こころをめぐる話-内観に学ぶ

日常内観について


カテゴリー: 2017年12月13日
こころをめぐる話ー内観に学ぶ NO132
                              日常内観について
                                        
                発行者 白金台内観研修所 本山 陽一
                                    Mail to: zan25224@nifty.com
                       http://www.shirokanedai-naikan.com/index.html

最近ある団体から日常内観についての原稿の要請があった。そこで今回のメル
マガでも日常内観について書いてみたい。

内観法には、内観研修所で体験する集中内観と日常生活を営みながら一人です
る日常内観がある。内観の世界では、日常内観のできる人を一人前の内観者だ
とし、集中内観は日常内観を身につけるために内観法の実際を学び、訓練する
ものと考えている。つまり、内観研修所は集中内観を体験できる学校みたいな
ものなのである。

勿論、集中内観それ自体完成された技法で、集中内観で日常では味わえないよ
うなすばらしい体験をしたり、大きな成果を挙げることはよくある。しかし、
内観法では、どんな体験や成果も基本的には道の途中であり、最終的なゴール
ではないと考えている。内観法は、常に自らを向上し続けることを要求してい
る。だからこそ、死ぬまで内観をし続けることができる境地になるために、日
常内観を尊ぶのである。ところが、この日常内観が難しい。

内観研修所では日常のすべてを遮断し、食事も研修所が用意する。さらに内観
がスムーズにすすむために、一日に8回~12回ぐらいの面接もする。つまり、内
観にだけ没頭できる環境を徹底的に提供している。それでも自分の内面に入っ
ていくのは難しく、比較的集中してくるには平均3日かかると言われている。
だからこそ研修期間を最低一週間にしているわけで、後半に入ってからやっと
内観らしくなる。自分の内面を知るのはそれほど難しい作業なのである。

情報は管理され、日々営まれる日常生活に必要な行為は援助され、1時間余に一
回面接という方法で指導してくれるという恵まれた環境にある集中内観でさえ
も、苦労しながらやっと心境がすすんでいくのである。ところが、日常内観では、
通常の日常生活に囲まれて、さまざまな情報や誘惑が絶え間なく入ってくるし、
日常の雑事にも追われる。誰も面接に来てくれるわけでもない。つまり、日常内
観では自らの意志の力だけが頼りなのである。日常内観を続ける困難さがここに
ある。

内観創始者・吉本伊信先生は、「せめて一日2時間は内観して欲しい。朝1時間は
過去の自分を調べて、夜1時間は今日一日の自分を調べる」ことを推奨されたが、
これを実行している人は本当に少ないのが現状だ。しかし、いかに困難であろう
と本来の内観が目指す方向を考えれば、この日常内観をあきらめるわけにはいか
ない。そこで私はこの日常内観を実行するために、初心者と上級者に分けて違っ
た方法を勧めている。

 集中内観を終えた人には、「毎日15分でもいいから、今日一日誰かに“していた
だいたこと”を10個見つけて下さい」と提案している。忙しい日常に追われてい
ると、その対応に意識を向けがちになる。そうすると、いつの間にか私たちは、
絶え間なく起きる内面の欲望に主導権を奪われ、無批判に自己中心的な思考に意
識が取り込まれ、自らの行為を正当化していく。

そんな私たちの習性から自分自身を取り戻すために、たとえ15分でも意識を「し
ていただいたこと」に向けることで、意識の主体性を取り戻し、自分の周りにあ
る大切なものを見失わないでいられることができるのだ。そして、これが習慣化
すれば、最初は10個見つけるのが大変だった人も、次第に20個、30個と見つけら
れるようになり、日常に流されないストレスに強い体質になっていく、というわ
けである。

求めるレベルが高い上級者の方には、集中内観を短期間に何回も何回も集中的に
体験することを勧める。この方法は、かつて私自身が実践した方法だが、集中内
観を繰り返しすることで内観を条件化するのだ。そうすると道を歩きながらでも
内観ができるようになり、日常内観が楽になる。何故なら、過去を想い出すこと
は、それ自体困難な作業でなかなか想い出せないし、一度想い出してもすぐ忘れ
てしまったりする。これは日常内観を続ける上でとても負担になる。繰り返し集
中内観をすると、過去の記憶を思い出すことが比較的容易になるので、日常内観
の負担が減るのだ。

内観の世界では、「内観が深い、浅い」という表現をすることがある。これは内
観の質を問うているのだが、「深い、浅い」を理解するのは実は難しい。これを
理解するには、自分自身が一定の深さまで内観をすることが必要である。日常内
観を続けていると、さまざまな気づきが訪れる。この気づきは、いつ訪れるか分
からないが、ほとんど偶然の産物で、突然訪れる。この気づきを繰り返している
うちにある一定の水準に至り、内観の「深さ、浅さ」が理解できるようになる。

日常内観を深めるためには、吉本先生が仰有っているように「死を見つめる」こ
とが必須条件だと思う。現代の価値観や自らの欲望だけで考えていると、目の前
の小さな成功や失敗に囚われて真理の世界は遠のくだろうし、動機づけも弱くな
って日常内観が続かなくなる恐れがある。吉本先生は、「“死をとりつめる”か
否かが内観の大きな分水嶺になる」と話されていた。
 
今回、依頼を受けたお陰で、日頃感じていることを率直に書いた。私自身もまだ
まだ発展途上の人間で、内観が、今後どのような世界に私を導いてくれるか楽し
みにしながら日常内観を続けていきたいと思っている。 
       ★  ★  ★  ★
今年もメルマガをお読みくださり、ありがとうございました。
皆様よいお年をお迎えください。 

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