GBRCニューズレター

GBRCニューズレター No.105

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Global Business Research Center Newsletter
GBRCニューズレター No.105  2004年5月17日号 (毎週月曜日発行)
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今週の目次

☆コンピュータ産業研究会のお知らせ(第92回)

☆社会ネットワーク分析の論文を読んだ気になろう(8)

 Baker, W. E. (1990) 
 "Market networks and corporate behavior." 
 American Journal of Sociology, 96, 589-625.  

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☆コンピュータ産業研究会のお知らせ(第92回)
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[日 時] 2004年5月24日(月)18:30〜21:00
     ※ご報告は19:00開始となります。
[テーマ] 「アドビ システムズの企業戦略について」
[報告者] 石井 幹氏(アドビ システムズ株式会社 代表取締役社長)
[共 催] 東大COE「ものづくり経営研究センター」(MMRC)
[場 所] 東大COE「ものづくり経営研究センター」(MMRC)
      東京都文京区本郷3-34-3本郷第一ビル8階
      電話:03-5842-5501
  (丸の内線本郷三丁目駅前みずほ銀行(本郷支店)が入っているビル8階
   センターへの入り口は銀行側入り口とは反対側になります。)
  地図 http://www.ut-mmrc.jp/access/default.html
[参加費] ・一般 2,000円   学生 100円
      ・GBRC会員は参加費無料。
[連絡先] 出欠の有無を5月20日(木)までに
      k.tahara@nifty.com(田原)までお知らせ下さい。 

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☆社会ネットワーク分析の論文を読んだ気になろう(8)

 Baker, W. E. (1990) 
 "Market networks and corporate behavior." 
 American Journal of Sociology, 96, 589-625.  
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東京大学大学院経済学研究科の「経営文献講読」では、安田雪GBRC社会ネット
ワーク研究所長の協力も得て、2003年度の夏学期に「社会ネットワーク分析」の
基本的な論文12本を読みました。最近、ソーシャル・キャピタルの研究としても
注目されるこの分野の古典的な論文を何本かピックアップして内容を紹介しま
す。とても一人では読む気にならない社会ネットワーク分析の論文を「斜め読み
して読んだ気になろう」(?)という大胆な連載です。忙しい人は、最初の《リ
サーチ・クエスチョン》と最後の《結論と評価》だけを読んでも、何の論文だっ
たかは分かりますよ!? 大胆すぎて間違っていたら、後で訂正します。

【和田剛明・大川洋史】

《リサーチ・クエスチョン》

 既存の組織間関係の研究の多くは非営利組織のような非市場における関係や、
合併、役員兼任、政治的活動などによって市場の紐帯を吸収、調整、消去するよ
うな戦術に注目していた。それゆえ、企業間の市場関係、つまり市場における紐
帯は、重要であるにもかかわらず研究されてこなかった。この論文で応用される
資源依存理論も、これまで市場における紐帯に応用されたことはない。しかし、
市場における関係は経済学や社会学で言われているような原子化された無差別の
主体によってではなく、他の組織間関係のように社会的枠組みの中で構築される
と考えられる。企業は市場における紐帯をコントロールし、望む結果をもたらす
ように関係の組み合わせを選択する。そこでこの論文では、企業と投資銀行との
関係構築を分析し、企業が依存関係を減らしつつ、力による優位を利用しようと
することを明らかにしたい。

《本文要旨》

 市場における紐帯については、ウィリアムソン的なヒエラルキーによる接合
と、市場(原理)による接合を、それぞれ(i)「関係的接合」と(ii)「取引的接
合」と定義する。多くの企業は、市場とヒエラルキーを組み合わせた(iii)「中
間的な接合」を用いている。三つの接合戦略はそれぞれ利点と欠点を持つ。
 (i)関係的接合は機会主義を防止し、追い貸しを受けたり、継続的取引で互い
の内情を知った上での良いサービスを得たりすることを可能にする。しかし、価
格競争圧力が欠如し、情報源の数自体少なく、特定の関係を持つことで他の銀行
から情報提供を渋られやすい。
 (ii)取引的接合は、多数の相手との取引による価格競争、複数情報源の確保に
より前述の問題を解決しうる。しかしながら、双方に誠実性が欠如し機会主義へ
走りやすく、相手からの重要な情報の提供も期待できない。
 (iii)中間的接合は、両者の長所を兼ね備える。長期取引をするメインバンク
と信頼関係を築き、他の銀行と取引を持つことで価格競争圧力を加え、良いサー
ビスを引き出す。ただし、取引量が制限されるといった問題もある。
 この三者のうち、論者は企業側が銀行への依存を減らし、力の優位を利用しよ
うとするために、中間的接合を選択するのが主流となっており、それぞれを企業
がメインバンクとその他の銀行との取引をどの割合で組み合わせるかは、銀行へ
の依存と力を表す以下の6つのコンセプトおよびそれを表す変数により決定され
るだろうと仮定した。

