左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii

左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii 第291号「名作の中の~推理小説編-3-」

カテゴリー: 2011年12月17日
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 第291号(No.291) 2011/12/17「名作の中の左利き~推理小説編
 -3-「兄弟」阿刀田高」
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 ≪左利き学入門≫ ■名作の中の左利き■ ..第三土曜日掲載
  ~推理小説編―3―「兄弟」阿刀田高
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  <名作の中の左利き>推理小説編の3回目です―が、
  メモ及び資料の準備ができていませんので、
  今回は、広い意味での「推理小説」もしくは「ミステリ」―
  ショートショートを紹介します。

阿刀田高氏の「兄弟」です。

 初出:東京新聞等 昭和56年(1981)5月31日
 『新装版 最期のメッセージ』講談社文庫 2009.1.15 収録


 ◆「兄弟」阿刀田高

ショートショートですから、文庫本で3ページの小品です。


 《兄さんとボクとは同じ日に生まれた。/うん、双生児の兄弟、
  姿形だって真実鏡に移したように二人はよく似ていた。/生
  まれつき兄さんがボクより賢かったのかどうか、ボクにはわ
  からない。でも、気がついたときには、ボクたちはもうはっ
  きりと差別されていた。力の強い兄さん、不器用なボク……。
  /パパもママもボクには冷たかった。なにかというと兄さん
  のほうだけ優遇する。ボクが玩具に手を出そうとしても兄さ
  んが先にサッと手を伸ばして取ってしまう。パパもママも、
  それを見てべつに注意しようともしない。それどころか、ま
  るで当然のことみたいに笑ってながめていたんだ。/ボクは
  どんなにくやしかったか。》

   『新装版 最期のメッセージ』講談社文庫 p.193


本誌で紹介しているという事実から、
この冒頭のくだりを読めば察せられると思います。

そう、これは右手と左手の兄弟、弟の左手が語るお話です。

期待される兄と目をかけてもらえない弟。
何でもできるようになる兄と何をやっても不器用な弟・ボク。

ところが十歳の時に事件が起きます。
なんとあんなにかわいがられていた兄が、事故で死ぬのです。


 《パパやママがどんなに悲しんだか。本心を言えば、兄さんの
  替わりにボクが死んでくれればいい、と思ったのにちがいな
  い。/ボクたちはたった二人っきりの兄弟だったから、兄さ
  んがいなくなれば、今度はボクがパパやママの手助けをして
  あげなければいけない。パパやママもようやくボクに期待を
  かけるようになった。ボクは兄さんのようにはうまくやれず、
  ずいぶん叱られたっけ。/苦しかった。つらかった。/でも
  ボクは一生懸命がんばった。》p.195

ラスト―。

 《ボクんちだけが特別だったわけじゃない。このひどい差別は
  どこにでもある。ボクの名は左手。兄さんはもちろん右手と
  いう名前だった。》同


 ◆『イソップを知っていますか』のなかで

このショートショートは、阿刀田氏の古典の紹介書シリーズの一冊

 『イソップを知っていますか』(新潮社 2010.1.30)
 「第9話 役立つ知恵と愚かな思案」

の中で、親の愛情に優劣があった場合の例として、
イソップ寓話の安土桃山時代の邦訳、古活字本『伊曾保物語』の
「猿と犬の事」のあとに紹介されています。


「猿と犬の事」のお話は、母猿が犬に追われて、
いつも腕に抱いてかわいがっていた子を
重荷に感じ、棄てて逃げます。
一方、嫌っていた子はいつも背中に負われていたので、
そのまましがみついて母猿ともども難を逃れ、無事生き延びます。

善し悪ししと選ぶべからず、誰も等しく思えば、人も我を思うべし、
といった教訓が付けられています。


元のイソップ寓話を紹介しましょう。

 《猿は子供を二匹生んで、一方は可愛がってまめやかに育て、
  もう一方は憎んで放ったらかしにする、と言われている。し
  かし神的な巡りあわせによって、まめやかに育てられた方が
  死に、なおざりにされた方が命を全うすることになる。/
  どのような事前の配慮よりも巡りあわせの方が強い、という
  ことをこの話は説き明かしている。》
  
