GBRCニューズレター

GBRCニューズレター No.108

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Global Business Research Center Newsletter
GBRCニューズレター No.108  2004年6月7日号 (毎週月曜日発行)
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今週の目次

☆東大マーケティング・ワークショップのお知らせ(今年度第2回)

☆社会ネットワーク分析の論文を読んだ気になろう(9) 最終回

 Uzzi, Brian (1996)
 "The Sources and Consequences of Embeddedness for the Economic 
 Performance Organizations: The Network Effect." 
 American Sociological Review, 61, 674-698.

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☆東大マーケティング・ワークショップのお知らせ(今年度第2回)
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JIMS「消費者・市場反応の科学的研究部会」
(通称:東大マーケティング・ワークショップ)

[日 時] 2004年6月17日(木曜日) 18:45 〜 20:45
[テーマ] 「Hedonic vs. Functional Designs: 
       Implications for Market share and Profitability」
       キーワード: マーケティング、製品開発、製品購買選択
[報告者] Ravi Chitturi (Assistant Professor, 
     College of Business and Economics at Lehigh University, USA)
     (用語は英語になります)
[場 所] 東京大学経済学研究科棟12階第3共同研究室
     地図:
http://www.e.u-tokyo.ac.jp/fservice/address/address.j.htm
[参加費] GBRC会員は参加費無料。

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☆社会ネットワーク分析の論文を読んだ気になろう(9) 最終回

 Uzzi, Brian (1996)
 "The Sources and Consequences of Embeddedness for the Economic 
 Performance Organizations: The Network Effect." 
 American Sociological Review, 61, 674-698.
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東京大学大学院経済学研究科の「経営文献講読」では、安田雪GBRC社会ネット
ワーク研究所長の協力も得て、2003年度の夏学期に「社会ネットワーク分析」の
基本的な論文12本を読みました。最近、ソーシャル・キャピタルの研究としても
注目されるこの分野の古典的な論文を何本かピックアップして内容を紹介してき
ましたが、今回が最終回です。次回からは新シリーズがスタートします。

とても一人では読む気にならない社会ネットワーク分析の論文を「斜め読みして
読んだ気になろう」(?)という大胆な連載です。忙しい人は、最初の《リサー
チ・クエスチョン》と最後の《結論と評価》だけを読んでも、何の論文だったか
は分かりますよ!? 大胆すぎて間違っていたら、後で訂正します。

【木村忠昭】

《リサーチ・クエスチョン》

 組織ネットワークで行われる取引の論理は、市場とは異なった論理で行われて
いる。ここではこの取引のシステムを「埋め込み」と定義する。埋め込みは企業
間の資源の共有、強調、適応によって、経済的成果を増大させる。しかし、その
効果には閾値があるのではないだろうか。そこで、ニューヨークの婦人服アパレ
ル企業のネットワークデータを分析してみると、ネットワークに組み込まれてい
る企業は、商業ベースでその場限りの取引を行う企業に比べて、生存確率が高い
ことが明らかになった。しかし、埋め込みによる正の効果には閾値があり、この
閾値に達すると埋め込みは負の効果をもたらすようになる。

《本文要旨》

 まずはじめに行ったエスノグラフィックなフィールドワークでは、ニューヨー
ク市ある、売上高が50万ドルから10億ドルである婦人服メーカー23社を層別ラン
ダムサンプリングによって選び、CEOに対してインタビューを行った。その結
果、企業間関係の紐帯の内容や構造は、社会的・経済的な行動に影響を与えるこ
とがわかった。
 「商業ベースでその場限りの紐帯」と「埋め込まれた紐帯」は明確に異なる特
徴を持った交換形態であり、埋め込まれた紐帯は競争優位を生み出すことができ
る。埋め込まれた紐帯は独自の機能を持ち、「信頼」「きめ細かい情報の伝達」
「共同問題解決の取り決め」という三つの特徴をもっている。これらは相互に補
完的であり、商業ベースでその場限りの取引と対になるものである。また、この
調査により、埋め込まれた紐帯は第三者ネットワークや既存の個人的関係が、新
しく紹介された行為者の信頼性に関する期待を形成し、新たな経済的交換に既存
の埋め込まれた紐帯からの資源を移転することによって形成されることが明らか
になった。これらの期待と資源が初期に存在し、試用期間での互恵的な交換が新
たな資源を生み出し、期待が確固たるものになると、商業ベースでその場限りの
紐帯は埋め込まれた紐帯へと変わる傾向が高まる。そして、時を経てこの反復プ
ロセスは経済目的から独立したものになり、埋め込まれた紐帯が生まれる。経済
的交換が社会的関係に埋め込まれているように、社会的関係は経済取引に埋め込
まれる。これらの経済取引においては、商業ベースでその場限りの関係論理では
なく、埋め込みの論理がはたらく。

仮説
 これまでの埋め込みとネットワーク紐帯の議論をもとに、埋め込みと取引市場
構造の関係そして埋め込みと企業パフォーマンスの関係について以下の4つの仮
説が導かれる。

