言葉の森 オンラインマガジン(完全版)

言葉の森新聞2018年11月2週号(完全版)


カテゴリー: 2018年11月08日
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■■寺子屋オンライン講師育成講座、4時間半の講習会終わる 
 第1回の「寺子屋オンライン作文講師育成講座」が、先日終了しました。 
 実践的な講習会ということで、教室の理念のような話から始めてZoomの実際の操作まで、延々4時間半の講習会を行いました。 

 Zoomのブレイクアウトルームの操作に関しては、こちらの説明が分かりにくかったため、あまりスムーズにできませんでしたが、このあと、各自が自分でパソコンとスマホを使うなどして、複数の端末で操作する練習を行うことにしました。 
 これは、慣れればすぐにできることなので、今後、実際の授業見学などの中でも行うようにしていきたいと思います。 

 これで一通り寺子屋オンラインクラスの指導の基礎はできたので、これからは、作文クラスも、発表クラスも、自習クラスも、どの曜日や時間も参加できるような体制で生徒募集を行っていきたいと思います。 

 この11月に、言葉の森の本部の教室が引っ越しすることになったので、移転先の教室では、通学でありながらパソコンを使った、全国の生徒とのオンラインの学習を行うスタイルを作っていく予定です。 

 通学教室でオンライン学習を利用する形ができると、現在、森林プロジェクトで作文教室を開いている人たちも同じ仕組みで学年別の生徒指導を行うことができるようになります。 
 また、個人で作文教室を開いている人たちも、臨時の休講などに対応できるようになるので、教室の運営がしやすくなると思います。 

 このオンライン教室の学習内容は、これまでの答えのある勉強を人より早く見つけるという古い形の学習ではなく、自学自習の土台の上に自分らしい発見と創造のある学力を育てるというものですから、作文の学習以外にいろいろなところに応用ができると思います。 

 当面、今日の講習会に参加した人たちを中心にして、子供たちの新しい教育に関心のある人の輪を作っていきたいと思っています。

 寺子屋オンラインのよいところは、通常の通信教育と違って手応えがあることです。 
 それは、先生と生徒だけでなく、生徒どうしのコミュニケーションがあるからです。 
 今後、そういう活発な授業の様子を、生徒のプライバシーに配慮しながら紹介していきたいと思っています。  

■■主要教科は学校時代の勉強、作文と読書は生涯の勉強 
 学校生活を送っているときには、国語・数学・英語・理科・社会などの主要教科の勉強が、知的な生活のほとんどを占めています。 
 作文や読書は、教科の勉強に比べると、おまけのような印象です。 

 しかし、子供たちが学校を出て社会に入り、仕事や家庭が生活の中心になってくると、学校時代にあれほど大きな割合を占めていた教科の勉強はほとんど出てこなくなります。  
 基礎的な学力は、もちろん生活の役に使っているはずですが、それらのレベルは基礎的なものがほとんどです。 
 学生時代のテストで苦労したような難しい問題を解く力や、複雑な知識を覚えた経験は、日常の生活の中ではほとんど使いません。役に立つというレベル以上の、不必要に難しいことをやっていたという印象があります。 
 本当は、その不必要な部分をやめて、もっと自由な遊びや読書や作文に力を入れていった方がいいのです。

 しかし、その代わり、その人の知的な生活の中で大きな割合を占めるようになってくるのが文章表現力や読書力なのです。
 子育てを考えるときには、この勉強の大きな流れの変化を念頭に置いておく必要があります。 
 学校の勉強は、子供時代はもちろん大切ですが、あとまで残るのは、作文力や読書力の方なのです。 

 ところが、教科の勉強は、テストによる数値の目標がはっきりしています。だから、誰でも自然に関心を持ちます。 
 それに対して、作文や読書は本来点数のつかないものです。だから、関心が向きにくいのです。 

 この点数のつかない、したがって関心の持ちにくい勉強に意欲的に取り組むために必要なのが、友達の作文や読書に触れることによる知的な刺激です。 

 寺子屋オンラインのクラスで、子供たちが作文構想図の発表や、読んでいる本の紹介をしている様子を見ると、子供たちが互いに相手の作文や読書に大きな関心を持っていることがわかります。 
 ここにあるのは、テストでも競争でもなく、ただ同じぐらいの年齢の子供たちが自然に感じ合う知的な刺激なのです。 

