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すまいとくらしのア・ラ・カルト vol.411

カテゴリー: 2019年03月10日
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2019.3.10 Vol.411  

あなたの暮らしと住まいをデザインします

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●コラム(家づくり箴言の知恵・名言のヒント) 


「私の家」の失敗の第1は、靴をはいたままで暮らそうと企てたこと。それで、当時いいふらされたことばだが、玄関というような封建的な所産を排除するという意味もあって庭からじかにという試みをしてみた。ところが招かれざる客だけでなく、ゴミ・犬・騒音etc.が遠慮会釈なく侵入してくるのにはおどろいた。

(清家 清/ 建築家)


「私の家」とは、名作と言われた清家氏の自邸。ドアのないトイレに象徴される革新的な住宅でしたが、ご自身が失敗というようなことも少なからずあったようです。玄関を封建的と考えるか、合理機能的と考えるかで家の造り方は分かれますが、先人たちは家に対してもっと、融通無碍だったようにも思います。

(笠井義文)

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●エディット広場 
  
エディット仲間の連載シリーズをおとどけしています。

 
美術発見 2019年3月
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季節のうつろいのもっとも顕著な月、3月を迎えました。例年通り、年度末で慌ただしいことに加え、今年は御代替わりを控えた平成最後の年度末ということもあり、気忙しさもひとしおです。気づけば、早春を告げる香しい花々から、春の盛りを告げる彩が華やかで明るい花々へと、時節の徴はなめらかに受け継がれていたようです。小さな犬を散歩させていると、足元をいつも以上に見ることが多くなりますが、この時季の楽しみは野に咲く小さな花々の存在です。

先日の朝ふと、オオイヌノフグリの青い花の色が目に留まりました。気づいた後でよく辺りを見ると、その小さな青い花は点々とあたり一面に広がっていました。そして、その近くにはホトケノザのひと群れもいつのまにか一斉に明るい春の色をみせていたのです。一晩のうちに、一斉に花開いたというわけでもなかったのでしょう。見上げる花ならば、一輪の花が咲いたといって、俳句にも詠まれますが、足元の花たちは、ほころび始めた時に、目もくれてもらえなかったのかもしれません。

このように、余裕があるとも思えない日々の中でも、とりわけ予定がたくさん詰まった一日がありました。先日、日帰りで出かけた大阪では、4人の作家の作品を目指して、4つの展覧会をハシゴしました。

谷町6丁目の+1(プラスワン)artギャラリーでは、「発酵」をテーマにしたグループ展。まず、会場に入ると甘酒のほのかな香りが来廊する人を迎えてくれます。薄暗い酒蔵のような展示空間では、実際に甘酒が甕の中で発酵を続け、その発酵のさまが科学番組の早回しの映像のように、床にまかれた塩の真っ白なスクリーンに映し出されているかと思えば、会場内にしつらえてある幾つもの小さな甕に仕込まれたスピーカーからは、発酵するときに発せられる音が集められ、流されていました。

私たちが感じるのは、この空間に存在する発酵を促す菌類の確かな存在です。見えないけれど、私たちの暮らしの中に潜み、私たちの暮らしを豊かなものにしてくれている、他の多くの原初的な生命体の存在に思いを馳せた人もいたことでしょう。「発酵」という有益で豊かなうつろいと、身体の内外で生じるこれらの生命体の活動と、実は共存している私たちでもあります。思えば麹菌は、野に咲く花のように愛らしい姿をしていました。このグループ展に参加していたのは井上明彦さん。最終日でした。

2軒目は、大阪の曽根崎にあるギャラリーヤマグチ クンストバウ。開催中の三嶽伊紗さんの個展「シロイ夜」も最終日でした。この画廊を訪れるのは3度目。新作の映像の残像感が素晴らしく、実は2度目はあえて画廊の休み日に立ち寄って、ガラス越しに薄暗い画廊内空間を眺め、先に観ていた映像作品を何も映し出されていない壁に思い描いていたほどです。近年の三嶽さんは、雪が降ると、カメラを携えて飛び出し、琵琶湖畔の幽玄の風景を記録し、持ち帰ってはアトリエで映像作品を制作しています。

