GBRCニューズレター

GBRCニューズレター No.126

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Global Business Research Center Newsletter
GBRCニューズレター No.126  2004年10月11日号 (毎週月曜日発行)
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今週の目次

☆あの有名な『プロダクティビティ・ジレンマ』 を読んだ気になろう (5)
     第5章 自動車のエンジンプラント

☆今週と来週の「ものづくり寄席」

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☆あの有名な『プロダクティビティ・ジレンマ』 を読んだ気になろう (5)
     第5章 自動車のエンジンプラント
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東京大学大学院経済学研究科の「経営管理」(文献購読)で、あの有名な
Abernathy, W. J. (1978). The Productivity Dilemma.
の輪読をしています。『プロダクティビティ・ジレンマ』は翻訳がないので、翻
訳もしています。この授業を担当する高橋伸夫教授(GBRC理事)・新宅純二郎助教
授(GBRC理事)のご協力の下、各章の要約を連載します。

第5章	自動車のエンジンプラント
【中野剛治・稲水伸行・細野慶介】

1.生産ユニットとしてのエンジンプラント
 現在の自動車のエンジンプラントは、70年以上に渡って続けられた複雑な進化
の結果である。自動車エンジンプラントはオートメーション化されてきたが、そ
の弊害としてデザインや工場の設備内に制限が加えられた。オペレーションの種
類は増加したにもかかわらず、エンジン一台あたりの直接工数は減少した。これ
らの高生産性を生み出し労働環境の改善にも繋がった生産ラインは、複雑なパッ
ケージ化の賜物である。生産ユニット全体における技術の変化を理解し管理する
ためには、独立した労働管理や装備機会、資源投入、生産プロセス組織の各場面
について研究する必要がある。
 
2.企業レベルの変化の側面
 フォードにおけるエンジン製造の最初期(1903-04年)はデザインと最終組立
に精力を集中投入したため、モデルNの需要が急増した際に生産能力不足が問題
化した。またフォードの創世期である1905-09年は、Sorensenが「不可欠なツー
ルと多くの支流が統合された最終組立ラインは、持続的に実験を続け、即興で生
産性を改善してしまう組織に起因してできたもの」だと述べる状況で、分業レベ
ルの低さ、熟練工への依存、プロセスの不統一の流れに対応するジョブショップ
制、汎用品で稼働率が低い設備の使用、その日その日の購買計画、未熟な生産管
理システム、デザインの急激で度重なる変更などが表面化した。
 エンジンや乗用車のラインの標準化、エンジンラインにおける機械の多様化の
傾向、エンジンライン全体の多様性の三点は、排気量(CID)によって体系的に検
討される。最初期にはエンジンは自動車のデザインによって決定されたが、V8エ
ンジンが登場した1932年以降は自動車の製造ラインにより依拠して成型されるよ
うになる。近年はエンジンと自動車のモデルの変化は独立している。エンジンラ
インの多様性は増加してきたが、機械的な新奇性は減少してきている。またエン
ジンの構造的新奇性も減少しているように見えるが、これは変化が個々に判断で
きなくなっただけである。
 また技術イノベーションが減少するに至った自己抑制要因は、CIDと馬力比の
変遷で検証される。最初期のトレードオフ率は低く新奇性が要求されていたが、
改良により性能に比して比較的小規模な機械的変化だけで対応できるようにな
り、比率は増加した。十分に性能が高くなったので、イノベーションの必要性が
低下したのだ。しかし近年の規制や燃料効率目標は大きなイノベーションの必要
性を生み出している。

3.プロダクティブ・ユニット内の変化
 全社レベルでは製品ラインの多様性が増し製品の変化が増大したが、個々のプ
ラントレベルでは正反対の傾向が見られた。
 エンジンプラントの増加は全社レベルでのエンジンの多様性を相殺していっ
た。1950年代以降各プラントにおけるエンジンの多様性・モデルチェンジ率は減
少した。
 またモデルT投入後の生産量の増大は労働タスクの構成・配置や工程設備のイ
ノベーションパターンの決定という新たな大量生産のアプローチを生んだ。需要
が倍増すると7つのステップが繰り返し適用されるが、トランスファー・スパ
ン、集約化された作業工程、自動化レベルの3指標を用いて測定することで、長
期にわたって設備の発展が安定的で一貫していたことが明らかになった。これに
よって、工程の専門化、自動化、労働スキルの変化、イノベーション形態の変
化、柔軟性の変化、仕事や能力の性質の変化が明らかになった。

