左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii

左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii 第537号「左利き者の証言から~10 すきやばし次郎」

カテゴリー: 2019年03月02日
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 ※『週刊ヒッキイ』は、2014年7月より
  月二回(第一・第三土曜日)の発行に変更しました。
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 右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして 
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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 第537号(No.537) 2019/3/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その23―
 左利き者の証言から~10 左利きの寿司職人・すきやばし次郎(中)」
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 過去の左利きの人たちの言葉を紹介しながら、
 先輩の証言から学ぼう、というテーマを始めました。

 前回からは、
 「ミシュラン・ガイド東京」の2008年版から
 連続で選ばれている、銀座の三つ星寿司店「すきやばし次郎」の
 左利きの寿司(鮨)職人・小野二郎さんを取り上げています。
 
第535号(No.535) 2019/2/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その23―
 左利き者の証言から~9 左利きの寿司職人・すきやばし次郎(前)」
https://archives.mag2.com/0000171874/20190202094000000.html

 今回は、後編の予定でしたが、思いのほか書きたいことがあり、
 長くなり、全三回ということで、今回は二回目―中編です。

 (次回が、最終回―後編の予定です。)


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 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その23― 

  左利き者の証言から ~快適左利きライフのために~ 10

 
  ◆ 左利きの寿司職人(サウスポー二郎) ◆

   すきやばし次郎・小野二郎 ―中編―

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「前編」の内容は――

 ●サウスポー二郎
 ●右腕の大やけどで利き腕はわからない
 ●私の幼年時代
 ●鮨を握る場合
 ●「サウスポー二郎」誕生秘話

*参考:
 宇佐美伸/著『すきやばし次郎 鮨を語る』
(文春新書 2009.10.20) 
http://www.amazon.co.jp/dp/4166607227/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22


幼年時代の右腕のやけど事件とその結果、
本当のところの利き手・利き腕がよくわからない、ということ。

小学校一年生の時から左手で箸を、小学校三年生で包丁を、
それぞれ右手にかえた。

このとき、特に困難もなく自然と身についた。

ただ、鮨を握るようになり、
どうしても右手にシャリが入っている左利きスタイルになる。

「鮨は右手で握るもんだ」という固定観念があったが、
25歳という遅いスタートだったので、
左利きでも自然なこなれた仕草ならそれでいいはず、と決意した。



 ●右では「できなかった」

宇佐美伸/著『すきやばし次郎 鮨を語る』(文春新書)
「第三章 小野二郎の人間像」の中で、
著者・宇佐美伸さんは、こう書いています。


 《元々サウスポーだった二郎さんは、
  鮨職人を志した二十代半ば、
  鮨を右手で握ることを泣く泣く諦め、
  左手で握る決意をした。》p.196


奉公先の割烹旅館では、
小学生のうちに右手で包丁を使えるようになっていた。
字や箸も早いうちから右手に切り替えていた。
だから、二十五歳で鮨職人を目指したときも、
右手で握ることはできたはずだ。


 《二郎さん自身、
  「鮨は右で握るもんだっていう気持ちが強かったから、
  最初は右で必死に練習した」のである。/
   だが、やってもやっても、左の掌でタネと合わせた酢飯が、
  いつの間にか右の掌に入ってしまっている。/
   だったら自分がやりやすい左手でやれるだけやってみよう
  ――このへんの考え方がまわり道そのものなのである。
   まずは右でやろうとして「できなかった」
  と二郎さんは言う。だが、これは意訳するなら、
  ただ「できなかった」のではなく、
  自分の満足がいくようには「できなかった」ということだ。》

   (同書)pp.196-197



 ●利き手・利き腕の持つ性質

「いつの間にか」や
「自分の満足がいくようにできない」といった、
この辺の感覚が、
利き手・利き腕の持つ微妙さではないか、という気がします。

非利き手ではどうしても自分の中で
「ピンと来るものがない」
とでもいった感触。


また自分の話をするのはどうかとも思いますが、
私が
「左利きは左利き用のものを使うべきだ」、
「左利きは左利きらしく」、
と考えるようになったのは、
36歳の時に手にした左手用カメラ「京セラSAMURAI Z2-L」
との出会いでした。

このカメラを手にしたときのことは、今でも忘れられません。

初めて手にしたのに、ずっと昔から使っていたかのように、
自分にフィットする感覚。


もちろんずっと右手用のカメラを使ってきました。
父親のカメラも、使い捨てといいますか、
レンズ付きフィルム(「写ルンです」みたいなもの)でも。


今までずっと右手用のカメラでは、
どうしても「ピタッと来なかった」――

何かしら、曇りガラス越しのような、
「靴の上から足を掻く」かのような隔たりといいますか、
微妙なずれた感覚、しっかりと把握できていない感じ――

うすぼんやりした薄い膜越しのような感触といいますかがあり、
不満に感じたものでした。

それがこの左手用では、まったく感じない。
ダイレクトに自分の感覚が伝わる感じですね。

これこそがきっと人がみな、利き手を使いたがる理由であり、
利き手の持つ利便性なのだろう、と実感しました。

以来、
「利き手は心につながっている」が
私の持論となりました。

 ・・・

 《「まあ、今でも右で握ろうと思えば普通には握れるでしょう。
  ただつけ台の前の大勢のお客様をお相手するとなると、
  握るスピードが追いつかない。
  握りは手早さも命ですからそこが左で握る決意をした
  一番大きな理由なんですよ」》p.197


