左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii

左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii 第535号「左利き者の証言から~9 すきやばし次郎」

カテゴリー: 2019年02月02日
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 ※『週刊ヒッキイ』は、2014年7月より
  月二回(第一・第三土曜日)の発行に変更しました。
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【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン
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 右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして 
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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 第535号(No.535) 2019/2/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その23―
 左利き者の証言から~9 左利きの寿司職人・すきやばし次郎(前)」
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 過去の左利きの人たちの言葉を紹介しながら、
 先輩の証言から学ぼう、というテーマを始めました。


 第5回から8回までは、特別編として、
 「国際左利きの日」ILHDのイベントも実施している
 イギリスの左利きの会“Left-Handers Club”
 の生みの親とも言いべき、
 世界的に著名な左利き専門店“Anything Left-Handed”が
 めでたく50周年を迎えたということで、
 その記念サイトを紹介しました。


 久しぶりの今回は、
 「ミシュラン・ガイド東京」の2008年版から
 連続で選ばれている、銀座の三つ星寿司店「すきやばし次郎」の
 左利きの寿司(鮨)職人・小野二郎さんを取り上げます。



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 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その23― 

  左利き者の証言から ~快適左利きライフのために~ 9

 
  ◆ 左利きの寿司職人(サウスポー二郎) ◆

   すきやばし次郎・小野二郎 ―前編―

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 ●サウスポー二郎

銀座の名店「すきやばし次郎」の
左利きの寿司(鮨)職人・小野二郎さんのことは、
お聞きおよびのことと思います。

良く知らないよという方は、
ウィキペディアでもご覧ください。
↓

小野二郎 (寿司職人) - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E9%87%8E%E4%BA%8C%E9%83%8E_(%E5%AF%BF%E5%8F%B8%E8%81%B7%E4%BA%BA)


「すきやばし次郎」は、オバマ大統領が訪日した際に
安部首相と食事をした店としても有名です。


今では店主を長男の禎一さんにゆずった小野二郎さんは、
「サウスポー二郎」とも呼ばれるように、
左利きの鮨職人さんとして有名です。

その辺の事情を、


 宇佐美伸/著『すきやばし次郎 鮨を語る』
 (文春新書 2009.10.20)
http://www.amazon.co.jp/dp/4166607227/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22

から拾ってみましょう。



 ●右腕のやけどで利き腕はわからない

小さい頃の原体験として、
二歳の時に右腕に大やけどをした話が出てきます。

自分では覚えていないそうですが、
お兄さんの話では、
囲炉裏の自在鉤にかけてあった鍋を支えに立とうとして、
バランスを崩し、鍋の煮汁を綿入れの右そでに浴びてしまった、
といいます。


 《(略)肘から先が全部ただれてしまい、
  小学校を卒業する頃も跡がまだ残っていましたね。/
   最近は「サウスポーの二郎」ってことで
  私が左利きなのはご存知の方も多いでしょう。
  だけど、元々の利き腕はやはりわからない。
  本当は右だったのが、
  やけどのせいで左になった可能性もないわけじゃない。/
   というのも左で持っていた箸を右に持ち替えたのが
  小学校一年生の時で、
  後に奉公する料理屋旅館で包丁を右に持ち替えたのも、
  小学校三年生の時です。
  いずれも矯正という意識はそれほどなくて、
  ごく自然に右でもいけましたからね。》

