栗野的視点

栗野的視点(No.485_1):ローカルビジネスこそ次世代ビジネス(2)~過疎地にのみ出店

カテゴリー: 2014年06月06日
◆過疎地にのみ出店

 経済成長時代の企業戦略は拡大路線でよかったが、高齢化社会になると市場はい
やが上にも縮小していく。それでも拡大路線を取り続けるためには、市場を国外、
なかでも成長著しい新興国に求めるほかない。そして多くの企業がその方向に舵を
切っている。「地産地消」「二酸化炭素排出削減」という言葉はすでに葬り去られ
ているような感さえあるが。

 そうした動きの中で、あえて地方、それも限られた地域にしか出店していない企
業がある。株式会社つるやが展開する「おべんとうのつるや」だ。
 最初に「つるや」の店舗を目にしたのは岡山県北東部の田舎町だった。表の看板
で「おべんとうのつるや」と弁当を謳っていたので弁当中心の店かと思ったが、中
に入ってみると、弁当屋というより食品中心のコンビニのようだった。店舗面積は
平均的なコンビニより少し狭い。
 過疎の田舎町では早晩閉店するに違いない。初めて同店を目にした時そう感じた。
だが、予想は外れ、結構続いている。しかも、高齢化が進んだ過疎地にしては案外
利用客が多い。かくいう私も帰省中は、100m程の距離に同店があることもあり、
ちょくちょく利用している。

 当初、遠からず閉店するだろうと考えたのは、車で15分も行けばマルナカ(イオ
ン系の食品スーパー)、イズミの食品スーパー・ゆめマートがあるからだ。そして
両店に隣接してヤマダ電機、エディオン、ホームセンター、回転寿司店などが立地
している。田舎町とはいえ、車さえあれば日常の買い物に困ることはないし、多く
の買い物客はそちらに行くはずだ。
 となると「つるや」を利用する客は車を持たない人が中心ということになる。当
然その数は多くないし、車に乗らないのは高齢者が多いから、購買単価も低くなる。
結果、売り上げ不振で撤退。これが当初の見立てだった。だが予測は外れ、結構頑
張っているから驚いた。

 「つるや」に興味を持ったのはいまから3年前。それまでも岡山県北、特に美作
(みまさか)地方を車で走るとちょくちょく目にしていたが、岡山県下では最も遅
く桜が開花することで有名な、蒜山(ひるぜん)高原の茅部(かやべ)神社に行っ
た時、農作業をしている老婦人と立ち話をしてからだった。
「この辺は買い物に困りませんか」
「福祉タクシーに相乗りして、つるやか道の駅に行きます」
 この時まで「つるや」はうどん屋だと思っていたので、うどんを食べに行ってい
るのかと思っていた。
 それにしても、こんな過疎地でも営業しているとは、と感心したのを覚えている。

◆「開いててよかった」コンビニ飲食店版

 ひと言で言うと、時計の歯車を昭和に戻したような店である。少なくともチェー
ン展開している店舗で、平成の時代にこのような店舗は見たことがない。店の外観、
看板、営業時間のすべてがまるで同じにするのを避けているかのように統一感がな
い。
 看板は「おべんとうのつるや」と表記しているものもあれば「お弁当 食事処 
うどん」(蒜山店)、「元気いっぱい食堂 できたて総菜 あったか弁当 定食・
ラーメン うどん・丼」(吉井店)、「来んちゃい・見んちゃい・食べんちゃい」
(岡山弁で「来て、見て、食べて」という意味)と大きく表示している店舗もあれ
ば、「コンビニ」を強調している店舗もある。
 次に外観の色使いが店によりバラバラ。建物の造りも三角屋根風だったりコンビ
ニ風だったりと、やはりバラバラ。

 チェーン展開する店でここまで統一感がないのは珍しい。「統一」されているの
は岡山県北中心の店舗展開で、県南には店がないことだ。県南、要するに瀬戸内側、
山陽自動車道側には1店舗もない。普通では考えられない出店形態である。「人口
が多い岡山市周辺の県南に出店した方が売り上げが上がる」。コンサルタントなら
まずこう指摘するだろう。
 では、県南を中心に店舗展開すればどうなっているだろうか。
まず激しい競争にさらされることになる。競合はうどん、らーめん、定食屋ばかり
ではない。一番の競合はコンビニだろう。半径100m以内にコンビニができれば、
品揃え、商品力の点でとても太刀打ちできないのは明らか。
<競合がいない過疎地だからこそ存在意義があるし、地元住民から支持されている、
といえる。>
 ここにこの企業の特徴がある。経済成長時代の逆を行くビジネスモデルだ。

 ところが、消極的な戦略で地方に出店しているわけではなさそうだ。それは同店
の営業時間にも表れている。
 開店時間は最も早い店舗で午前6時。遅い店舗でも午前7時で、この間に同6時20
分、30分、40分の店がある。
 ホームセンターの開店時間が早いところで午前7時~8時だから、「つるや」の開
店時間がいかに早いか分かる。そんな早朝から客がいるのかと思うが、仕事前の腹
ごしらえをここでしている人が多いということだろう。
 ではその分、閉店時間は早いに違いない。地方の店舗は夜早く閉まるのが特徴だ。
地方でなくても近年は中心部の商店街でさえ夜6時、7時に閉まっている。これで売
り上げが上がらないと嘆いているのだから、どこかおかしな気もする。
 さて、同店の閉店時間である。最も早いのが午後9時の蒜山店1店舗のみで、他の
店舗は午後10時~同12時。コンビニエンスストア「セブンイレブン」の営業時間が
当初午前7時~午後11時で「開いててよかった」というCMを流していたが、その飲
食店版といえる。
                            (続く)


****************************************************************
栗野 良
 ジャーナリスト(Technology & Economy)
 中小企業経営アドバイザー
 ベンチャー支援組織「リエゾン九州」代表

   中小企業の活性化をテーマにメルマガ配信、各種講演活動等を
   行っています。
   講演・講師等の依頼は下記へtel/faxあるいはメールで。
 
OFFICE KURINO 〒811-1362
福岡市南区長住5-11-23-403

 E-mail kurino@liaison-q.com
 HP  http://www.liaison-q.com(九州・岡山の技術・頑張る企業収録)
 
 ブログ「栗野的視点~ジャーナリスト・栗野の辛口コラム」
       http://blog.goo.ne.jp/kurino30 
 ブログ「栗野的風景~フォトエッセー」
        http://blog.livedoor.jp/kurino30/
*****************************************************************

栗野的視点

発行周期: ほぼ 週刊 最新号:  2018/12/10 部数:  258部

ついでに読みたい

栗野的視点

発行周期:  ほぼ 週刊 最新号:  2018/12/10 部数:  258部

他のメルマガを読む