 こういう交流は、学年が上がるほど貴重なものになってきます。 
 そして、このような交流が自然にできるようになるために、小さいころから作文や読書の交流を楽しむことに慣れていくといいのです。

 勉強が面白くなるのは、世界の不思議さに対する感動があったときです。 
 その感動をもとに、もっといろいろなことを知りたいと思うようになってくるのです。 
 ところが、今のテスト教育は、感動のかわりに競争を勉強の動機にしています。 
 だから、勉強がつまらなくなるのです。  

■■学力は8割でよいという考え――では何を伸ばすのか 
 東大の2020年からの大学入試入試における英語の方針が発表されました。 
 それは、民間試験利用の英語の成績が、国際的な尺度であるCEFR(セファール)でA2以上だということです。 
 そして、これは出願の要件であって、得点としては加算しないということです。 

 CEFRでA2のレベルというのを英検で見てみると、準2級から2級の実力で、高校卒業時に生徒の半分が達成すべき基準だとされている水準です。以前、東大の推薦入試で、「学力は、センター試験で8割取れればよい」とされていましたが、それと同じ発想です。 

 つまり、学力はある程度あればそれでよしとして、あとは思考力とか、創造力とか、個性的な関心や意欲のようなものを優先するということなのでしょう。 
 これは、これまで東大の入試に合格してきた成績優秀な子供たちの中に、優秀なのは成績だけで、論文もまともに書けないとか、学問に対する意欲もないとかいう子が目立ってきたためではないかと思います。 

 この入試の成績と真の学力との乖離は、予備校の入試対策が充実してきたことと比例しているはずです。
 言い換えれば、大学入試の対策が充実すればするほど、入試が科挙化していったのです。 
 そして、これは、大学入試に限らず、高校入試でも、中学入試でも起きつつある現象です。 

 成毛眞(なるけまこと)さんは、最近の著書の中で、面白いことを述べています。  
 それは、今活躍している若者たちの多くは「ゆとり世代」で、勉強漬けにならなかった中高生時代を過ごしていたというのです。 
 AI時代に、学力の基準は大きく変わってきます。これまで優秀とされてきた学力の中には、AIでカバーできるものがかなりあるのです。
 確かに、一部では低学力の子供たち生み出し、その負の側面が大きく取り上げられましたが、その一方で、勉強漬けにならない子供時代を送り、個性と能力を開花させていった子供たちもいたのです。 
 このゆとり教育のプラスの面をどう伸ばすかということが、これからの教育の課題だと思います。 

 では今後、子供たちの真の学力を伸ばすという場合、何を伸ばしていったらいいのでしょうか。 
 私は、それは広義な意味での国語力だと思います。 
 その国語力とは、漢字書き取り力とか、選択式の読解力とか、文学の読み取り力とかいうものではなく、もっと根本的な哲学に近い思考力なのです。

 もちろん、勉強はどの教科も一応できた方がいいのです。 
 しかし、どれもオール5を目指すような勉強の仕方は、かえって害があります。 
 ところが、小学校低学年で普通にできる子の場合は、親がつい全部できるようにさせてしまうことが多いのです。 
 本当は、それよりももっとその子の自由な時間を作ってあげる方がいいのです。 
 これが、「8割できたらいい」という考え方です。  

■■全国一学区制の通信教育 
 都立の日比谷高校の2018年の東大合格者は48人でした。 
 その他の都立高校も、国立高校26人、西高校19人、戸山高校11人と、進学実績を大きく伸ばしています。 
 この都立高校の復権という現象を支えているものは、それまでの学校群制度が廃止されて、東京都全域が一学区になったことによるものです。 
 2000年代以降は、全国的に公立高校の学区が拡大される傾向にあります。 

 ところで、言葉の森の課題の長文の中に、「島の動物と大陸の動物」の話があります。 
 小さい島では、競争相手が少ないので、ネズミは大きくなり、ゾウは小さくなります。 
 その反対に、競争相手が多い大陸では、ネズミは小さくなり、ゾウは大きくなるというのです。 
 もともと大きかった動物が、更に大きくなるというのが、広い大陸に棲む動物の特徴です。 

 公立高校の復権は、学区が拡大されたことにより、広い範囲の優秀な生徒が少数の学校に集まったことによるものです。 
 母集団が大きくなれば、それだけよくできる生徒も、よくできない生徒も人数が増えます。 
 そのよくできる生徒が、一つの学校に集まれば、その学校のレベルが上がるのは当然です。 