(1)強度:多くの取引をすることのできる企業ほど、メインバンク以外との取引
のシェアを減らし、依存を解消する。投資銀行との取引総額と、取引回数で定義
される。取引が少ない企業は、企業側の交渉力がないことに加え、さらに銀行側
も機会主義的に動いて反感を買っても痛くないため、取引的傾向が強く出ると考
え、ダミーを置く。
(2)重要性:重要性は代わりとなる取引相手がいるかどうかである。代わりがあ
れば、依存は薄らぐ。内部資金が潤沢な企業は、依存性を減らすべくメインバン
ク以外の取引銀行を持たないでよい一方、負債比率が高いとそれ以上借り入れが
できないため、特定の銀行への依存が高まると仮定する。
(3)非対称性:非対称性は、取引における相手の重要性が双方で異なる場合であ
る。この非対称性として、それぞれの取引数に占める相手のシェアの比を取る。
相対的に企業側の力が上ならば、より取引的接合を結ぶ傾向にあると仮定する。
(4)標準化:標準化は、企業の取引の類似性である。企業が単一の事業しか扱っ
ていないなら、単一の銀行より投資を調達しうるが、複数の事業を持つ場合、そ
れぞれに対して投資を取り付けねばならない。指標としては、企業内部での事業
のハーフィンダール指数の大小でとった。
(5)縦列戦略:縦列戦略は、依存性を減らし力の優位を利用するために複数戦略
を同時利用するものである。これには、まず役員受け入れが考えられる。役員を
受け入れているなら、企業が取引的に振舞う必要は薄まり、より関係的接合の側
面が強まると考えられる。二つ目は、組織の規模は企業の環境に対する生存確率
を高めるために機能し、依存性の解消にも有用であるため、規模が大きければ関
係的接合を維持したままであると考えられる。ただし、逆に組織の規模が大きく
人員が多ければ、より多くの銀行と取引でき、取引的接合に近付くとも考えられ
る。三つ目は、組織の成長である。組織が成長しているならば環境への依存を減
らせ、結果として関係的接合を維持したままであると考える。
(6)第三者の影響:企業が好調だと信じられているなら、発行した証券を市場が
引き受ける。それゆえ、銀行に株式を引き取ってもらう必要性を低め、依存性を
低める。株式市場の評価は、価格/配当、投資家や株式アナリストの評価、期待
成長率、財務の健全性、資本構成などから分かるが、ここでは価格/配当比を
とった。より市場原理に沿った企業ほど市場の期待が強く、よって価格/配当比
が低い期待される企業ほど取引的であると仮定した。

 分析では、それぞれを企業がメインバンクとその他の銀行との取引をどの割合
で組み合わせているかを表す変数として、(a)取引を行った銀行総数、(b)各企業
内で最も多い取引量を与えられた銀行の総数、(c)共同担当者としての銀行総
数、(d)単独銀行率(もっとも頻繁に取引した銀行に与えられた業務のパーセン
ト)をとり、それぞれを被説明変数において(1)〜(6)の説明変数を用いた回帰分
析を行い、各説明変数が有効であることを示している。データセット、分析結果
に関する詳細は元の論文を参照していただきたい。
 分析の結果、企業は投資銀行への依存を減らしつつ、力の優位を利用するよう
関係を構築することがわかった。論者は、組織−市場接合(市場における紐帯の
あり方)について、長期の排他的な紐帯(関係的接合)と、多数の短期的でその
場その場で生成される紐帯(取引的接合)、および両者の中間の混合型の紐帯の
三つがありうるとした上で、企業と投資銀行との関係を対象に分析を行い、両者
の接合の形態は能力面での相手への依存を表す指標と体系的に関係していた、と
いう結果を得ている。
 市場における関係は他の組織間関係と同じく、社会的枠組みの中で構築されて
いる。極端な取引的接合はほとんど見られない一方、純粋な関係的接合は予想よ
りも一般的で、多くはその中間的な接合に属している。市場における関係は一般
に思われているように、不特定多数主体の間に成り立つ偶然の産物ではなく、相
手への依存を減らし、組織間の力関係を利用しようとする意図的な経営の結果で
ある。企業は、依存性の解消、不確実性の低減、効率化を目指し、市場の紐帯の
数とそれぞれの重要性を操作する。投資銀行と企業との間に観測された接合は、
両者の力および依存性と体系的に関係していた。

《結論と評価》

 市場における関係が社会的枠組みの中で構築されていることを示すことによっ
て、この論文は組織間関係の議論を市場における関係に適用し、従来の社会学の
市場に対する知見を次のように拡張することに成功した。
?社会学と経済学において、市場構造は組織行動を決定すると考えられていた
が、この論文では企業行動が市場構造を決定する作用の存在を示した。この先、
両者をつなげることで、市場構造の動的変化において、予期せざる市場構造の連
鎖的出現プロセスを解説するモデルが期待される。
?市場における社会資本の整理と動態化に対する、ひとつの手法を記述し説明し
た。社会資本はある社会構造に由来する資源で、自己の利益の追求するために用
いられる。分析した事例においては、CFMが企業と資本提供側との間の社会構造
と関係のもと、市場における接合を意図的に操作し、特定の社会資本を作り出
し、利益を引き出していた。
?市場関係の管理は、社会学的な企業間の組織間関係分析に基づくべきだという
意見が支持された。多くの研究では、環境の依存性の解消に非市場のメカニズム
に注目するが、本研究では市場の紐帯の管理によっても同様の成果を得られるこ
とを示した。
?力関係が組織間の市場関係に重要な役割を果たしうることを示すことで、この
論文は、今後の市場に対する社会学研究に対し弾みを与えた。企業は渾沌とした
「競争の力」に頼るのではなく、市場の紐帯を器用に組み替え、銀行との力関係
を調整し、競争を生み出している。不完全な競争市場においては、このような競
争を自ら生み出そうとする努力が必要である。

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発行周期: 週刊 最新号:  2019/02/18 部数:  1,027部

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