人事のブレーン社会保険労務士レポート

人事のブレーン社会保険労務士レポート 第39号 離婚時の年金分割

カテゴリー: 2007年01月15日
平成19年1月15日 第39号
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人事のブレーン社会保険労務士レポート
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目次

1.	離婚時の年金分割

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ブログもよろしくお願い致します。
「人事のブレーン社会保険労務士日記」です。
http://norifumi.cocolog-nifty.com/blog/
是非見てみて下さい!

メルマガを発行して、丸3年が経ち4年目に突入しました。
約1年半、他で連載していた期間も含めると4年8ヶ月、56月毎月この様な
文章を書いてきたことになります。

これもひとえに、読者の皆様のお陰であり、今後ともご支援宜しくお願い申し
上げます。

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1.	離婚時の年金分割

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<1> はじめに

離婚分割についてはこのメルマガの平成17年9月15日発行第23号にて取
り上げた。
バックナンバー↓
http://blog.mag2.com/m/log/0000121960/106421508.html

概要はこのメルマガの通りである。
本稿では、23号のレポートを踏まえ、人事担当者として従業員の離婚分割に
ついての質問にどの様に接したらよいのかという視点で執筆する。

年金額の計算については、個別に社会保険事務所に情報提供を受けることが望
ましい為、本稿では省略する。

また分かりやすくする為に、年金分割をする側を夫、される側を妻と定義する。
深い意味はないのでご了承願いたい。

<2>	離婚分割の制度

(1)種類

まず、離婚による年金の分割については以下の2種類がある。
・離婚分割 平成19年4月1日施行
・3号分割 平成20年4月1日施行

この説明については、メルマガ23号にて取り上げたので、そちらの方をご覧
頂きたい。

(2)離婚分割の対象者

対象者は以下の通りである。

・平成19年4月1日以降に離婚日があること。
・法律上の婚姻関係を解消するものであること。
・	事実上の婚姻関係の場合は、その解消も本制度の対象となるが、対象となる
期間は国民年金法による第3号被保険者の期間が対象である。

(3)3号分割の対象者

対象者は以下の通りである。

・平成20年4月1日以降に離婚日があること。

法律婚、事実婚についての取扱は離婚分割と同様である。

(4)両制度の違い

両制度の違いは、まず離婚分割は双方の協議で分割割合(これを按分割合とい
う)を決定するが、3号分割の場合には協議を必要とせず自動的に2分の1の
按分割合で分割される。

ただし、離婚分割は過去に遡っての被用者年金制度の加入期間を対象とするの
に対して、3号分割は平成20年4月1日以降の期間のみが対象となる。

離婚分割を選択するか、3号分割を選択するかは請求者の自由であるが、この
様な観点から3号分割を選択する方は平成20年4月1日以降でも暫くはいな
いと考えられる為、離婚分割を中心に述べることとする。

<3>	年金分割請求についての概要

(1)離婚分割の効果

離婚分割も3号分割も、分割により自らの年金の保険料納付記録に取り込まれ
る。

これは何を意味するかというと、離婚した相手の身分の変動に影響をされない
ということである。

年金については属人的な制度であり、離婚分割や3号分割を利用しないと元夫
が無くなった場合に、婚姻関係が継続していないと遺族厚生年金は貰えない。

仮に、元夫が自らの老齢厚生年金を原資として、元妻に対して生活費を援助し
ていた場合に、元夫の死亡によって老齢厚生年金が貰えなくなってしまい、ま
た、元妻が事実婚の要件を満たしていない限り遺族厚生年金も貰えず、元妻の
経済環境は著しく悪化するケースが多かった。

しかし、離婚分割及び3号分割によりこの点が解消され、元夫の死亡により年
金額が変動することが無くなり、また、再婚しても元妻の年金額が減額される
ことが無く、逆に元妻の再婚により元夫の年金額が元に戻るという事もなくな
ったのである。

即ち、離婚分割又は3号分割により完全に元夫の年金が切り離され、分割され
た保険料納付記録に対応する年金額について元妻のものとなるわけである。

この様な意味で非常に画期的なものである。

(2)分割しない方がいい場合

ここからは離婚分割と3号分割双方に共通するテーマの時は年金分割とする。

公的年金を貰う為には、25年間保険料を納めなければならない。

仮に、年金分割をしてもこの25年要件を満たしていなければ全く意味がない
わけである。

元妻が、25年の要件(生年月日によりこの25年が短縮される措置があるの
で各自ご確認頂きたい)を満たさなければ、年金分割をせず元夫から年金を原
資に生活費をもらう交渉をした方が良いのである。

