日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信

【アメリカ通信】自ら起こしたパラダイムチェンジに気付かなかった日本

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├ 2013年08月27日 自ら起こしたパラダイムチェンジに気付かなかった日本
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和田です。

私は、月刊WiLLの花田紀凱編集長と
「週刊誌欠席裁判」という、ニコニコ動画の生放送番組をやっています。

▼ニコニコ動画公式チャンネル:「ちょっと右よりですが・・・」
 花田編集長の「週刊誌欠席裁判」
http://ch.nicovideo.jp/tyotto-migi

なので、だいたいの週刊誌記事は読んでいます。

で、番組では取り上げなかったのですが、先週の週刊文春で、

“ソニー・パナソニックは帝国海軍だ! 
ベストセラー『太平洋の試練』に学ぶ日本型組織「失敗の核心」” 

という記事がありました。

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これは立石泰則さんというノンフィクション作家が、
『太平洋の試練 〜真珠湾からミッドウェイまで〜』 
イアン トール (著), Ian W. Toll (原著), 村上 和久 (翻訳) 
を読んで書いた記事です。

そもそも、『太平洋の試練』は米主要紙で絶賛された海軍史で、
「日本が戦争に勝っていた一八〇日間」に焦点をあたてていた本です。

この本には、これまでにアメ通で取り上げてきた理論も多くあり、
読み終わったらアメ通で書こうとしていたのですが、
先にこうして記事になっていたので引用します。

この立石記者の記事から引用すると、

(引用はじめ)

世界中の海軍が採用してきた艦隊戦略
ーー重武装した最大級の戦艦を
  中心とする大艦巨砲主義などーーを否定した。

航空攻撃で「難攻不落の不沈要塞」
と信じられてきた戦艦を沈めたからだ。

さらに二日後、日本海軍は戦闘態勢にあった英国の戦艦
「プリンス・オブ・ウェールズ」と「レパレス」の二隻を航空攻撃で撃沈。
これは海戦史上、初めてのことだった。

この二つの航空攻撃の成果によって、
《艦隊の用兵思想は急いで書き直され》、
機動部隊は戦艦ではなく空母を中心に編成されるようになる。

つまり日本軍はルールブレイク(戦艦主義の否定)し、
新たなルールメイク(航空攻撃の有効性)の正しさを証明したのだ。
世の中にはルールメイクとフォロー、
そしてルールブレイクの三つしかない。

ビジネスの世界で言えば、トレンドを作るかドレンドに乗るか、
トレンドを否定するか、である。
このうちもっとも肝要なのは、ルールメイク(トレンドを作る)である。

なぜなら、それが最大の利益をもたらすからだ。

(引用おわり)

とある。

記事はさらに続くのですが、
その中盤以降の内容を私なりにまとめると、
以下のようになります。

日本の帝国海軍に、空母機動部隊の運用という
新しい戦いの「ルール」を作られてしまったアメリカは、
一旦、フォロアーになってしまい、
徹底してその「新しいやり方」をキャッチアップするしかなかった。

さらに、米国がフォロアーから抜け出すため
「情報戦」という新しい「ルール」を持ち込んで、
暗号解読により、米国はミッドウェー海戦を読み切り、
さらには山本五十六襲撃までやってのけたのです。

日本の家電メーカーがこの
「ルールメイク、「フォロアー」、「ルールブレイク」の立場を理解できず
惨敗していくことを重ねている。
(国家運営も経営者も)指導者には
実行力と構想力(先見性とビジョンを描く力)が
いかに必要かがわかる。

記事の後半のをざっとまとめるとこのようになります。

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さて、「アメ通」読者の皆さんには、
ここで、このエピソードが何を意味しているのかを
しっかりと考察してみて頂きたいのです。

日本側としては、自らが確立したこの新しいやり方を徹底して、
空母を中心にした、航空戦にそなえた軍備を整備して、
それまでの主力であった艦隊を、あえて犠牲にしてもいい
くらいのハラを決めて、作戦立案をすればよかったのです。

結局、まだ、いわゆる「艦隊決戦」の未練を残していたのです。

日本は、パールハーバーの勝利によって、
ある意味では、海戦のパラダイムをチェンジさせたのです。
しかし、日本軍の幹部は、
この、自らが起こした「パラダイムチェンジ」を自覚しておらず、
ビジョンの徹底や共有ができていなかったのです。

これは何を意味しているのでしょうか?

つまり、日本は、自ら「ルールメイク」したにもかかわらず、
そのルールにふさわしい体勢を整えていなかったのです。

読者の皆さんはもうお気付きだと思いますが、
この話、これまで「アメ通」で何度も取り上げてきた話や、
奥山さんが自らの著書、
「世界を変えたいなら一度武器を捨てよう」や
講演会などで、強く主張してきたことばかりです。

「戦略の階層」でいうところの上位概念である、
「ビジョン」や「戦略」の重要性が、今回ご紹介した、
日本帝国海軍とアメリカ海軍との間のエピソードに
端的に顕れています。

この上位概念と、「戦術」や「技術」といった
下位概念との違いを学ぶことが、私たち日本人にとって、
どれほど重要であるかを考えてみて下さい。

奥山さんが言っているとおり、

日本人はまず、「技術」の話をするんじゃない!
とにかくいったん「武器(技術)」を捨てて
戦略やビジョンについて、全体像を学ぶべき!

ということなのです。

私たちは、敗戦が決定的になるまで
「戦艦大和」を捨てられませんでした。
このことの意味を、
私たちはしっかり考えてみるべきなのです。

( 和田 )

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編集後記

管理人です。

今回、和田さんが紹介した『週刊文春』の記事ですが、
先週発売の「2013年8月29日号」ですので、
(http://shukan.bunshun.jp/articles/-/3024)
ギリギリでまだ書店などにあると思います。

ぜひ、読んでみて下さい。

もちろん、この記事全文は管理人も読みましたが、
何と申しましょうか・・・、忸怩たる思いと言いますか・・・
非常に歯がゆい想いになりました。

「戦略の階層」でいうところの上位概念、
この致命的重要性がこれほど分かりやすい例、
ちょっと他にないのではないでしょうか。

▼▼ 「戦略の階層」を徹底解説するCD ▼▼
http://www.realist.jp/strata.html

このCDをお聴きになって頂いた方でしたら、
管理人の、この「口惜しさ」をご理解頂けるのではないか・・・
と想うのですが、如何でしょうか?

( 管理人 )

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最近、日本のメディアで「地政学」という言葉をよく目にします。

この言葉の本当の意味は何なのでしょうか? 
そして、そもそも「地政学」とはどういうものなのでしょうか?

「地政学」は一過性のブームなどには全く関係なく、
国家が国際社会の中で生き抜くためのツールとして、
日本以外の国々では
意識的/無意識的に活用され続けている学問です。

そして、昨今の日本周辺の混沌とした
国際関係の状況を冷静に分析する上で、
非常に役立つものなのです。

地政学とは、グローバル化した時代に、
国家が生き残っていくためのツールであり、
同時に国家の成功戦略のヒントとして
役立つものなのです。 

しかし、日本では「地政学」は勉強できません。
「地政学」を専攻できる大学はありません。

そこで、英国にて「地政学」を学んだ奥山真司が
"禁断の学問"地政学を復活させるつもりで、語り尽くします。

▼「奥山真司の地政学講座」
http://www.realist.jp/geopolitics.html

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発行周期: 週刊、不定期 最新号:  2018/12/13 部数:  13,038部

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