  「第二章 すきやばし次郎、鮨を語る」<利き腕>pp.48-49


ここにありますように、
2歳で右腕に火傷を負ったことで、
自然な利き手・利き腕がわからないうちに、
左手・左腕を使わなければいけない状況だったようです。

そのため自然なままの利き手・利き腕がどちらなのかを
見極める機会がないままに成長された、と言えます。


二郎さんは、1925(大正14)年の生まれだそうです。

当時は、当然のごとく「右使いが正しい作法だ」という考えで、
左利きの子供は問答無用で右使いに替えさせられました。

特に箸使いと字を書くことは、ほぼ絶対的に。

二郎さんのお話にもありましたように、
遅くとも小学校入学に合わせて行われたようです。


二郎さんの場合は、火傷の影響もあって、
始めは左使いだったのですね。

そこで、右使いに替える際、

 《いずれも矯正という意識はそれほどなくて、
  ごく自然に右でもいけましたからね。》

とありますので、
少なくとも「強度の左利き」ではなかったようで、
私が言うところの
(右利きと左利きの)「中間の人」だったと考えられます。

こういう傾向の持ち主は、
分類としましては「弱い左利き」もしくは「弱い右利き」で、
両方の要素を少しずつ持っている、と考えられます。

その場合、多くの人が
外圧(強制的な学習や右利き仕様の環境)によって
「右利きになる」ということがあるようです。



 ●私の幼年時代

ここで私の経験を述べますと、
私は小さい頃から左利きが強かったようで、
親は苦労して、右使いにさせようとしていたようです。

左手の人差指には、
今では皺に隠れてほとんど確認できなくなりましたが、
やいとの跡がありました。

左手を使わないように、というまじないの意味だったのでしょう。

幼稚園時代には左腕を骨折して、
しばらく三角巾で吊っていたことがありました。

正確にどれぐらいの期間だったのかは、今では不明ですが、
それでもやっぱり私は左利きのままでした。

二郎さんとは違い、「強い左利き」だったのでしょう。



 ●鮨を握る場合

さて、二郎さんですが、
お鮨職人に弟子入りし鮨を握る段階に至って、
自身の左利きと直面することになります。


 《鮨もね、右でやれってったら実は右で握れないこともない。
  修行したてのころは右で本手返しっていう
  昔ながらの握り方を教わって練習も積んでいた。
  パッパッとせっかちに握るとなると左だけど、
  ゆっくりなら今だって右でもこなせますよ。
  実際箸も包丁も
  小学生時分から右でずっとやってきたわけだし。/
   でも変なもんで、赤貝の筋入れ、
  つまり包丁で切り込みを入れるのは今も左だよね。
  右でやるとなぜか手をたたいちゃって。
  フォークやスプーンは左が手っ取り早いし、
  歯磨きも左かあ。どうも支離滅裂だね。》

   (同書)p.49


このお話をお聞きしますと、
「中間の人」だけれど、
基本的に「左利き」の方に傾いた「弱い左利き」の人
と考えられます。

だから、いざという時には左が勝ってしまうのでしょう。


同書の同章<手>の節に、趣味はボウリングとあり、


 《投げるのは元々の利き手のサウスポー。
  女子プロボウラーとして絶大な人気を誇っていた
  中山律子さんの投げ方を見習い、
  力で倒すより奇麗なフォームを心がけました。/
   鮨を握るのもそうですが、やっぱり形を決め、
  姿勢を整えることが何でも大事だと思います。》P.139 