(3)年金分割の制限

夫が障害厚生年金を受給している場合には3号分割は出来ない。
この場合には、離婚分割のみ可能である。

障害厚生年金は、障害者の生活を保障するものであり、自動的に自らの被用者
年金制度に加入していて、妻が第3号被保険者であった期間が半分になってし
まった場合には、障害者である夫の生活が著しく困窮する恐れがあり、これを
防止する為である。

しかし、この場合でも双方が協議をする離婚分割については制限されておらず、
障害厚生年金を受給している夫と離婚をする場合には、離婚分割をすればいい
わけである。

(4)年金分割請求の期限

年金分割の請求の期限は、離婚分割の期限は離婚から2年以内である。
3号分割は制限がなく、平成20年4月1日以降の離婚で、当該日以降の期間
についての第3号被保険者としてのいつでも出来るということである。

しかし、按分割合について双方の合意が必要な離婚分割は、2年以内に協議が
まとまらない可能性がある。
この場合、以下のような特例があり、該当する場合には、それぞれ1ヶ月以内
であれば、離婚から2年を経過しても請求することが出来る。

・ 離婚から2年以内に申し立てをした「審判」が確定したとき。
・ 離婚から2年以内に申し立てをした「調停」が成立したとき。
・ 訴訟に於いて按分割合に関する「判決」が確定したとき。
・ 書証に於いて按分割合に関する和解が成立したとき。

(5)事実婚と法律婚に関する請求期限の注意点

全ての期間が法律婚若しくは事実婚であれば原則通りであり問題は生じない。

事実婚から法律婚へ以降、又は法律婚から事実婚へ以降となった場合には請求
期限はどの様に考えられるのであろうか。

まず、事実婚から法律婚への以降であるが、これは両者を一体として扱うこと
としており、法律婚の解消から2年以内に事実婚の期間も含めて離婚分割の請
求を行うこととなる。

一方、法律婚から事実婚への以降であるが、この場合には各々の期間について、
離婚の日から2年以内に請求をしなければならない。

即ち、法律婚の解消により、事実婚が継続中であっても2年以内に法律婚の期
間中にかかる年金分割の請求をしなければ、妻は事実婚の解消により年金分割
を行う際であっても、当該期間にかかる年金分割は請求できず、事実婚のみの
期間に限られるわけである。

事実婚は、第3号被保険者としての期間に限られるわけであるから平成20年
4月1日以降の事実婚の解消であれば、3号分割を選択することが良いであろ
う。

(7)社会保険事務所から提供された情報に関しての注意点

平成18年10月1日より、社会保険事務所に於いて年金分割に関する情報提
供が行われるようになった。
事務所によって異なるが、現在はおおよそ3週間ぐらいかかる。
情報提供を受ける際は、社会保険事務所に電話をして予約制であるか否か、ど
の程度データの提供に時間がかかるのかを確認することをお勧めする。
因みに管轄は、請求者の住所を管轄する社会保険事務所である。

この提供されたデータを基に、按分割合を決めていくわけであるが、総報酬額
を基に按分割合を決めていくわけであるから、被用者年金制度の被保険者であ
れば、毎月総報酬額が変わっていくことになり、正確な按分をする為には毎月
情報提供を受けなければならないという実務上の問題が生じる。

これは特例で、情報提供を受けた日から1年以内に離婚をした場合には、提供
を受けた情報に基づき按分割合を決めることが出来るとされている。

<4> 年金分割のイメージ

(1)年金額の分割ではなく年金納付記録の分割

年金分割は、年金額の分割ではなく、年金納付記録の分割である。
元夫の1ヶ月毎の標準報酬月額を、元妻のそれに付け替えて、それぞれの標準
報酬月額を新たに設定する作業を年金分割と呼んでいる。