 この大きな学区ということから考えてみると、言葉の森の生徒は全国から来ていますから全国一学区です。 
 今は、海外からの生徒も多いので、全世界一学区とも言えます。 
 そのため、作文が好きで得意だから来たという、もともと作文がよく書ける生徒もかなりの割合でいます。 
 その反対に、作文が苦手で全く書けないから来たという生徒も、同じようにいます。 
 すごく得意な子も、すごく苦手な子も、どちらも言葉の森の生徒になっているのです。 

 これまでは、この全国一学区制をうまく生かすことができませんでした。 
 それは、言葉の森の通信指導が、担当する先生と生徒との一対一の個別指導だったからです。 
 だから、どういう実力の生徒にも対応できるのですが、生徒同士の交流のようなものはほぼありませんでした。 

 ところが、言葉の森では、数年前に寺子屋オンラインという少人数クラスを始めました。 
 まだ年数の浅い、多少実験的なクラスですが、このクラスの中で、参加する子供たちが活発に交流できることがわかってきました。  
 中には、学力も発想力もある優秀な生徒がたまたま集まったというクラスもあります。 
 その反対に、苦手な子の割合が比較的多くなったというクラスもあります。 
 そして、そのいずれの場合も、生徒どうしが互いの影響を受けて、意欲的に勉強に取り組むようになっているのです。 
 これは、先生と生徒の一対一の個別指導ではできない、少人数クラスならではの長所です。 

 寺子屋オンラインに参加している生徒はまだ60名ほどですから、言葉の森の生徒のごく一部です。 
 そのために、クラス分けなどが十分にできていませんが、今後参加生徒が増えれば、同じような実力の子が集まるクラスを作ることができます。 
 また、勉強する教科も、その子の得意分野や苦手分野に合わせたクラスとして作ることができます。 

 前の記事にもあるように、講師育成講座の仕組みも整いつつあるので、今後は少人数クラスを教える講師が増え、生徒も同じように増やすことができます。 
 そうすれば、全国一学区制の長所を生かして、同じ学年、同じ興味や関心、同じ実力の子供たちが5、6人で切磋琢磨しながら勉強する環境が作れます。 
 5、6人というのは、全員が話に参加できる人数ですが、その少人数クラスを横断するもっと大人数の企画も当然できます。 
 4週目に行っている発表交流会は、普段の少人数クラスの枠を超えて交流できるようにするための企画です。 

 言葉の森では、今後、全国一学区制の通信教育という条件を生かして、寺子屋オンラインの少人数クラスを広げていきたいと思っています。  

■■漢字を使わずに作文をひらがなばかりで書く子 
 ひらがなばかりで作文を書く子がいます。 
 男の子に多いのですが、漢字で書けないわけではなく、漢字で書くのに時間がかかり面倒だからひらがなで書くということです。 
 これを、「習ってる漢字は全部使って書くように」とか、「辞書を引きながら書くように」とかいう形で指導すると、書くスピードが落ちるので嫌がります。 

 では、どうしたらよいかと言うと、漢字で書けそうなところはふりがなを振るような形で小さい字でマス目の横に書いておくといいのです。 
 作文を一通り書き終えた段階で、その原稿をgoogleドキュメントの音声入力で読み上げます。 
 すると、ほとんどのふりがなの部分は正しい漢字に直るので、それを見ながら作文を漢字の部分を書き直すのです。 
 このように、作文を書く作業と漢字を書く作業を分けて行えば負担はなくなります。 
 両方を一度にやろうとするから、面倒に思ってしまうのです。 

 作文だけを先に書き、漢字に直す作業をあとでまとめてやるようにすると、次第に最初から書けそうな漢字は漢字で書くようになります。 
 子供の勉強をしやすくするために、ITの技術をどんどん利用していくと良いと思います。

 男の子は、概して面倒くさがり屋です。(笑)
 だから、作文を書くついでに、「漢字を使って、ていねいに書くようにして、姿勢も正しく」などといろいろなことを要求すると、すごく嫌がります。 
 それは、いろいろなことを同時にやらせようとするからです。 
 作文を書くときは作文だけに集中させ、漢字を書く練習はそのあと別にやっていけばいいのです。 

 面倒なことを嫌がるというのは、物事を能率よく済ませたいという気持ちの表れです。 
 だから、むしろその気持ちを生かす工夫をしていくといいのです。  

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