、たぶん、「大阪人」
の共同体のようなものは存在していて、今回、藤木さんがこわごわ足を踏み入れ
たような仕方で、他なるものと衝突することでその輪郭が見えてくる、そんなも
のではないかと思います。
 かくして、大阪と出会った藤木さん。キュレーターの越前先生が、藤木さんの
ことを、「長いこと会ってなくても、不思議とつながってる人」と評するのを聞
いて、なるほどなぁと思ったのですが、その出会い方の流儀は、それこそが藤木
さんらしさと言えるものであることが、ご自身の作品からもうかがえます。藤木
さんの他者への向かい方が結晶化されているような、出会った人との名刺交換の
記録が作品になった「行為名刺交換」しかり、今回のキャズでの展示しかり……
人から人へとつながる縁をたどることで描かれたような、昆布をめぐる旅の道行
きは、他なるもの(未知の大阪、そして幻の昆布?)との出会いから生まれたも
のを形にしたものでした。もっとも、個と個が名刺に書かれた肩書きを背負って
出会うことで、他なるものが出会う境界線が指し示される名刺交換の現場とは異
なり、今回のキャズでの展示は、拍子抜けするほどゆるやかな印象を受けるもの
でした。「抵抗する対象としての権力、全体と呼ばれるものが、もや〜っと形を
失うと同時に、それに対する個の輪郭もあいまいになってしまった」という藤木
さん。今回の展示での力のぬきかげんは、そんな状況を受けてのことなのかもし
れません。権力が特定の顔や語り得る構造として攻撃の対象になり得た時代、
「われわれは」ではじまる言説が意味を持ち得た時代とは別の仕方で「共同体」
を語るための戦略−たぶん藤木さんは、そんな軽やかさを持ちつつ闘争を続ける
アーティストなのかも……。
 トークの日、来場者にふるまわれたキャズ特製ブレンド(?!)の昆布茶。そ
こには、昆布の粉でなんとなくもや〜っとした液体を手に、偶然そこに集まった
人たちのしばしの共同体がありました。大文字で語られるものが「わたしたち」
を束ねることのない時代の共同体−まぁ夫婦だって、偶然としか言いようのない
縁(えん)を必然と思いこむところからはじまるんですから、たまたま出会った
もの同士の共同体にも未来はある(はず?)−なるようにしかならないにしても、
自分が向き合っているものへの責任を引き受けるかどうかは問われますね。それ
はそうと、キャズの窓から見える、郵政公社時代からのロゴと日の丸の旗−たま
たま展示の一部になっているそんな風景さえ必然に思えたのは、宗谷岬の浅瀬の
海から、ニセのアメリカ国旗を振るというパフォーマンスを行った藤木さんだか
らでしょうか。ともかく、ロシアと接するという意味で、日本の縁(ふち)にあ
る北海道に生まれ育った藤木さんが、他なるもの同士が出会うところに超えられ
ない「縁(ふち)」が現れる事態に敏感にならざるを得なかったであろうことは、
こころにとどめておきたいと思います。

 さて、お聞き及びの方もおられるかもしれませんが、キャズに移転話が持ち上
がっています。まだ移転先は確定しておりませんが、決まり次第お知らせします。

__展覧会のご案内________________________________________________________

藤木正則展 http://cas.or.jp/2008/FUJIKI/index.html
本日最終日です。 ご来場ありがとうございました。
次の展覧会は決まりましたらお知らせいたします。

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特定非営利活動法人キャズ(CAS)
大阪市中央区久太郎町3丁目2番15号
三休橋エクセルビル南館6階
TEL/FAX 06-6244-3833
Web http://cas.or.jp/
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ひろえのキャズ便り

発行周期: 不定期 最新号:  2018/12/13 部数:  109部

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