キャリアデザインマガジン

日本キャリアデザイン学会 キャリアデザインマガジン第49号


カテゴリー: 2006年10月23日
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□    キャリアデザインマガジン 第49号 平成18年10月16日発行
     日本キャリアデザイン学会 http://www.cdi-j.jp/

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 「キャリアデザインマガジン」は、キャリアに関心のある人が楽しく読める
情報誌をめざして、日本キャリアデザイン学会がお送りするオフィシャル・
メールマガジンです。会員以外の方にもご購読いただけます。
 ※等幅フォントでごらんください。文中敬称略。

□ 目 次 □-----------------------------------------------------------

1 キャリア辞典「最低賃金(1)」
2 私が読んだキャリアの1冊 小島貴子『就職迷子の若者たち』
3 キャリアイベント情報

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【学会からのおしらせ】

◆日本キャリアデザイン大会が迫ってまいりました。
 日 時:10月28日(土)10:30〜10月29日(日)13:00
      ※10月27日(金)午後、エクスカーションを実施
 テーマ:「キャリア研究の到達点と課題」
 会 場:立命館大学京都衣笠キャンパス「存心館」
 後 援:財団法人大学コンソーシアム京都
※詳細は、学会ホームページをごらんください。
 http://www.cdi-j.jp/event.html

◆日本キャリア教育学会大会で共催シンポジウムを開催いたします。
 日 時:11月12日(日)14:40-16:10
 テーマ:「進路指導・キャリア教育、そしてキャリアデザイン」
 会 場:関西大学社会学部(第三学舎)4302教室(阪急千里線 関大前)
 登壇者:吉田 辰雄(東洋大学名誉教授・元日本進路指導学会会長)
     川喜多 喬(法政大学キャリアデザイン学部教授)
 司 会:川崎 友嗣(関西大学社会学部教授)
※詳細は、日本キャリア教育学会ホームページでご確認ください。
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jssce/index.htm

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1 キャリア辞典
  〜「キャリア」に関する用語をめぐるコラムです〜

 最低賃金(1)

 このところ、日本の社会で経済格差が拡大している、あるいは貧困が増加し
ている、といった批判がたびたびなされている。そして、その原因のひとつと
して、「最低賃金が低すぎる」との主張が往々にしてみられるようだ。
 最低賃金(最賃)には各都道府県別に定められる地域別最賃と、労働協約の
拡張適用や関係労使の申出などによって産業別・都道府県別に定められる産業
別最賃とがある。産業別最賃の適用対象は限定されているが、地域別最賃は原
則としてすべての労働基準法上の労働者(一部例外あり)に適用される。一般
的に産業別最賃は地域別最賃を上回っているが、その適用を受けるのは全労働
者の1割に満たず、地域別最賃が普及・定着した現在では屋上屋を架すものと
して不要とする意見もある。
 さて最賃は毎年改定されるが、平成18年度の地域別最賃は1時間610円から
719円となっている。週40時間、月160時間働けば月97,600円から115,040円と
いう計算になる。これははたして低すぎるのだろうか。たしかに、生計費を最
賃だけで賄おうとすれば生活は相当に厳しいことは容易に想像できる。一部の
労働組合などは、これがいかに厳しいかをアピールするために実際に最低賃金
で生活してみる「最賃生活体験」を実践するという活動に取り組んでいる例も
あるようだ。 また、最低賃金が生活保護の水準を下回っているケースも多く
見られ、これも最低賃金が低すぎるという主張の有力な根拠とされている。働
くことができずに受け取っている生活保護の額よりも、現に働いている人が受
け取る最低賃金のほうが低いというのは、直観的に納得できないというわけだ。
 こうした主張にはインパクトがあるし、90年代以降の長期の経済不振の中で
は現実にそのような状況に置かれている人もいるだろう。しかし、親と同居し
ていたり、あるいは配偶者に十分な収入があったりすれば、話はまったく異な
ってくる。最低賃金が適用される労働者の範囲は非常に広く、どんなお金持ち
でも、どんな軽易な仕事でも、ほぼ全面的に適用されるというのに近い。
 そのため、最低賃金法第3条は、最低賃金の原則として「最低賃金は、労働
者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定
められなければならない」と定めており、生計費は考慮すべき一要素にとどめ
られている。妥当な考え方であろう。これに対し、生活保護法はその第3条で
「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維
持することができるものでなければならない」と定めており、ほぼ生計費を基
準とすることとされている。生活保護の趣旨からしてこれも妥当であろう。
 したがって、最低賃金(さらには生活保護も)の水準が妥当か低いかという
問題は別として、最低賃金で生計費をすべてカバーすることを前提とする「最
低賃金生活」のような主張や、生活保護との比較で高低を議論することは、あ
まり意味がないということになる。冷静な議論が必要であろう。
                        (編集委員 荻野勝彦)


