ひろえのキャズ便り

「ひろえのキャズ便り3月8日号」

ひろえのキャズ便り3月8日号です。

 いったん家を出たものの、なんか忘れてきたような気がして家に引き返すこと
がある。戸締まり、ガスの元栓、エアコンやテレビ、パソコンの電源……ひとと
おり確認してみる。大丈夫そうだ……でも、なにひとつ忘れていることが見つか
らないと、逆に大丈夫だろうかと心配になってしまう。なぜなんだろう? ない
とわかってもなお、なにものかに向かおうとするもやもやっとした感触だけが残
っている。おそらく不在ほど、人をひきつけ、ときに不安にするものはない……
というわけで、どういうわけなんだかの、藤木さんの昆布。
 先週末、キャズに箱入りの昆布が届いた。藤木さんのふるさと北海道で、大量
に水揚げされるにもかかわらず、けっして北海道の市街地ではお目にかかれない
幻の昆布だ。もっとも、キャズに届いたのは実物ではなく、大阪は堺の昆布工場
で藤木さんが対面したあの昆布を写真におさめたもの。なんせ、ひと箱10万円
はくだらないという超高級品。気軽に手に入れられる代物ではないのだ。
 かくして、またひとつ、昆布にまつわる展示が追加される。「今回の展覧会、
難易度たかいっすよね〜。普通のおばちゃんとか、わからんのとちゃいます
か〜!?」と、ある若手アーティストさんが、それこそおばちゃんのようにしゃ
べりまくって帰っていった。たしかに、いわゆる「大阪のおばちゃん」なら言い
放つかもしれない。「せやから、昆布がなんぼのもんやの!?」と。
 「なぜ昆布なのか?」ときかれたら、藤木さんは「そこに昆布がなかったから」
と答えるだろうか。それはともかくとしても、なんだってはじまりは不思議なも
の。その最たる例が恋愛だろう。なんで好きになったんだか、よくよく考えてみ
るとさっぱりわからない。だから「性関係はない」(ラカン)といったものいい
にもなる。ないものをめぐってなにものかがめざされる運動、ある不在からなに
かが動き始める事態。そこに、「ない」としか言いようのない仕方であるもの、
それがおそらく、欲望と呼ばれるものの正体なのだ。人やものの交流も、そして
世界のはじまりも、なんとなく底が抜けている……。
 そして、大阪のおばちゃんである。その発言の素朴さは、彼女が知らないとい
うことに由来する。おばちゃんは、なんぼのもんでもないことを知っているけれ
ど、自分が知っているということを知らない−あることを言いあてているにして
もなお、である。

__展覧会のご案内________________________________________________________

藤木正則展 http://cas.or.jp/2008/FUJIKI/index.html
キュレーション:越前俊也(同志社大学文学部美学芸術学科准教授)

■会期 2008年2月25日(月)〜3月22日(土)1:00pm-7:00pm 
月曜〜土曜 Open (日/祝休み 3月9日を除く)
3月9日(日)の「39アートの日」は、13時から21時まで開場。
18時より飲み物(有料)提供有り。

アーティストトーク :3月15日(土)18時〜 (参加費500円)

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特定非営利活動法人キャズ(CAS)
大阪市中央区久太郎町3丁目2番15号
三休橋エクセルビル南館6階
TEL/FAX 06-6244-3833
Web http://cas.or.jp/
E-mail info@cas.or.jp
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ひろえのキャズ便り
  発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/
  配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000198185.html
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発行周期: 不定期 最新号:  2018/12/13 部数:  109部

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