   『イソップ寓話集』中務哲郎/訳 岩波文庫 1999.3.16
   「218 猿の子供」p.169-170


 《サルが子どもを二ひき生みました。一ぴきはかわいがりまし
  たが、もう一ぴきはきらっていました。だいじにしているほ
  うの子は、いつも胸にだいてあっちへいったり、こっちへき
  たりしているうちに、あんまりかわいがりすぎて、息がとま
  ってしまいました。ところが、きらわれて追いまわされてい
  たほうは、さびしいところへいってしまって、ひとりで生き
  ていました。/人によっては、きらわれるほうが、かわいが
  られるよりも、ありがたいことがあります。》

   『イソップのお話』河野与一/編訳 岩波少年文庫020
    1955,2000.6.16新版「サルの子ども」p.238


解釈に大きな違いがあるように感じます。
ここではイソップ寓話の研究ではないので、
深くは追究しませんが。

右が善し左が悪ししと差別するべからず、と言えます。
また、
左利きは不便ゆえに、工夫する生き方が身につく、
とも言えそうです。


 ◆ベンジャミン・フランクリン「左手からの手紙」

私の見るところ、このショートショートの元ネタとなったのは、
本誌でも以前紹介しました、
ベンジャミン・フランクリンの「左手からの手紙」ではないか、
と考えます。

私が初めてこの話を知ったのは、斎藤茂太先生の著作、
『左ききの人の本』MG出版(1987)刊の文庫版である、

 『左ききの人はなぜ才能があるのか―「左きき」の性格分析』
  KKベストセラーズ・ワニ文庫(1993)
 「第5章 なぜ左ききの人は少数派なのか/
  双子の姉から妹への手紙」(p.164-165) 

での要約版でした。

 スタンレー・コレン/著『左利きは危険がいっぱい』
  石山鈴子訳 文藝春秋(1994)
 「第16章 左手利きたちよ、立ち上げれ」
 「教育を監督する方々へのお願い」(p.392-394)

でも全文(だろうと思います)が紹介されています。


こちらでは、双生児の姉妹となっており、立場も逆転しています。
即ち姉が虐げられた語り手である左手で、妹が右手。

ただし、原語の英語には「姉」「妹」の別はないでしょうから、
ここでも書き分けられていたのかどうかは、
私には判断できません。


 ◆左利きの人の思いが出たお話

国会図書館に勤めておられた阿刀田氏は、読書の幅も広く、
多くの文学作品にも触れておられるので、
どこかでこのフランクリンの著作を知り、
それを基にこの作品をものにされたのではないか、
と想像します。

あるいは、
昔から比較的よく知られた話だったのかもしれません。

もちろん、まったくの偶然の一致ということも考えられますが…。

どちらにしろ、考えてみればよくわかる、納得できる話で、
こういう嘆きは、昔から左利きの人であれば、
付いて回る考えだったかもしれません。


*
第211号(No.211) 2010/5/15 
左利きの本から~「左手からの手紙」
http://archive.mag2.com/0000171874/20100515074000000.html

●「兄弟」を収録/紹介した本:
『新装版 最期のメッセージ』阿刀田高/著 講談社文庫 2009.1.15
http://www.amazon.co.jp/dp/4062762617/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
『イソップを知っていますか』阿刀田高/著 新潮社 2010.1.30
http://www.amazon.co.jp/dp/4103343265/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22

●イソップ寓話「猿の子供」を収録した本:
『絵入り伊曽保物語を読む』武藤禎夫/著 東京堂出版 1997.9.30
http://www.amazon.co.jp/dp/4490203292/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
『万治絵入本 伊曾保物語』武藤禎夫/著 岩波文庫 2000.12.15
http://www.amazon.co.jp/dp/4003027612/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
『イソップ寓話集』中務哲郎/訳 岩波文庫 1999.3.16
http://www.amazon.co.jp/dp/400321031X/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
『イソップのお話』河野与一/編訳 岩波少年文庫020 
1955, 2000.6.16新版
http://www.amazon.co.jp/dp/4001140209/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22

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