GBRCニューズレター

GBRCニューズレター No.170

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Global Business Research Center Newsletter
GBRCニューズレター No.170  2005年8月15日号 (毎週月曜日発行)
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今週の目次

☆GBRCニュース 東京大学の文系研究者による産学連携活動を推進するために
          東京大学産学連携本部との間で基本合意書を締結
        『日経産業新聞』『日刊工業新聞』に記事が掲載されました

☆組織論の文献解題シリーズ(8) Levitt & March (1988)

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☆GBRCニュース 東京大学の文系研究者による産学連携活動を推進するために
          東京大学産学連携本部との間で基本合意書を締結
        『日経産業新聞』『日刊工業新聞』に記事が掲載されました
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GBRCは国立大学法人東京大学産学連携本部(石川正俊本部長)との間で、東京大学
の文系研究者による産学連携活動を推進するための基本合意書を締結いたしまし
た。東大産学連携本部からプレス・リリースが行われ、『日経産業新聞』『日刊
工業新聞』に記事が掲載されました。

◎2005年8月9日付『日経産業新聞』9面
「東大 文系の産学連携推進 NPO法人と協力 共同研究容易に」

◎2005年8月9日付『日刊工業新聞』24面
「東大産学連携本部 文系研究者の活躍の場拡大
 NPOと提携 総合的な連携目指す」

また8月9日付で、東大産学連携本部のホームページ
http://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/
にもプレスリリースの内容がアップされました。

これまで、大学の産学連携といえば、大学が有する特許権等の知的財産権を産業
界へライセンスする等の形が主流でした。そのため、どうしても理系の研究者が
対象になり、文系の研究者の産学連携は遅れてきました。そうした中、東京大学
では理系の研究者にとどまらない全学を挙げた総合的な産学連携への取り組みを
目指してきました。今回の基本合意書の締結は、その具体的な取り組みのひとつ
であり、GBRCは産学連携本部と協力し、GBRCがこれまでの活動により築いてきた
ノウハウを活用することによって、東京大学の文系研究者に対する産学連携の活
動の場の拡大を図ってまいります。

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☆組織論の文献解題シリーズ(8) Levitt & March (1988)
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最初に言い訳……
※ できるだけ面白さを伝えたいので、いわゆる内容の要約とは異なります。
※ 何人かの担当者の輪番制で執筆しますので、微妙に書き方が異なります。

Levitt, B. & J.G.March (1988).
Organizational learning.
Annual Review of Sociology, 14, 319-340.

 この論文は、LevittとMarchが、自分たちの考える組織学習論に引き寄せる形
で関連文献をサーベイしたものである。彼らの組織学習論を支えるキーワード
は、ルーチン、歴史依存性、目標指向性の三つである。組織は、ルーチンによっ
て行動に導かれ、歴史や経験から得た推論をルーチンの中にコード化することで
学習をする。そして、目標と照らし合わせて、行動の結果が成功か失敗かを判断
し、成功に関連したルーチンをより使うようになっていく。彼らは、このような
組織観に立っているのである。
 ここで出てきたルーチンだが、具体的には次のようなものだとしている。組織
が構築される際に核となり、運営される際に使われる、型(forms)、規則、手
順、慣習、戦略、技術といったものである。さらに、公式のルーチンを強化・精
緻化したり、場合によっては否定したりするより高次のもの、つまり、確信の構
造(the structure of beliefs)や枠組み、パラダイム、コード(codes)、文化、
知識なども含まれる。これらルーチンは次のような特徴を持っているとされてい
る。まず、ルーチンは、それを実行する個々人から独立した存在であり、個々人
の入れ替わりがあっても残存可能なものである。次に、ルーチンは、組織的記憶
の中に記録されるが、それが首尾一貫しているとは限らないし、確実に保持され
るとは限らない。また、ルーチンは、社会化(socialization)、教育、模倣、専
門化、組織メンバーの移動、合併・買収によって伝えられるものである。
 この論文の前半では、ある一つの組織が、経験したことをいかにして取り込
み、ルーチンとして記録・保持し、それをもとに行動するのかに関して書かれて
いる。後半では、コード化されたルーチンの移転を通じて他の組織からいかにし
て学習するのか、他の組織との相互作用がある中でいかにして学習していくのか
に関して書かれている。

