キャリアデザインマガジン

日本キャリアデザイン学会 キャリアデザインマガジン第84号


カテゴリー: 2009年04月20日
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□    キャリアデザインマガジン 第84号 平成21年4月20日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □-----------------------------------------------------------

1 キャリア辞典「非正規労働(4)」
2 私が読んだキャリアの1冊
     佐藤博樹・武石恵美子編『人を活かす企業が伸びる』
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン学会は、以下のとおり研究会を開催いたします。
 非会員の方もご参加できます。

(第4回)
 日 時:平成21年5月2日(土)14:00〜16:00
 テーマ:「プロ野球独立リーグの運営を通じた地域貢献・人材開発」
 講 師:(株)ジャャパン・ベースボール・マーケティング代表取締役
     村山哲二氏
 会 場:法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー25階
     イノベーションマネジメントセンターセミナー室
  ※内容・申込要領等、詳細は学会ホームページをごらんください。
   http://www.career-design.org/content/view/124/1/ 

(第5回)
 日 時:平成21年6月26日(金)18:30〜20:00
 テーマ:「音楽とキャリア」
 講 師:東京学芸大学教授・学生キャリア支援センター長 久保田慶一氏
     (日本キャリアデザイン学会研究企画委員長)
 会 場:法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー25階
     イノベーションマネジメントセンターセミナー室
  ※内容・申込要領等、詳細は学会ホームページをごらんください。
   http://www.career-design.org/content/view/125/1/

◆第1回九州地区会員交流会
 日 時:平成21年5月9日(土)13:00〜17:00
 講師・
 テーマ:日本キャリアデザイン学会会長/法政大学教授 川喜多喬氏
      「いま何故キャリアデザインが必要か・・日本キャリアデザイン
       学会設立の趣旨とこれまでの活動」
     東京学芸大学教授 久保田慶一氏
      「キャリア教育からキャリア・デザインへ」(仮題)
     筑紫女学園大学学生支援センター 井上奈美子氏
      「学生組織の継続学習によって学士力を育む戦略的キャリアデザ
       インの試行」
 会 場:九州大学 箱崎キャンパス 文系講義塔(福岡市東区箱崎)
 参加費:会員/無料 非会員/3000円
 懇親会:15:30〜17:00(参加費:会員・非会員とも3,000円)
 定 員 70名 (定員に達ししだい締め切ります)
  ※内容・申込要領等、詳細は学会ホームページをごらんください。
   http://www.career-design.org/content/view/123/1/
   お問い合わせ ec307012@s.kyushu-u.ac.jp

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1 キャリア辞典
  〜「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです〜

「非正規労働」(4)

 非正規労働はなぜ増加したのだろうか。これは日本の労働市場における長期
雇用慣行との関係が深い。長期雇用慣行は、事実上定年までの何らかの形での
雇用をコミットし、それと引き換えに長期的かつ企業特殊的な能力形成や、時
間外労働、あるいは配置転換・職種変更などへの対応(アダプタビリティ)、
さらには人材育成や生産性向上への強力などを期待する。これは企業独自の技
術やノウハウ、あるいはいわゆる「知的熟練」を効率的に蓄積・形成すること
で、日本企業の成長と競争力を支えてきた。

 いっぽうで、長期雇用のデメリットは量的のフレキシビリティが低い点にあ
る。長期雇用のメリットはすべて「定年までの雇用を約束し、それまでは基本
的に解雇しない」ことが不可欠の要件になっているから、景気の変動などにと
もなって売上や生産量が減少しても解雇によって量的な調整を行うことが難し
く(現実には法的にも規制されている)、余剰人員が発生しがちなのだ。

 そこで、日本企業では時間外労働をそのバッファーとして活用することが広
く行われてきた。平常時でも一定の残業を生産計画に織り込み、生産量が減少
したら残業を減らすことで対応するわけだ。もっとも、増産時に残業を増やす
余地も確保しておく必要もあるから、これで対応できる幅はそれほど多くはな
い。となると、契約期間満了にともなう雇い止めなどによる調整が可能な有期
雇用契約の非正規労働をバッファーとして確保する必要が出てくる。

