西行辞典

西行辞典 第141号(100908)


カテゴリー: 2010年09月08日
      ◆◆◆◆  西行辞典  ◆◆◆◆
                        
                  vol・141(不定期発行)
                   2010年09月08日号

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           今号のことば    

             1 こばえ
                2 こぼたれぬ
          3 こめのしき網

          こはさ→53号「うし」参照
       こほりのこり→132号「氷」参照
      こひのまちつる→139号「越の中山・越の山」参照 
      こひのむらまけ→101号「かづく」参照 
       こむよのあま→98号「かため」参照
   
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         ◆ こばへ ◆

【こばへ】
 
 魚名です。「鮠」と書いて「ハヤ・ハエ」と読みます。
 淡水魚で、小さいハエのこと。
 ハヤ、ハエ、ハイ、ハス、ウグイ、オイカワなどの呼び方がある
 ようです。

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01 こばへつどふ沼の入江の藻のしたは人つけおかぬふしにぞありける
           (岩波文庫山家集198P雑歌・新潮1392番)

○人つけおかぬ

 コバエを獲るつもりで人が意図的に漬けたものではないということ。
 人為的にされたものではなくて、自然になったということ。

○ふしにぞ

 「ふし」は伏柴のこと。下の歌にある「ふし柴」と同義です。

  川わたにおのおのつくるふし柴をひとつにくさるあさ氷かな
   (岩波文庫山家集94P冬歌、243P聞書集127番・新潮欠番・
               西行上人集追而加書・夫木抄)

 「柴漬け=ふしづけ」のことを詠んだものです。
 柴も「ふし」と読んでいました。
 柴漬けとは、冬に、束ねた柴の木を水中に漬けておき、そこに
 集まってきた魚を春になって獲る仕掛けのことです。
 以下の歌にある「ふしつけ」も同義です。

  泉川水のみわたのふしつけに柴間のこほる冬は来にけり
               (藤原仲実 千載集389番)

(01番歌の解釈)

 「小さな鮠が集まってきている沼の入江の藻の下には、人が
 仕掛けた訳ではない天然の柴漬になっている。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

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         ◆ こぼたれぬ ◆

【こぼたれぬ】

 「毀たれぬ」と書き、壊すことです。
 作ってある構造物を破壊すること。取り除くことを言います。

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01   中納言家成、渚の院したてて、ほどなくこぼたれぬと聞きて、
    天王寺より下向しけるついでに、西住、浄蓮など申す上人
    どもして見けるに、いとあはれにて、各述懷しけるに

  折につけて人の心のかはりつつ世にあるかひもなぎさなりけり
      (岩波文庫山家集187P雑歌・新潮欠番・西行上人集)

○中納言家成

 藤原家成。1107年~1154年。48歳。美福門院の従兄弟で、その
 縁故によって鳥羽院の寵臣となっていたことが「台記」や
 「愚管抄」に見えます。

○渚の院したてて

 渚の院を造営したということ。
 「渚の院」は交野にあった惟喬親王の別業で、在原業平ともゆかり
 のある所でした。
 家成が、渚の院を再興したのですが、すぐに取り壊してしまいました。

○西住

 俗名は源季政。醍醐寺理性院に属していた僧です。西行とは若い
 頃からとても親しくしていて、しばしば一緒に各地に赴いていま
 す。西住臨終の時の歌が岩波文庫山家集206ページにあります。

○浄蓮

 不詳ですが、静蓮法師という説もあります。
 静蓮法師とするなら、千載集1015番の作者であり、また、60ぺー
 ジの「鹿の音や・・・」歌の忍西入道と同一人物の可能性も指摘
 されています。

○天王寺

 地名及びお寺名。大阪市の行政区の一つです。
 お寺の四天王寺を指してもいます。西行歌では、四天王寺と
 天王寺は同義です。
 四天王寺は国家で建立したお寺の第一号です。聖徳太子の創建と
 伝えられています。現在の堂宇は昭和になってからのものです。
 天王寺歌は他に六例があります。

○世にあるかひも

 生きている意味、生きている甲斐もないという悲嘆の言葉。
 中納言家成が「生きていてもどうしょうもない人」ということ
 ではなくて、詠者である西行が、「つまらないことを聞き知って
 しまった。こんなおろかなことを聞くのは、生きていることの
 甲斐もないことだなー」という自嘲的な響きを込めています。
 「かひ」は渚の縁語である「貝」の掛けことばです。
 
(歌の解釈)

 「その時その時につけて人の心も様々に変わってしまうので、
 この世に生きていることも甲斐ないと思わせる渚の院だなあ。」
                (和歌文学大系21から抜粋)
   
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         ◆ こめのしき網◆

【こめのしき網】

 「こめ」は「小目」のこと。目の細かい網。
 水中に敷き渡して魚を捕獲します。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

01 しらなはにこあゆひかれて下る瀬にもちまうけたるこめのしき網
       (岩波文庫山家集198P雑歌・新潮1394番・夫木抄)

○しらなは

 鵜飼漁などの時、魚が逃げないように、あらかじめ水中に張り
 渡している白い縄のこと。
 新潮版でも和歌文学大系21でも上のような説明ですが、この白縄
 は鵜飼漁の時だけ使われるものではないようです。
 鵜飼の時に鵜に結びつける鵜縄とも違いますし、私にはもうひとつ
 よく理解できないでいます。

○こあゆひかれて

 小鮎が白い色の縄に導かれるようにして…ということ。

○もちまうけたる

 小鮎を獲るための網をあらかじめ水中に沈めていて、その網は
 手で持って操作できるようになっているようです。

(01番歌の解釈)

 「逃げないように河の中に引き廻した白い縄に小鮎が引かれて
 下ってゆく瀬に、それを捕らえるべく持って用意している目の
 細かい敷網があるよ。」
            (新潮日本古典集成山家集から抜粋)

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  (後記)

本日は9月8日。節季は白露。
台風9号の影響で昨日から空はどんよりと曇り、風も少しあります。
昨夜半には雨も降ったようですし、気温も少しだけ低くなった京都
です。久しぶりにすごしやすい思いをしています。
もう暑さは良いので、このまま秋らしくなって欲しいものです。
台風の進路にあたる地域では大雨の予報もあります。災害のない
ようにと願うばかりです。

5日の日曜日、滋賀県の湖南にある「ミホ・ミュージアム」に行って
きました。開館してから十数年。山の中の美術館ということは知って
はいたのですが、訪れるのは今回が初めてでした。
古今東西の陶芸展をしていました。
一つひとつ、つぶさに拝観してみて、十分な見応えを感じました。
人間ってすごいものだなーと、改めて思ったものでした。

ミュージアムから信楽の中心街に出て、たくさんの狸を見てきました。
信楽の歌は岩波文庫15ページと100ページの二首があります。

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