【一つの組織内での学習】
 ルーチンと確信は、次の二つのメカニズムを通して、組織の直接的な経験に反
応して変化する。
(1)試行錯誤的実験(trial-and-error experimentation):成功(目標を上回るこ
 と)に関連するルーチンはより使われるようになり、そうでないルーチンはあ
 まり使われなくなる。
(2)組織的探索(organizational search):代替的ルーチンのプールから、よりよ
 いルーチンが見つかると、それを採用する。そのルーチンの発見確率は、プー
 ルの豊かさ、探索の強度・方向の関数なので、結局のところ、組織の成功と失
 敗の歴史に依存することになる。
このことの最も純粋な例は、累積生産量によって生産性が向上するという学習曲
線/経験曲線であり、これには研究的な蓄積がある。
しかし、これらの研究には留意すべきことが二点ある。第一に、ルーチン自体は
固定的なものと捉えられていることである。しかし、ルーチンは組織の学習と共
に変形していくものと考えられるだろう。第二に、組織は、(客観的に)望まし
い結果をもたらすルーチンを順次採用していくと捉えられていることである。し
かし、「有能さの罠(competency traps)」が起こりうる。これは、本来は劣った
ルーチンであるにもかかわらず、それに関する能力を磨いて高いパフォーマンス
を上げるようになってしまい、それよりも優れているはずのルーチンを使用しな
くなってしまうというものである。
 以上の議論では、経験をある程度客観的に得られるものとして見ていた。だ
が、人間は、完全な統計家(statistician)ではなく歴史家(historian)であり、
経験や歴史に何らかの解釈枠組みをあてがってそれを理解していく。このことは
組織にも当てはまり、組織は、そこで広く共有されているパラダイムに沿って経
験や歴史を翻訳し、それへの理解を創り上げていくのである。ただ、組織的成功
の定義があいまいだったり、組織内にコンフリクトがあったりするので、組織の
パラダイムは必ずしも一貫しているとは言えない。また、成功に対する主観的な
評価が行動にあまり影響を及ぼさない状況では、「迷信的学習(superstitious
learning)」が生じうる。
以上のようにして得られた経験からの教訓はルーチンへと記録されて、組織的記
憶に保持される。そして、利用される際に検索される。これらを順に見ていく。
(a)経験の記録:経験は、文書やアカウント、標準的な運営手続き、ルールブッ
 クの他、組織構造・組織的関係、専門的慣行の基準、文化、「これがここで
 のやり方である」という共有された認識など、に記録される。ただ、全てが
 記録されるわけではない。また、変化し続ける経験から一貫した教訓は得難
 いし、組織内のサブ・グループによって歴史の解釈が異なることもある。そ
 のため、記録されたルーチンには矛盾やあいまい性もある。
(b)経験の保持:記録されたルーチンは、組織メンバーの移り変わりや時間の経
 過にかかわらず伝えられ、保持されていく。ただ、逸脱したサブ・グループ
 があったり、新人が多数いたりする状況では、上手く伝えられないこともあ
 る。
(c)経験の検索:保持されたルーチンは、全てが一度に喚起されるのではなく、
 ある特定の時間に組織の特定部分で一部のルーチンが喚起されることになる。
 どのルーチンが利用されやすいかは、そのルーチンの使用頻度、最近性(最近
 使われたかどうか)、組織的近接性(organizational proximity)によって変わ
 ってくる。