自らの標準報酬にするわけであるから、前に話した元夫や元妻の身分関係の変
動により自らの年金が影響を受けることが無くなる訳である。

(2)年金分割の按分割合の考え方

年金分割は、按分割合を協議する離婚分割と2分の1の按分割合で分割する3
号分割に分類されるが、この按分割合はどのように考えていけばよいのであろ
うか。

例えば、元夫の総報酬月額が8000万円で、元妻の総報酬額が2000万円
であった場合には以下の通りとなる。

総報酬額は、標準報酬月額×加入月数と考える。

8000万円+2000万円=1億円

この1億円をどの様な比率で分けるかが按分割合である。

1億円を2分の1ずつに分けるのであれば

元妻と元夫の総報酬額 5000万円ずつとなる。

4対6に分ける場合には、元妻が4000万円、元夫が6000万円となる。

年金分割は、保険料納付記録の分割であるから、この総報酬額をどの様に分け
るのかが実務であり、この割合を協議していくことが按分割合の協議である。

この総報酬額に乗率を掛けたものが年金額である。

であるから、仮に2分の1ずつの割合で分割しても、標準報酬月額の再評価率
の違いから両者に年金額の違いが出てくるので、全く同じ年金額になるという
ことではない。

按分割合や按分割合を元に実際に年金の分割をする乗率を決める場合には再評
価後の報酬ですが、分割される報酬は再評価前です。

例えば、按分割合が2分の1とした場合、この割合を求めた再評価後の標準報
酬月額が金額が30万円だったとしてもこれが年金の計算に反映されるわけで
はない。

これを各人の標準報酬に付け替えるときには、再評価前の標準報酬になるわけ
であるから、再評価前の標準報酬が2万円だったとすると、1万円ずつ元の標
準報酬に反映されて、その後に各人毎に再評価率をかけて計算する。
この再評価率の違いから年金額の違いが出てくるわけである。

このへんも年金額の分割ではなく、年金納付記録の分割と考えれば違和感はな
いであろう。

(3)平成20年4月1日以降の離婚分割

平成20年4月1日は3号分割の施行日である。
しかし、この日以降の第3号被保険者期間が分割の対象である為、3号分割を
選択する方は極めて稀であろう。

この日以降も離婚分割を選択する方が大多数を占めると推測されるが、この日
以降の第3号被保険者期間は以下のように取り扱われる。

あくまで対象は、平成20年4月1日以降の離婚に限る。

まず、平成20年4月1日以降の第3号被保険者としての期間を、3号分割を
行ったものとみなして、その期間2分の1ずつの按分割合で分割する。

それを基に、離婚分割を行うということになる。

噛み砕いていうと、平成20年4月1日以降の離婚で、当該日以降の第3号被
保険者としての期間は、離婚分割をする場合には2分の1ずつまず分割をされ
てしまい、それに基づいて離婚分割の按分割合を協議しなければならないとい
うことである。

但し、例外として障害厚生年金を受給している夫に対する離婚分割については、
このみなし3号分割は行われない。

(4)按分割合の上限下限

按分割合の上限は2分の1である。
下限については以下の通りに考える。

総報酬額が、夫8000万円、妻2000万円であったとする。

2000万円/8000万円+2000万円が下限の計算式であり、
0.2が下限割合である。

離婚分割は、総報酬額が多い方が分割される側であり、少ない方が分割を受け
る側である。
また、3号分割は、第3号被保険者であった期間をもつものが分割を受ける側
となる。

(5)対象となる年金

対象となる年金は、被用者年金制度の報酬比例部分である。
当然国民皆年金の建前上、基礎年金は分割されない。
また、元妻が60歳前半の老齢厚生年金を受給する際、年金分割が反映される
のは報酬比例部分だけであり、定額部分は本人の被保険者であった期間に基づ
く金額のみである。
この点もご注意頂きたい。

<5> まとめ

年金分割は、どの様な立場であるかで必要とする情報や知識が違ってくる。
人事担当者や経営者としては、年金額がどうなるかという問題は余り重要では
なく、按分割合の決定の仕組みと請求期限を踏まえた上で、情報提供に行かせ
ることが求められる。

また、あくまで被用者年金制度の分割であるから、基礎年金は対象にはならな
いし、元夫が不動産収入や個人事業主としての収入の場合であって、それが元
妻の収入を超える場合であっても、元夫が第1号被保険者であれば、被用者年
金制度についての総報酬額は元妻の方が多く、年金分割の対象とならない。

個人事業主や不動産収入が多い場合には、被用者年金制度の総報酬には反映さ
れない為、元妻の総報酬額が多い場合には、離婚分割は対象にならないケース
が出てくる。

この点も注意をして頂きたい。

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発行者 山本経営労務事務所 (URL http://www.yamamoto-roumu.co.jp/)
編集責任者 社会保険労務士 山本 法史
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発行周期: 月刊 最新号:  2019/02/15 部数:  781部

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