H1:競争的な市場では、原始論的なばらばらの企業の集合というよりも、埋め込
まれたネットワークの組織として特徴付けられる。
H2:埋め込みの紐帯によって取引相手と結ばれた企業は、商業ベースでその場限
りの紐帯と比較して生存確率が高い。
H3:埋め込まれた紐帯の周りで形成されたビジネスグループのネットワークと結
ばれると、その組織は生存確率が高まる。
H4:企業の生存確率に関して、全て商業ベースでその場限りの紐帯によるネット
ワーク又はすべて埋め込まれた紐帯によるネットワークよりも、両者を併せて統
合したネットワークを構築した方が企業の生存確率は高まる。

 これらの仮説は、ネットワークの効果には2つのレベルがあることを意味して
いる。一つは、少ない取引相手と埋め込まれた紐帯によって交換を行うのがよい
というレベルであり、もう一つは、組織が得られる機会はネットワーク内におけ
る紐帯の構成によって形成されるというレベルである。つまり、これらの仮説
は、企業のパフォーマンスは、埋め込まれた紐帯と商業ベースでその場限りの紐
帯を統合して形成されたネットワークと埋め込まれた紐帯によって結合している
ときに最大となることを示唆している。

検証
 そこでデータによる統計分析を行う。ここで用いるデータは、ニューヨークの
婦人服アパレルメーカーにおけるネットワークの紐帯のデータであり、コントラ
クターと製造業者との取引量の記録である。コントラクターの倒産確率をモデル
化し、ロジット分析を行う。被説明変数として1991年1月1日〜12月31日までのコ
ントラクター企業の倒産をとる。説明変数としては次の3つのネットワーク変数
を利用した。

(a) first-order network coupling……ネットワークに結合した埋め込み紐帯を
企業が利用する程度を表すもので、1コントラクターがそれぞれの製造業者に
行っている仕事の集中の割合を示したもの。
(b) social capital embeddedness……コントラクターがビジネスグループとの
ネットワーク紐帯を持っているかどうかを示すもの。
(c) second-order network coupling……ネットワークパートナーの紐帯が、商
業ベースでその場限りの紐帯によるものか埋め込みの紐帯によるものかの程度を
示すもの。

その他、各種の説明変数を投入してモデルの整合性を保持する。
 コントラクターの倒産確率の推定をロジット分析によって8つのモデルで市場
構造を分析してみると、産業は概して一回限りの紐帯によって構成されているこ
とが分かった。つまり、企業は紐帯を少数の企業に集中させるよりもそのビジネ
スを多数の取引相手に分散させる傾向にある。しかし、日常的にはほとんどの企
業が一回限りの紐帯を利用しているが、ビジネスの大きな割合については少数の
取引相手に集中して任せ埋め込み紐帯を利用しているようである。

 (a) first-order network couplingの増加が倒産確率の減少に関係しているこ
とが分かった。コントラクターの倒産確率は埋め込み紐帯を利用する場合には低
下し、商業ベースでその場限りの紐帯を利用し多くの製造業者と取引をする場合
には倒産確率が上昇する。
 (b) social capital embeddednessについては、倒産確率に強いマイナスの影
響を与えることが分かった。これは二つの意味から重要である。ひとつは、
social capital embeddednessとstructural embeddednessとの関係について、異
なった埋め込みの操作化によりパフォーマンスについて同様に相関していること
であり、もうひとつは、直接の資源取引がない場合でも社会的なビジネスの紐帯
は組織の成果にプラスの影響を与えることということである。
 (c) second-order network coupling及びSecond-order network coupling
squaredの結果により、低い埋め込みや高い埋め込みのネットワークを利用する
コントラクターは倒産確率が高まり、適度に埋め込まれたネットワークを利用す
るコントラクターは倒産確率が低いことが分かった。要するに、コントラクター
は、一回限りの紐帯と埋め込みの紐帯が適度に統合されたネットワークを利用す
る製造業者と取引を行うことによりその倒産確率が減少する。

《結論と評価》

 組織形態の分布から、研究対象の産業では単一の組織形態が支配しているので
はなく、複数の組織形態が混在していることが明らかになった。埋め込みは組織
学習、リスク共有、供給スピードの加速といった側面で、経済効果を増大させ
る。しかし、埋め込みの経済効果には閾値があり、閾値を超えると負の効果を生
み出す。その理由としては、ネットワークに埋め込まれた紐帯によってつながっ
ている企業は、商業ベースでその場限りの紐帯によってつながっている企業より
も生存確率が高いが、しかし、ネットワークは埋め込まれた紐帯と距離をおいた
紐帯のふたつが混在しているのが望ましく、どちらか一方が支配的であるのは望
ましくないためと考えられる。
 本研究は埋め込みが動機と期待を形成し、協調による適応を促進させるような
交換の論理であることを示している。ここでは各個人が当面の利得を追求するの
ではなく、学習、リスク共有、投資、供給スピードの加速といった側面で各行為
者およびネットワーク全体が便益を享受できるような、長期的な協調関係を目指
すという意味でユニークである。そして、これは押し付けられた規範の結果では
なく、自発的なものである。
 また、資源依存アプローチでは、本研究とは逆の結果を想定することにも注意
がいる。すなわち、企業は自律と生存をかけて依存度を低下させようとするだろ
うと考えるので、もし資源依存理論が作用しているのならば、first-order
network couplingが低い方が生存確率は高まるはずである。今後の研究では、資
源依存理論との違いをさらに明確にすることが望まれる。

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発行周期: 週刊 最新号:  2019/02/18 部数:  1,030部

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