2 私が読んだキャリアの1冊

『就職迷子の若者たち』
 小島貴子著 2006.9.20 集英社新書

 90年代後半以降、長期にわたる経済不振のなか、新卒就職戦線も厳しさをき
わめ、世に「就職超氷河期」といわれた。このところは経済の回復を受け、新
卒就職事情もかなり改善しているといわれる。しかし、この「超氷河期」の実
態が、当事者である若者たちや進路指導の教員、および企業の限られた第一線
の採用担当者を除けば、世間でどれだけ正しく理解されていたのか、はなはだ
あやしい。若者の両親や、若者とともに働く上司、同僚は、若者のおかれた状
況を理解しているだろうか。「若年雇用対策」を立案し推進する政策関係者た
ちはどうだろうか。若者が厳しい状況におかれた最大の要因は企業からの求人
(とりわけ正社員求人)の圧倒的な不足だっただろうが、これら周囲の人々の
理解が必ずしも十分でなかったことが、若者たちを一段と厳しい状況におくこ
とになったのではないか。
 この本は、「キャリアデザインマガジン」の読者であれば言わずと知れたカ
リスマキャリアカウンセラーの手になるものである。豊富な経験をもとに、こ
んにちの若者がおかれた就職戦線をつぶさに描き出している。なかなか見えに
くい若年労働市場の実情、若者たち自身の実態、あるいは企業(採用担当者)
の現状を、現場から見たほぼそのままに紹介している。メリットの多い本だが、
その点にまずの第一のメリットがある。若者にせよ周囲の人々にせよ、現実を
現実のとおりに認識しないことには、適切な対処などとりようがないからだ。
もちろん、どの現場のどこに立つかによって見えるものも見え方も違ってはく
ることは頭に入れておく必要はあるだろうが。
 第二のメリットは、こうした現実を踏まえて、地に足のついた実践的なアド
バイスが書かれていることだ。労働市場の厳しさの最大の原因は求人の少なさ
であるにせよ、その理不尽を訴えても現実的な解決にはならないし、政策提言
は目の前の若者には役立たない。少ないならば少ないなりに対応するしかない
のであり、そうした観点からは、著者は若者たちに対してかなり手厳しい。と
はいえ、実際に示されるアドバイスの多くは、必ずしも難しいものではなく、
ひとつひとつの「気づき」があれば、比較的取り組みやすいものになっている。
これがこの本の第三のメリットといえるだろう。もちろん、なかには「我慢す
るのも大切」といった、なかなか困難なアドバイスもあるのだが。
 第四のメリットは、職を求める若者だけではなく、その親たちや、すでに働
いている若者たち、近い将来就職活動に臨むことになる高校生(高校生でも十
分読めるよう書かれていると思う)、あるいは若者を新入社員として迎え、一
人前に育てていく職場の上司、先輩にとっても、大いに有益な内容を含んでい
ることだ。親の役割や「働き続けるのに必要なこと」にはそれぞれ1章があて
られているし、企業に関する記述を読めば、それは逆にいえば若者を生かすた
めに企業、職場、上司がどうあるべきかを示していることがわかる。
 もうひとつメリットを上げるとしたら、この本は単に就職やその後の定着、
適職探しなどのアドバイスにとどまらず、人生全体に対するアドバイスにも満
ちている、ということだろうか。さすがにここまで来ると、読む人の読み方に
よって感じ方はさまざまだろうし、相性の良し悪しもあるだろうが、当代一流
の実務家の本だけあって、非常に示唆に富んでいる。そういう意味では、万人
に一読をすすめられる本なのかもしれない。
                        (編集委員 荻野勝彦)
 ※「私が読んだキャリアの一冊」は、執筆者による図書の紹介です。
  日本キャリアデザイン学会として当該図書を推薦するものではありません。