【組織間での学習】
 組織は、ルーチンというコード化された経験の移転を通じて他組織から学習す
る。そのため、組織における学習やルーチンを考える上で、組織的ネットワーク
に注意を向ける必要が出てくる。そこで、組織間での学習を考察するため、ま
ず、病気や情報の普及のメカニズムについて整理する。次に、イノベーション普
及のダイナミズムについてまとめる。最後に、学習のエコロジーという、より複
雑な相互作用のある場合を考察する。
病気や情報の普及のメカニズムには三つある。
(1)潜在的個体群に対して単一の源泉によって普及していくもの。
(2)既に病気・情報が普及している個体群に属するメンバーと、まだ普及して
 いない個体群のメンバーとが接触することで普及していくもの。
(3)ある個体群でまず普及し、そこから他へと普及していくもの。
これら三つは、DiMaggio & Powell(1983)の強制的同型化、模倣的同型化、規範
的同型化にそれぞれ対応している。
 次に、イノベーションの普及のダイナミズムについて見る。最も考えられるの
が、組織と技術が適合していたからイノベーションが普及したということだろ
う。しかし、組織間関係を通じた模倣による普及を示す事例はいくつか見られ
る。また、制度化の社会学では、普及は正統性(legitimacy)を獲得するための行
動(模倣)の結果だということが言われている。一方で、普及のダイナミズムを見
るには、模倣される側の得失も考えなくてはならないだろう。ただ、模倣される
側にとって、技術的効率性の観点で見るのか、正統性の観点で見るのかで得失は
変わってくるし、同じ観点からであっても場合によっては得失が逆になることも
考えられる。
 最後に、学習のエコロジーについて見る。組織は、学習するサブ・ユニットの
集合体であると同時に、その他の組織によって主に構成される環境に身を置いて
いる。このようなエコロジー構造は次の二つの点で複雑である。
・学習そのものが複雑になること。その他の組織が同時的に学習しているので、
 異なる時点ではあるルーチンは異なる結果を生むかもしれないし、異なるルー
 チンは別の時点で同じ結果をもたらすかもしれないのである。
・環境が自生的に変化するので、学習プロセスの体系的理解やモデル化をより複
 雑にすること。
例えば、互いに競争する組織からなるエコロジーを考えてみる。そこでの学習の
効果は、競争相手の数や技術の潜在力の他、各組織の、経験から学習する速さ、
目標を調整する速さ、他の競争相手から学習する速さに複合的結果である。この
ように、学習の効果は非常に複雑になる。また、「学習することを学習する」も
含めると、より複雑なものとなっていく。

【知性の一形態としての学習】
 最後に、組織パフォーマンスを改善するための知性(intelligence)としての学
習とそのデザインについて論じる。
知性としての学習とそのデザインには、三つの構造的な問題があるだろう。
(a)経験不足の問題。
(b)経験の冗長性の問題:ルーチンが安定化してしまい、有効な学習プロセスに
 必要な実験(experiment)が失われるのをいかにして回避するか、というもの
 である。
(c)経験の複雑性の問題
これら三つは完全に取り除くことはできないが、改善することは十分に可能であ
る。
 また、知性は非常にあいまいである。多層システムの様々な階層で同時並行的
に学習が起こるならば、どの階層で見るかによって知性かどうかが変わってきて
しまう。また、「有能さの罠」や「迷信的学習」、経験からの誤った推論など、
学習が知性につながるとは必ずしも言えない。
 ただ、ルーチンにコード化された歴史の教訓は、組織の知性の重要な基礎に
なっていることは間違いないだろう。その意味で、ルーチン・ベースで、歴史依
存的、目標指向的な組織学習論の役割は大きいと言える。今後の課題は、次のこ
とを認識することである。まず、どの程度学習の知性が失敗に終わってしまうの
か、である。また、歴史や経験の理解にとって、速やかな適応よりゆっくりとし
た適応がどの程度必要か、経験に対する正確な反応より不正確な反応がどの程度
必要か、漸進的な変化より突然の変化がどの程度必要か、も認識する必要があ
る。(IN)

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発行周期: 週刊 最新号:  2019/02/11 部数:  1,030部

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