 従来であれば、景気変動のサイクル、とりわけ景気後退期はそれほど長くは
なく、また、日本経済と企業組織が傾向的には成長を続けていたから、それほ
ど大きなバッファーは必要とされなかった。ところが、バブル崩壊・金融危機
に続く前回の経済不振・雇用調整期はかつてなく長く、また将来的に期待でき
る経済成長率も下方に屈折した。これは余剰人員の発生するリスクを高め、よ
り大きいバッファーが必要と考えられるようになった。それに先立つ労働時間
短縮・残業時間減少の影響もあったかもしれない。そこで企業は採用が必要と
なってもすぐに正社員を増やすことはせず、有期契約の非正規労働をまず増や
していった。たまたまこの時期には有期契約期間や労働者派遣に関する規制緩
和が行われもしたが、それが非正規労働を増やす原因となったというよりは、
非正規労働が増えるトレンドの中で現状追認的にマッチングの効率化につなが
る施策がとられていったと考えるほうが妥当と思われる。

 こうした流れの中で、2006年頃になると、非正規労働が増えすぎたのではな
いかという反省が企業にも生まれはじめた。企業の成長に貢献した団塊世代の
定年退職を前に、その技能を伝承すべき若手正社員が少なすぎる、という問題
意識が持たれはじめたのだ。正社員採用が増加しはじめるとともに、非正規労
働者の正社員登用が活発に行われるようになった。実際、この時期には非正規
労働とともに正規雇用も増加する局面もあった。

 残念ながら、そうした動きがさらに拡大することが期待される場面で、今回
の雇用調整期に突入することになってしまった。こうした経緯で非正規労働が
増加してきた以上、それが景気後退にともなって雇い止めされていくことは、
良し悪しは別としても、ある意味当然の成り行きであったといえるだろう。今
後とも、非正規労働が国民経済にとって必要な存在であり続けることは間違い
なく、それを前提に適切な政策対応が必要となろう。
                         (編集委員 荻野勝彦)


2 私が読んだキャリアの1冊

 『人を活かす企業が伸びる』−人事戦略としてのワーク・ライフ・バランス
           佐藤博樹・武石恵美子編著 勁草書房 2008.11.15

 ワーク・ライフ・バランスを「投資」ととらえる企業が増えている。労働条
件の一種として優れた人材の確保につながる、能力の高い人材を十分に活用で
きる、さらにはダイバーシティ・マネジメントを通じて生産性向上効果が期待
できる、といったことが考えられているようだ。経団連の労働政策のスタンス
ペーパーである「経営労働政策委員会報告」も、昨年末に発表された「2009年
版」で「ワーク・ライフ・バランスは投資」という考え方を明確に打ち出した。

 はたして、本当にそうなのだろうか。この本では、主に厚生労働省の委託に
より2005年にニッセイ基礎研が実施した「仕事と生活の両立支援策と企業業績
に関する調査」の分析を通じて、これに回答を与えようとしている。

 序章はおもに先行研究のレビューと調査の概要について述べている。第1章
では両立支援策と均等施策をともに実施することが女性の活躍の場の拡大につ
ながること、第2章では従業員のキャリアを重視する企業が両立支援策に積極
的に取り組んでいることが示される。

 第3章からが、ワーク・ライフ・バランスと企業パフォーマンスの関係の分
析となる。第3章では採用パフォーマンスとの関係が分析され、両立支援策の
「制度導入」が採用に良好な影響を与えるいっぽう、「環境整備」の影響は見
られないことが示される。これは社外からは「制度導入」の企業間比較が容易
であるのに対し、「環境整備」はそうでないためだと解釈できるという。