風に舞う雪、湖面を漂う水鳥、凛と立つ樹木などをモチーフに、さながら「映像による朦朧体」のような作品を表して、かたちを持たないものを以て、観る者に語りかけてきます。他方、かたちのないものを創り続けたときの(バランスを保つための)拠りどころとしてのオブジェがしっかりと画廊空間を定義していました。美しい空間でした。

次は難波に移動して、特定非営利活動法人CAS(キャズ)でグループ展を見ましたが、目当ては日下部一司さん。「COVER」というタイトルの展覧会で、先達のカヴァー作品を発表するという、遊びの要素満載の展覧会。とりわけ、日下部さんの写真作品が、壁にずらりと並んで異彩を放っていました。それらは、福原信三・路草兄弟のカヴァー作品でした。戦前・戦後の日本の写真界では著名なこの二人、風景を主に、芸術写真を目指した人たちですが、兄の信三は資生堂の初代社長で、あの有名なロゴマークまでデザインしてしまった人です。

弟の路草の方が兄の作品よりも、ややロマンティックな気配に満ちていて、私は好きなのですが、日下部さんは、彼らの良く知られた風景を拠点としている奈良近辺の風景に置き換えて、当時を醸し出すテクニックをちらりと見せた、なかなか渋い発表でした。いや、発表というよりは、品の良い遊びといった風情でした。そして、掲げられていた額までが、すべて手作りとは畏れ入りました。熟年のアソビゴコロは、「本気」でした。

最後に出かけたのが、城東区にあるギャラリーノマル。「Gather-Gift」展に出品中の今村源さんの作品が目当て。4人の作家のグループ展ですが、互いに贈り物をしあい、そこから誘発された内容でそれぞれが作品を発表するというものでした。今回の「贈り物」に、実は今村さんは、ちょっとしたチャレンジをしていました。先の夏に徳島で行ったワークショップの際、今村さんは知的障がい者支援施設の利用者である男性から、ノートを破ったような紙に蛍光ペンでドローイングを施し、幾重にも折りたたまれたものを手渡されていました。

この思わぬ贈り物は、驚きとともに、今村さんの中で何かを閃かせたにちがいありません。彼はそのドローイングのための箱を自作し、同じグループ展に出品する作家にそのドローイングを贈り物として届けたのでした。贈られた作家は、それを作品として仕上げました。会場には、くだんのドローイングが二人の作家の手によって、堂々と作品の一部に創り上げられていました。テーブルの上に置かれたオブジェの中には、紛れもなく、あのドローイングが鎮座していました。

今村さんという作家は、常に公平公正にものを見つめる人ですが、現代美術の土俵上に、「あっちゃんのドローイング」を平然と引っ張り上げただけでなく、その作品に自らも呼応するように、蛍光色の蚊取り線香を創って、頭上で静かに回転させていました。粋な展示でした。

ほかにも大きなアングルで組み立てられた立方体を会場でゆっくりと回転させる作品がありましたが、その動力は、角に取り付けた小さなファンでした。今村さんの場合、回転は「生きている」ことを表すものですが、回転する速度が一つ一つ違うけれど、私たちの生きている速度と微妙にずれつつ調和し、空間を息づかせる手腕は絶妙です。

4人の作家たちは、先の夏に一緒にワークショップをし、秋に展覧会を開催した人たちでしたが、一日で4人の展覧会をすべて観て回れるなんて、めったにないことでした。

(玉川稲葉)

 *ギャラリーノマルの展覧会は、3月16日まで開催しています。

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発行周期: 隔週刊 最新号:  2019/03/10 部数:  126部

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