スピード。
これも利き手の持つ能力の一つでしょう。

正確さと速度。

こういう巧みさは、利き手・利き腕の特徴です。



 ●和食の世界の掟との戦い

 《(略)二郎さんは最初から利き腕でやってやろう
  という博打も打たない。
  右手では鮨の世界で生きていけないと納得してみて
  初めて利き腕に頼るのは、
  天才肌のやり口ではないだろう。/
   まどろっこしい手順もおろそかにせず、
  即動物的勘でエイヤッと左へ行かないのが、
  二郎さんという人なのだ。》p.197


この件(くだり)は、一概には言えない気がします。

性格もあるかもしれませんが、
それだけではなく、和食の世界の掟といったものが
厳然とあったように思います。


なにしろ日本の料理の世界――
和食の世界と言いましょうか――は、
ご存知のように、まだまだ閉鎖的といいますか、昔気質で、
今でも一流と言われる和食の料理人――
板前さんというのでしょうか――の世界では、
左利きの場合は、
箸も包丁も「右使いに直す」ということが行われています。

以前テレビ番組で、
左利きの外国人が一流の和食のお店で修行するところを
取材し、放送していました。

最初にやらせたのが、右手で箸を使う練習でした。


私が本屋さん時代に配達にいったあるお店でも、
左利きの新入りの子が
右手で包丁を使う練習をやらされていました。

左手が傷だらけでした。


和食の世界は、
箸や包丁が右手で使えて初めて一人前に扱われる、
という世界です。

二郎さんの言葉にもありましたように、
「鮨は右で握るもんだ」というのが、常識としてあったのです。


それをあえて左手で、というのは、
言ってみれば、
鮨職人として「生きるか死ぬか」という瀬戸際だった、
という切実な問題があったからではないでしょうか。

私はそういう気がします。


こういう左利きの人ならではの思いは、
当人に聞いてみないとわからないものでしょう。



 ●こなれた動きなら気付かない

実は私の知り合いに左利きの鮨職人さんがいらっしゃいました。

その方に聞いた話では――

職人さんが何人か並んで握っているときはともかく、
一人で握っているのなら、
大抵の人は左で握っているという事実に気付かない

というのです。

二郎さんも

《左利きで握ったって、それを自然体に感じさせられれば
 お客もいちいち利き腕のことなんか気にしないはずだって。》

とおっしゃっています。

その通りでしょう。
余ほど気にする人以外は、まず問題としないと思います。
というか、
そもそも気付かない人が多いのではないでしょうか。


前回、「●鮨を握る場合」の末で、
趣味のボウリングにからめて、
《やっぱり形を決め、姿勢を整えることが何でも大事だ》
と二郎さんはおっしゃっています。

形が決まっていれば、右であれ左であれ、
きれいに見える――不自然には見えないということでしょう。

 ・・・

――次回は、包丁を持ちかえることにした事情について、
および、左利きの職人ならではのサービスについて
ふれてみます。



(※参照)
「左利きのすし職人小野二郎」に関する
 『レフティやすおのお茶でっせ』記事:

・2005.5.20 
左利きの握りすし職人「すきやばし次郎」・その一
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2005/05/post_6614.html
・2005.5.23 
<左利きの握りすし職人「すきやばし次郎」・その二>
 左利きのすし職人『すきやばし次郎 旬を握る』
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2005/05/__2f08.html 
・2005.7.17 
<左利きの握りすし職人「すきやばし次郎」・その三>
 『至福のすし―「すきやばし次郎」の職人芸術』山本益博
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2005/07/post_5c37.html
・2007.11.20
「ミシュラン」三つ星に左利きのすし職人小野二郎
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2007/11/post_4ecd.html
・2010.4.26 
《サウスポー二郎》を読む:『すきやばし次郎 鮨を語る』
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2010/04/post-fc49.html
・2011.5.9 
左利きの鮨職人小野二郎の「すきやばし次郎」、
 ドキュメンタリー映画に
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2011/05/post-b7ce.html
・2014.4.24 
左利きのオバマ米大統領、左利きすし職人すきやばし次郎で会食
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2014/04/post-ecec.html

・2007.5.9 
新潮文庫 鮨に生きる男たち―左利きのすし職人もいます
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2007/05/post_2e43.html
・2005.6.8
「TOKIMEKIママ倶楽部」のママのお悩み
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2005/06/tokimeki__30b8.html


*「左利きのすし職人小野二郎」に関する本:

・里見真三/著『すきやばし次郎 旬を握る』 文春文庫 2001/9/1
http://www.amazon.co.jp/dp/4167656167/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22

・山本益博/著『至福のすし-「すきやばし次郎」の職人芸術』
 新潮新書 2003/12/1 
http://www.amazon.co.jp/dp/4106100460/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
 
・宇佐美伸/著『すきやばし次郎 鮨を語る』 文春新書 2009/10 
http://www.amazon.co.jp/dp/4166607227/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22

・早瀬圭一/著『鮨に生きる男たち』 新潮文庫 2007/4 
―左利きの職人さんとして小野二郎さんと「左利きで人一倍の苦労
 も」という「油井隆一 喜[き]寿司主人」も収録、全17人。
http://www.amazon.co.jp/dp/4101390053/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22

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【おまけ】

2月20日は、スーパームーンだったそうです。

深夜だったようで、見られませんでした。
残念!

でも、夕方は曇りでしたし……。

1月21日も準?スーパームーンだったようで、
これはカメラに撮ってみましたけれど……。


☆彡

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