3 キャリアイベント情報
  〜キャリアデザインに関係するイベントの開催予定などをご紹介します〜

◆21世紀職業財団「少子化時代の企業の在り方を考えるシンポジウム」
 平成18年10月23日(月)13:00〜16:00 東京会場
 於 ヤクルトホール(東京都港区)
 http://www.jiwe.or.jp/symposium/2006tokyo.html
 平成18年10月27日(金)13:30〜16:30 大阪会場
 於 シティプラザ大阪(大阪市中央区本町橋2−31)
 http://www.jiwe.or.jp/symposium/2006osaka.html

◆中央職業能力開発協会 全国職業能力開発促進大会・推進者経験交流プラザ
 平成18年11月15日(水)14:30〜16:30 全国職業能力開発促進大会
 於 明治記念館(東京都港区)
 平成18年11月16日(木)10:00〜16:00 推進者経験交流プラザ
 於 日本青年館(東京都新宿区)
 http://www.javada.or.jp/jigyou/jinzai/taikai.html
 (日本キャリアデザイン学会会員は会員割引になります)

◆日本キャリア・カウンセリング研究会 シャイン博士講演会&シンポジウム
 平成18年11月19日(日)13:00〜17:00 東京会場
 於 東京商工会議所(東京都千代田区)
 平成18年11月21日(火)13:00〜17:00 大阪会場
 於 大阪YMCA国際文化センター(大阪市西区)
 http://www.npo-jcc.org/library/others/schein-sympo-2.pdf
(日本キャリアデザイン学会も後援しており、参加費は割引になります)


[編集後記]

 「メールマガジンが届かないけど、どうなってるの?」とのお問い合わせが
ありましたので、発行に関するお知らせです。「キャリアデザインマガジン」
は隔週刊ですが、三大連休(年末年始、ゴールデンウィーク、夏季)は発行を
お休みします。また、発行日(隔週月曜日)が祝日のときは、翌週月曜日の発
行となります。なお発行日は原則であり例外も随時あります(編集委員が「ま
ぐまぐ」の送信予約を忘れるなどの手違いも間々あります)が、どうかご容赦
のほどを。今後ともご愛読をよろしくお願い申し上げます。いよいよ今週は立
命館大会です。(O)


【日本キャリアデザイン学会とは】

・キャリアを設計・再設計し続ける人々の育成を考える非営利組織です。
・キャリアに関わる実務家や市民と研究者との出会い・相互啓発の場です。
・多様な学問の交流からキャリアデザイン学の構築を目指す求心の場です。
・キャリアデザインとその支援の理論と実践の連携の場です。
・誤謬、偏見を排除し、健全な標準を確立する誠実な知的営為の場です。 
・キャリアデザインに関わる資格、知識、技法、専門の標準化の努力の場です。
・人々のキャリアの現実に関わり、変えようとする運動の場です。

 学会の詳細、活動状況はホームページに随時掲載しております。
 ◆日本キャリアデザイン学会ホームページ◆
   http://www.cdi-j.jp/

----[PR]--------------------------------------------------------------

◆働く若者ネット相談事業 ご利用のお勧め
 厚生労働省委託事業・日本キャリア開発協会受託・キャリア協議会協力
 webサイトを利用していつでもどこでもネットで相談できる仕組みです。
 また対面カウンセリングや電話カウンセリング、TVカウンセリングも行っ
 ています。詳しくはhttp://net.j-cda.org/まで。     (厚生労働省)

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  日本キャリアデザイン学会(CDI-Japan)発行
  オフィシャル・メールマガジン【キャリアデザインマガジン】
  
  このメールマガジンは『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ を利用して発
行しています。
 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000140735.htm
  無断転用はお断りいたします。

 編集委員:荻野勝彦(トヨタ自動車株式会社人事部担当部長)
      児美川孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部助教授)

   日本キャリアデザイン学会事務局連絡先
    e-mail cdgakkai@hosei.org
   〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1

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