4.結論
 エンジンプラントにおける発展の経路は本質的に極めて進化論的であったが、
工程変化全体の程度は累積的に非常に大きなものとなった。様々な局面で同時並
行的に変化が起こっていたが、これらは高度に相互に関係を持ちかつ相互依存関
係にあった。そして、1973年までの期間における調査結果は以下の10点に集約さ
れる。
(1)製品ラインの機械的な新奇性は全体的に減少してきた。製品のオプションの
絶対数は増加してきたにもかかわらず、実際の多様性は減少してきた。
(2)製品ラインの多様性は一見増加したが、個別の工場やプロダクティブ・ユ
ニットでは絶対的な意味や質的な意味においてその多様性が次第に減少してきて
いる。 
(3)プロダクティブ・ユニット・レベルでの全体的な変化率は減少してきた。そ
してモジュラー型の製品ラインの導入を通じて、製品の変化のインパクトは局所
化されてきた。
(4)変化の形態は、ラディカルで流動的な変化からインクリメンタルな変化へと
移行してきた。しかし、インクリメンタルな変化は累積的な技術の進化にとって
明らかに重要である。
(5)主要なイノベーションはさらなる新しい変化の必要性を減らしたので、自己
規制的であった。
(6)工程設備の特徴は、汎用的な目的の道具から専門特化した工程設備システム
へと変化してきた。しかし、この発展はプロダクティブ・ユニットの発展全体か
ら時間的に遅れているようだった。 
(7)実際には工場設備の発展は非常に累積的であり、プロダクティブ・ユニット
のその他の多くの側面に広範囲にわたる影響をもたらしているようだった。
(8)労働者の仕事や要求されるスキルは、3段階に渡る工程設備の発展とともに、
手作業的な技能からオペレーティションの技能、そしてシステムを監視する技能
へと変化してきた。
(9)エンジンプラントにおける作業工程の集中度は、最初増加したが次第に減少
した。集中度の減少と共に、セグメントはより専門化し、組織的に分散化し、技
術はより均質化してきた。
(10)垂直統合は全般的に増加したが、その程度は安定したものではない。プロダ
クト・イノベーションは垂直統合の鎖を陳腐化するので、継続的な後方統合が必
要である。

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☆今週と来週の「ものづくり寄席」
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皆様お待ちかね、10月〜12月の演目・出演者が発表になりました。
http://www.ut-mmrc.jp/topics/040921yose/yose0921.htm
をご覧ください。

 ・21世紀COE「ものづくり経営研究センター」(MMRC)主催/GBRC共催
 ・午後6:30〜8:30 (受付開始 午後6:00〜)
 ・木戸銭:フリードリンク付 1,000円
 ・会場:丸ビル南隣の三菱ビル10階 コンファレンススクエア エムプラス

10月18日(月)
下川 浩一
東海学園大学大学院経営学研究科教授 法政大学名誉教授
「世界自動車産業のグローバル再編成とその帰結」
 自動車産業のグローバル再編成の嵐がふきあれたのは、つい5年ほど前であっ
た。しかしその後、再編統合の動きが行き詰まったのはなぜか、そして今後の行
方はどうなるかをみてみたい。 

10月21日(木)
高井 紘一朗
ものづくり経営研究センター特任研究員 元アサヒビール(株)専務取締役
「アサヒビールの品質保証は「太鼓判システム」から」
 出荷するビールの品質をいかに保証するかという課題に対し、アサヒビールは
家電の個人名の検査印をヒントにして、1本1本に保証印を捺すという視点の
「太鼓判システム」を生み出した。 

10月25日(月)
日野 三十四
広島大学大学院社会科学研究科教授
「インテグラル型製品のモジュール化理論と方法論」
 モジュール化は世界の産業・経済を大きく発展させた。今後の課題はインテグ
ラル型製品のモジュール化であり、実践を通じての理論化・方法論化の試みを紹
介する。 

10月28日(木)
田中 正
ものづくり経営研究センター特任研究員 元川崎三菱自動車販売(株)社長
「ものづくりのカイゼン、販売営業活動への活用(2)」
 前回は、トヨタ販売会社のカイゼン全般のお話。今回は、観察からの理論展
開、競争力の深層と裏層、メーカーの係わり合いなど、さらに突っ込んでみた
い。 

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発行周期: 週刊 最新号:  2019/02/18 部数:  1,030部

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