とありますから、
ご自身「左利き」と認識されているということでしょう。



 ●「サウスポー二郎」誕生秘話

1951(昭和26)年、26歳で
東京・京橋の鮨屋「与志乃」で鮨職人として弟子入り。

遅いスタートでした。

結果として、それが「サウスポー二郎」誕生に影響を及ぼした、
とも言えそうです。


オヤジさんの握り方を見よう見まねで独学。

それは「本手返し」という
江戸前の最も正統な握り方だそうです。

動作が大きく素人受けしやすい。
反面手数が多く、手早く正確にこなすには、腕前が必要。


 《人の十倍とは言いませんが、
  四倍、五倍と練習した自負はある。もちろんこの時は、
  鮨は右手で握るもんだという固定観念から、
  右手で最後は酢飯を押さえる
  右利きの握り方を反復していた。/
   でもねえ、これが恥ずかしながらどうもうまくいかない。
  いえ、ゆっくりやれば、
    オヤジさんに教わったとおりのこなしはできます。
  今だってやれと言われればやれる自信は大いにある。
  だけどリズムでトトーンと握ろうとすると、
  いつの間にかまず左手に酢飯が入っちゃうんだね、これが。
  もう何回やったっておんなじ。/
   さて、どうしたもんかと、悩みました。でも考えたら私、
  その時二十五、六でしょう。
  この先鮨職人でやってくなら、どう考えたって時間がない。/
   中学を出て弟子入りするのが当たり前の時代に
  こっちは十年割食ってるんだから、
  今さら右手で握ろうとしたら
  果たしてどれぐらい時間がかかるか……。/
   それで踏ん切りをつけたんです、
  この際左手で握ってやろうって。右でも左でも、
  腕があれば味に差なんか出るはずがない。
  左利きで握ったって、それを自然体に感じさせられば
  お客もいちいち利き腕のことなんか気にしないはずだって。/
  「サウスポー二郎」誕生までには
  ざっとこんな曲折がありました。
  左でやろうと決めたからにはもう失敗はできない。
  来る日も来る日もシャドーで握りの練習ばっかり。
  我ながらよくやったと思います。》

   (同書)<「サウスポー二郎」誕生>pp.99-100


ちなみに、
里見真三/著『すきやばし次郎 旬を握る』(文春文庫)
「鮨の握り方(小野二郎は左利きである)」の
p.274、275の2ページ見開きで、
その握り方がコマ割り写真で解説されています。


 ――以下、次回に続く。

   さて、いよいよ利き手の本質や
   和食の世界における左利きに対する見方や風潮
   といったものが見えてきそうな気がします。


(※参照)
「左利きのすし職人小野二郎」に関する
 『レフティやすおのお茶でっせ』記事:
・2005.5.20 
左利きの握りすし職人「すきやばし次郎」・その一
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2005/05/post_6614.html
・2005.5.23 
<左利きの握りすし職人「すきやばし次郎」・その二>
 左利きのすし職人『すきやばし次郎 旬を握る』
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2005/05/__2f08.html 
・2005.7.17 
<左利きの握りすし職人「すきやばし次郎」・その三>
 『至福のすし―「すきやばし次郎」の職人芸術』山本益博
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2005/07/post_5c37.html
・2007.11.20
「ミシュラン」三つ星に左利きのすし職人小野二郎
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2007/11/post_4ecd.html
・2010.4.26 
《サウスポー二郎》を読む:『すきやばし次郎 鮨を語る』
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2010/04/post-fc49.html
・2011.5.9 
左利きの鮨職人小野二郎の「すきやばし次郎」、
 ドキュメンタリー映画に
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2011/05/post-b7ce.html
・2014.4.24 
左利きのオバマ米大統領、左利きすし職人すきやばし次郎で会食
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2014/04/post-ecec.html

・2007.5.9 
新潮文庫 鮨に生きる男たち―左利きのすし職人もいます
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2007/05/post_2e43.html
・2005.6.8
「TOKIMEKIママ倶楽部」のママのお悩み
http://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2005/06/tokimeki__30b8.html


*「左利きのすし職人小野二郎」に関する本:
・里見真三/著『すきやばし次郎 旬を握る』 文春文庫 2001/9/1
http://www.amazon.co.jp/dp/4167656167/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22

・山本益博/著『至福のすし-「すきやばし次郎」の職人芸術』
 新潮新書 2003/12/1 
http://www.amazon.co.jp/dp/4106100460/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
 
・宇佐美伸/著『すきやばし次郎 鮨を語る』 文春新書 2009/10 
http://www.amazon.co.jp/dp/4166607227/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22

・早瀬圭一/著『鮨に生きる男たち』 新潮文庫 2007/4 
―左利きの職人さんとして小野二郎さんと「左利きで人一倍の苦労
 も」という「油井隆一 喜[き]寿司主人」も収録、全17人。
http://www.amazon.co.jp/dp/4101390053/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22

他多数。


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以前からひとつ温めているグッズの腹案があるのですが……。

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