 第4章は女性大卒正社員の定着との関係を検証する。残念ながら、5年前に
20代前半で採用された大卒女性正社員の定着には、両立支援策の導入やその利
用は影響を与えず、彼女らの定着は改善しているにもかかわらず両立支援策や
均等施策は大きな影響を持たない。いっぽう、両立支援策の導入やその利用が
結婚や自己都合による退職を減少させ、育児休業の利用を通じて就業継続を促
す効果を有することも確認されている。

 第5章では従業員のモチベーションへの影響を分析している。人材開発や長
期雇用を重視する企業で従業員の意欲や満足度が高いことや、女性については
これらに両立支援・均等施策を組み合わせないと意欲が向上しないことなどは
当然として、両立支援策が男性の意欲や満足度の向上にも大きな効果をもたら
しているという結果は有意義であろう。

 第6章、第7章は企業業績との関係を検証する。第6章では、両立支援策と
均等施策の双方を推進する本格活用企業で一人当たり経常利益が圧倒的に高い
いっぽう、一人当たり売上高は両立支援策より均等施策を先行させている企業
においてが高いとの結果は興味深い。もっとも、業種や規模をコントロールす
ると本格活用企業において一人当たり経常利益に正の影響があるという結果に
とどまるようだ。

 第7章では、両立支援導入後の企業業績の伸びを長期的推移も含めて分析す
ることで両立支援策の業績への影響を検証している。その結果は、両立支援策
を均等施策と併せて導入することで企業業績にプラスの影響を与えるという期
待どおりのものであり、さらに早く制度を導入することが効果を高める、均等
施策を導入せずに両立支援策を導入すると業績はむしろ悪化するなど、絵に描
いたような結果が示されている。まことにワーク・ライフ・バランス施策の推
進をエンカレッジする結果である。しかし、両立支援策得点(制度導入に応じ
0〜7点で評価)・均等施策得点(同じく0〜3点で評価)の得点1点につき、
1人あたり売上高の伸び率が9.4パーセントポイント高まる、別のモデルでは
実に14.4パーセントポイント高まるという結果は、さすがに実感をかけ離れて
いる。なにか別の要因、たとえばこれら施策に熱心な経営者は設備投資や研究
開発投資にも熱心である傾向がある、といったことの影響を考えないと実感に
あわないように思われる。

 昨今、「ワーク・ライフ・バランスに配慮する企業がよい企業」という価値
観は広まりつつあるように思われる。これからは画一的な働き方、ライフスタ
イルを求める企業は人材の確保や生産性の向上、イノベーションなどに遅れを
とるであろうことは、おそらくは現実に人事管理にあたる人事担当者ならば直
観しているのではないか。この本は、それに実証的な根拠を与えてくれる点で、
まことに貴重な業績といえるだろう。
                         (編集委員 荻野勝彦)

 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。


3 キャリアイベント情報
  〜キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します〜

◆ILO創立90周年・日本ILO協会創立60周年記念特別シンポジウム
 「ディーセント・ワークへの挑戦-世界経済危機の下で人間らしい仕事と職
  場を求めて」
  平成21年4月27日(月)13:00〜116:50
 於 国連大学ウ・タント会議場(UNハウス) (東京都渋谷区)  
 http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/downloads/c20090427.pdf

◆中央職業能力開発協会「キャリア・シート(CADS&CADI)活用セミナー」
 平成21年5月20日(水)9:15〜17:00
 於 九段会館(東京都千代田区)
 http://www.javada.or.jp/


【編集後記】
 しょうもない話で恐縮ですが、今号でご紹介した佐藤・武石『人を活かす企
業が伸びる』の装丁は、編著者と一文字違いの佐藤博さん。ありがちな偶然で
しょうが、表紙をあけるとカバーにいきなりこの名前があって、一瞬佐藤先生
が装丁も自ら手がけたのかと思ってしまいました。(O)

【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.career-design.org/

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
  
  このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
  無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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